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今、サンドイッチがブームになっている。その理由はこうだ。この1年で世界中の飲食店が、我々のロックダウン生活に合わせて、カジュアルで持ち帰りに適したメニューをより多く提供するようになった。
もともと世界中で愛されていた謙虚かつハンディーなメニューであるサンドイッチは、創造性を楽しみながら、快適に炭水化物を摂取する手段として、コロナ禍で瞬く間に世界中のメニューのトップに躍り出たのだ。
ひっそりとしていた街が本来の姿を取り戻し、飲食店が次々とオープンしていく今でも、サンドイッチは人気。もちろん我々もその衰退は望んでいない。もしこれらのサンドイッチが話せたのなら、この1年に経験した回復、生き残り、そして無限のイノベーションの物語を語ってくれるに違いない。
2枚のパンの間に好きな具材を詰め込むという古くからある芸術に敬意を表し、我々は今、世界で最も素晴らしく、センセーショナルなサンドイッチにスポットライトを当てた。
1. Wax Paper Chinatown『ガース・トリニダード』(ロサンゼルス)
具材
ローストターキー、コールスロー(キャベツ、かんきつ、セラーノ)、ニンジンのピクルス、アリオリ(ミソとゴマ)、コリアンダー、ふりかけ、スライスアーモンド
パン
Bub & Grandmaのフォカッチャ
アボカドトーストの話が出る前に言わせてほしい。ロサンゼルスを体現するサンドイッチを選ぶとするならば、この『ガース・トリニダード』以外にはないだろう。Wax Paperのチャイナタウン店だけで食べられるこのローストターキーサンドイッチは、この街のあらゆることを取り込んでいる。
まず「ガース・トリニダード」とは、ロサンゼルスの人気ラジオ局、KCRWで活躍するDJの名前だ。具の影の主役はメキシコ風コールスローで、味付けは日本風。パンにはファーマーズマーケットの人気店、Bub and Grandma’sのふわふわフォカッチャが用いられている。甘くて辛いキャベツ、かんきつ、セラーノ(メキシコの青唐辛子)が一体となったコールスローを最後の一口まで求めてしまう、うま味たっぷりの大作だ。
この1年、キレイに食べることが難しい『ガース・トリニダード』を周りの目を気にせず、プライベートな空間で食べられたことは良かったのかもしれないが、小さなモールに入っている店の6席しかないカウンターに座って、またがぶりと食べたいものだ。(Michael Juliano, Time Out Los Angeles)
2. Dom’s Subs『コールドカッツ』(ロンドン)
具材
ブレザオラ、ガバグール、サラミ、モルタデッラ、プロヴォローネ、ビネガーペッパーズ、レタス、トマト、マヨネーズ
パン
セモリナサブロール
このサブ(サブマリンサンドイッチ)は、見た目通りにおいしい。使われている肉は、ルビー色のブレザオラ(牛肉の生ハム)、ナッツの入ったモルタデッラ(ボローニャソーセージ)、ドラマ『ザ・ソプラノズ』のトニーも認めたガバグール(イタリアの生ハム)、コショウがきいたサラミの4種。
添えられた野菜が歯答えと酸味を与え、モチモチしたセモリナ粉のロールパンが具材をしっかり包み込んでいる。食べる前に、両手を使って口の中をストレッチする必要があるかもしれないぐらいのボリュームも魅力。ロンドンはサンドイッチの街であり、Dom'sは今や我々のリーダーといえる。(Joe Mackertich, Time Out London)
3. Dutch Smuggler『ミーゴレントースティ』(シドニー)
具材
ミーゴレン、目玉焼き、ベルギー・エシャロット、モッツァレラチーズ、グリュイエールチーズ
パン
食パン
炭水化物を、よりしっかりとした炭水化物で包み込むというコンセプトは、世界のどの街でも小麦好きの興味をそそる。シドニーのCBD地区の穴場といえる Dutch Smugglerが提供するこのミーゴレンのホットサンドには、秀逸なサンドイッチがそうであるように、材料がただ合わさっただけ、という以上のおいしさを感じることができる。
スパイシーマヨネーズが塗られたパンに挟まれているのは、甘い辛いインスタント麺、半熟の目玉焼き、ベルギー・エシャロット。2種類のとろとろのチーズ(モッツァレラとナッツ入りのグリュイエール)が、それらの全てを華やかにまとめている。
このサンドイッチは大学生たちが夜中に求めるものの典型だが、こちらはもちろん「合法」だ。ピシッとしたシャツを着てブリーフケースを持った銀行員たちも、この味を求めて列をなしている。(Divya Venkataraman, Time Out Sydney)
4.ダカフェ恵比寿店『イチゴサンド 』(東京)
具材
生クリーム、日本産イチゴ
パン
食パン
驚くほどシンプルな3つの素材を使ったフルーツサンド。甘い香りが楽しめ、口いっぱいに頬張れる逸品だ。フルーツサンドは、日本ではよくあるメニューであり、東京のさまざまな店でも見かけるが、この店ではこだわりの材料を使うことで、シンプルな組み合わせながら、突出したものを作り出すことに成功している。
どちらかというと、ここではパンは脇役。生クリームとイチゴという、2つの主役を包み込み、引き立てることに徹している。生クリームは自家製。日本全国の農園から直接仕入れられる、丸々とした絵に描いたように完璧なイチゴの甘さに負けない塩味がおいしい。(Lim Chee Wah, Time Out Tokyo)
5. Foxface『スモーキングフォックス 』(ニューヨーク)
具材
チェリーウッドでスモークした骨なしリブ、コールスロー、玉ねぎのピクルス、自家製スパイシーソース
パン
チャバタ
この1年は絶え間ない革新が続いた年だった。この間、限りのない創造性でニューヨークのサンドイッチシーンをリードしたのが、イーストビレッジのセントマークスプレイスにあるこの店だ。Foxfaceの魔術師が小さなウィンドーから日々提供しているのは、ヘラジカやラクダなどの希少な肉を使ったエキサイティングなサンドイッチばかり。
しかしこの店の主役は、唯一毎日メニューに乗るポークリブを使った『スモーキングフォックス』だろう。オレンジビネガーと舌を刺激するハバネロを使った自家製ホットソースが生み出す、辛さと甘さのバランスが絶妙なサンドイッチだ。まるで、大学院に進学したマックリブとでも言おうか。遊び心があって、創意工夫に富んでいて、人気なのもうなずける。今のニューヨークの街が持つ、やる気とDIYスピリットを体現したメニューといえるだろう。(Will Gleason, Time Out New York)
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