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フランスを代表するメゾン「カルティエ(Cartier)」が原宿に初のブティックをオープンしてから50年。「東京国立博物館 表慶館」で『カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展 ― 美と芸術をめぐる対話』が、2024年6月12日(水)~ 2024年7月28日(日)の間、開催される。同ブランドと日本、さらに「カルティエ現代美術財団」と日本のアーティストの絆をひも解く展覧会だ。
同展では、国内で開催されてきた展覧会を振り返りつつ、1世紀半に渡っていかに日本がカルティエの作品に影響を与えたてきたかを検証する。作品は120点のジュエリーとウォッチなどの「カルティエコレクション」とプライベートコレクション作品、50点以上のアーカイブ作品のほか、カルティエ現代美術財団と協業してきた村上隆や横尾忠則、宮島達男、束芋などの現代アーティストによる150点以上のアート作品が並ぶ。明治末期の洋風建築を代表するネオ バロック様式の建物の中で、特別なコラボレーションを満喫しよう。
歌川広重の「東海道五十三次之内」をオマージュした作品が出現
会場のエントランスで一際目を引くのは、「カルティエ」と日本の50周年を記念して作られたアーティストの澁谷翔によるインスタレーション「日本五十空景」だ。澁谷は35日間にわたって日本全国47都道府県を旅し、毎日、地元新聞日刊紙の一面に各地の空の景色を描いて50点の連作を制作することで、歌川広重の「東海道五十三次之内」にオマージュをささげた。
現代において江戸時代同様の景色を望むことはできないが、当時と唯一共通していた要素が空の色だったという。同作品は現代版の浮世絵として、過ぎゆく時間のビジョンを投影して形作られ、絶えず進化するカルティエの歴史を象徴する作品となっている。
日本のモチーフからインスパイアされた「カルティエコレクション」
展示の前半ではジュエリーをはじめとする「カルティエコレクション」が現代に至るまで受けた、日本からのインスピレーションの重要性を示している。自国にいる頃から日本のオブジェや書物を収集していたというルイ・カルティエは、メゾンのデザイナーにも日本のエッセンスを共有し、伝統的な建築や絵画、オブジェなどから着想を得たジュエリーを次々と生み出した。
例えば、印籠からインスピレーションを受けた、ゴールドのブァニティケース(化粧道具バッグ)「二段重ねの印籠」も、その一つである。
1923年から1925年の間に制作された、神社の鳥居(ポルティコ)をかたどった「ポルティコ」タイプのミステリーロック6作の第一作目も展示されているので、ぜひじっくりと鑑賞してみてほしい。
美しい動植物は常にインスピレーションの源
また、動植物は20世紀ごろからカルティエのインスピレーション源と言える。ルビーやエメラルド、ダイヤモンドなどには梅や桜、藤の花、リンゴの木は同ブランドのモチーフとして使われることが多い。本展ではそれらのコレクションが杉本博司の作品、「春日大社藤棚図屏風」と共鳴している点が魅力的だ。
そして、カルティエを最も象徴するモチーフと言えば、「豹(パンテール)」だ。野性的でありながらしなやかな美しさを持ったモチーフは、ブレスレットウォッチのほかネックレス、リングと数々のアイテムに採用され、その気高さから世界中の女性を魅了している。
会場には、ウィンザー公爵がイギリス王室の歴史を変えたといわれるウォリス・シンプソンに贈った、伝説の「パンテールブローチ」も展示されているので要チェックだ。
日本人アーティストによる、多彩なアートピースの共有
さらに同財団は創設以来、日本人アーティストの発掘を行いながらヨーロッパの顧客に作品を紹介してきた。後半ではカルティエ現代美術財団とゆかりのある、アートシーンを代表する16人の国内外アーティストの作品を展示している。
横尾忠則は、カルティエ現代美術財団に関わるアーティストの肖像画を2014年から描き、コミュニティとしてとらえてきた。肖像画は複数枚展示されているが、これらは財団がこれまでアーティストと思想家のコミュニティを元に、アイデンティティを築いてきたことを示している。
継続してきた、境界線のないクリエイションの探求
カルティエ財団は常に好奇心と全方位的なアンテナを持ち、アートや写真などの分野を超え、新たなジャンルとの出逢いをゲストに提案してきた。その精神は40年間にわたって集めてきたアーティストの顔ぶれにも現れている。例えば、ファッションデザイナーの三宅一生やお笑い芸人で映画監督でもある、北野武とともに手がけてきた展示もその一つだ。
会場にはパリで開催された、自由奔放さと遊び心が詰まった北野武の個展「絵描き小僧」の作品も多数展示されている。「日本のお笑い」という新しい世界をカンフル剤として引きこんだ美術展のアーカイブは、非常に貴重な記録と言えるだろう。
螺旋階段を生かした、映像インスタレーションも展開
展示室を移動する途中にある束芋の映像インスタレーションも、ぜひゆっくり鑑賞してみてほしい。螺旋階段の上に描かれたウォールドローイングに、プロジェクターを用いた映像を投影している。作品はロサンゼルスのハマーミュージアムでも展示していたものだ。巨大な女性の体とそこに生けられた花が描かれ、そのうち花は妖しく発光し、液体が滴る。
過去から現在、未来にかけて、探求心に満ちたカルティエと日本との数々の対話が垣間見れる同展。日本文化やアーティストへの愛を感じる、スペシャルな展示にぜひ足を運んでみてほしい。
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