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本が好きな人にとって神保町という街は特別な思い入れがある場所ではないだろうか。そんな「本の街」の一角にシェア型書店、猫の本棚が2021年1月20日にオープンした。店内に入った瞬間、初めて入った場所なのに「おかえりなさい」と迎えられているような安心感に包まれる。この店のオーナーの水野久美は「この店を人と人が出会うサロンのような場にしたい」と話す。
壁面にはずらりと並んだ170の本棚。客はその棚の一つを借り、好きな本をそろえ、「ミニ書店」を開店できるのだ。本の種類も価格も自由に設定でき、書店の名前を付けたり、自作のポップを置いたりもできる。一つ一つの棚からそれぞれの個性を垣間見ることができ、棚主に会ってみたくなる。
棚のサイズは約縦35×横30センチと、高さを多めにとっている。これは絵本のような大型本や映画のパンフレットなど置けるようにというオーナーの配慮だ。本屋という形態をとっているものの、棚に置くものは本に限らずDVDでも自作のハンドメイド作品でもよいという。
小さな棚から発信するカルチャーを通して、棚主同士、あるいは棚主と客とのコミュニケーションが生まれることを大切にしている。今まで触れたことがない本や異なるカルチャーとの偶然の出合いを求めている人にとって、ここほどうってつけの場所はないだろう。
棚主になるのは先着順。すでに棚主希望の予約、問い合わせが多くあり、借りたい人は早めに申し込むことを勧める。必要な費用は、入会金1万1,000円と月々の賃料4,400円(1棚当たり)だ。詳しい注意事項は公式ウェブサイトで確認してほしい。
店内の装飾にも注目してほしい。水野が全て手がけており、フランス製のアンティークなシャンデリアが飾られている空間に、何百年も前に寺で使っていた欄間が取り付けてあるなど、和洋のインテリアが混在している。
一見調和を乱すような組み合わせなのに、なぜか部屋の雰囲気にしっくりとなじむ。これもあえて水野の「異質なものが出合って何かを生み出す」というこだわりに基づいている。本とアンティーク家具に囲まれたシックな空間は撮影などにも最適で、レンタルルームとして貸し出しも行っている。すでに来月から衛星放送番組の撮影も入っているそう。
店名の「猫の本棚」は「猫が来る店」をテーマに命名。ロゴは水野の飼い猫であるメインクーン種のドーラがモデルだ。さらにトートバッグ、はがき、ステッカーなどの猫グッズも販売しているほか、売り上げの一部は保護猫活動の支援に当てていく。
出会いが希薄になっている現代だからこそ、リアルに出会う場を大切にしたいという思いが随所から伝わってくる。「ミニ書店」の開設など、本を介して生まれるコミュニケーションには想像を超える「出会い」があるかもしれない。ぜひ足を運んでみては。
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