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2019年、カリフォルニアの野外音楽祭、コーチェラ・フェスティバルに79歳で出演して会場を沸かせたカリプソ・ローズ。ソウルフルな歌声とオーラには、筆者を含めて彼女を初めて観た観客も、元々のファンもとりこになったに違いない。
そんなカリプソ・ローズの生誕70年を記念し、2011年に公開されたドキュメンタリー映画が、2021年4月23日(金)から全国で順次上映される。今回は4月3日に開かれた先行上映会の模様をお届けしよう。
カリプソ初の女王であり君主
カリプソとは、カリブ海最南端の国トリニダード・トバゴで生まれた大衆音楽。カリプソ・ローズは若干15歳から作詞作曲を始め、1978年のラテンアワードで優勝を果たしている。それまでカリプソは男性歌手が歌うもので、女性の優勝は前例がなかったため、King(王)ではなくMonarch(君主)として表彰されたという。
現在までに約800曲、20枚以上のアルバムを発売している彼女の人生は順風満帆ではない。厳格な牧師の娘として生まれながらアーティストを志し、デビュー以後は男性中心の音楽業界で活動、18歳の時に受けたレイプ被害など、その苦労は計り知れない。
著名な女性の人生が描かれるとき、本人の功績よりも「妻」「母」などの側面を押し出しがちだが、本作ではカリプソ・ローズの生きてきた軌跡と人々に与えた功績をはじめ、カーニバル文化やアフロ・カリビアンと呼ばれる移民たちの生活までが淡々と描かれている。女性性を押し付けたドキュメンタリーに辟易(へきえき)している人も、ぜひ観に行ってほしい。
『バナナ・ボート』のカバーシンガー、浜村美智子が登壇
先行上映会のアフタートークには、カリプソ・ローズと同じく1957年にデビューし、『バナナ・ボート』のカバー曲で大ヒットを生んだ浜村美智子が登場。自身が受けた性差別に抗議をして「生意気だ」と言われた過去や、コロナ禍の現在を生き抜く術を語ったほか、『バナナ・ボート』の歌い出しを披露してくれた。公式ウェブサイトに寄せられた「よけいなお節介でゴメンなさい。若返り法おしえます。」から始まるコメントもチャーミングで勇敢だ。
『カリプソ・ローズ』の東京での上映は、2021年4月23日(金)からユーロスペース、アップリンク吉祥寺で開始。5月21日(金)からはアップリンク京都をはじめ、関西圏での上映も予定している。映画を通じて、ローズの強いメッセージを聴きに行こう。
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