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2022年4月23日(土)~6月12日(日)、白金の東京都庭園美術館で『建物公開2022アール・デコの貴重書』展が開催される。これは20世紀前半に花開いたアール・デコの様式を残す歴史的建築物、旧朝香宮(あさかのみや)邸にフォーカスした、年に一度の建物公開展だ。
同展では1990年から毎回テーマを設け、さまざまな角度で建物の公開を行ってきた。今年は1920〜30年代のアール・デコ期の貴重書に着目し、華麗な装飾美の世界観を紹介する。
本館の旧朝香宮邸は、1933年に建てられ、1947年の皇籍離脱まで朝香宮鳩彦王(あさかのみや・やすひこおう)が暮らした邸宅だ。彼は陸軍大学勤務中の1922年にフランスへ留学するが、翌年パリ郊外で自動車事故に遭ってしまう。看病のため渡仏した允子内親王とともに1925年まで長期滞在することとなった。この滞在の中で、1925年のパリ万国博覧会(アール・デコ博覧会)を観覧し、同様式に対して強い関心と理解を示した。
当時のフランスはアール・デコの全盛期で、その装飾様式に魅せられた朝香宮夫妻は帰国後、自邸の建設に当たってフランス人室内装飾家のアンリ・ラパンやガラス工芸家のルネ・ラリックを起用。さらに宮内省内匠寮の技師、権藤要吉が設計を担当するなど、日仏のデザイナーや職人の技が結集した芸術作品といえるだろう。
戦後の一時期は外務大臣公邸や迎賓館としても使われ、1993年には国の重要文化財に指定。現在は美術館として活用されているものの、内部の改造は一部にとどめており、竣工時の文化受容を色濃く今に伝えている。
同展では所蔵品を中心にアール・デコ期の貴重書を約100点紹介。ショーウィンドーの写真集、博覧会やインテリア特集雑誌、色鮮やかな絵本など、当時の貴重書を通して華やかな世界へ誘う。
会期中は大食堂のテーブルセッティングなど、通常の展示では置いていない家具調度を設え、かつての邸宅空間を再現する。さらに普段は作品保護のために閉じられているカーテンを開放。自然光が差し込む中で、朝香宮邸の人々の暮らしに思いをはせることができる。
同館は敷地の半分以上を庭園が占めており、4~6月は新緑が芽吹き、一年の中でも特に心地よいシーズンだ。訪れた際は歴史を感じられる建築空間と自然美の調和にも着目してみよう。なお、本展はオンラインによる日時指定制のため、訪れる際には注意してほしい。
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