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ストックホルムやタリン、ニューヨークに拠点を持つ写真美術館、「フォトグラフィスカ (Fotografiska)」が2023年9月、ベルリンのミッテに新しい美術館をオープンした。
2010年にスウェーデンで誕生した同美術館は、投入型の展示や多彩なイベントプログラム、そして印象的な建築環境を組み合わせた革新的なアプローチで知られる。
「ベルリン・アート・ウィーク」期間中の9月14日には、美術館の開業を祝うグランドオープニングが開催。記念すべき第1回目となるエキシビションのオープニングだけでなく、DJによるパフォーマンスやエレクトロパンクの代名詞、ピーチによるライブ演奏などが行われた。
フォトグラフィスカの運営チームは、「世界一流の写真と多彩なプログラム、ラグジュアリーな食事、そして驚くような新しい視点」を提供していくとコメント。国内外から、多様なバックグラウンドを持つ芸術家の才能を支持することを目指す、と意気込みを見せている。
館内には6フロアにわたる巨大な展示スペースを展開するほか、ベーカリーやバー、ラグジュアリーレストランを併設。南アフリカ人アーティスト、キャンディス・ブレイツ(Candice Breitz)の「Whiteface」(12月4日(日)まで)や、女性のアイデンティフィケーションを取り扱う写真シリーズ「NUDE」(2024年1月14日(日)まで)、ビジュアルアーティストでDJのジュリアナ・ハックステーブル(Juliana Huxtable)の個展「USSYPHILIA」(1月21日(日)まで)などの展示が開催されている。
しかしミッテに誕生した巨大ギャラリーは、多くのベルリン市民の間で物議を醸し出しているのも事実。ジェントリフィケーションによって急速に高級化するベルリンにおける「アートウォッシュ」だと、議論が巻き起こっているのだ。
美術館が開業したのは、もともと歴史ある百貨店だったという立派な建造物。ベルリンの壁崩壊直後から2010年代初頭までは、スクワット運動(空き家となった建物を占拠し、生活環境を自治的に作り上げる運動)を行うアーティストたちの拠点だったことでも知られる。
彼らは「Kunsthaus Tacheles」や「Art House Tacheles」というアートセンターを自治的に運営しながら活動していたが、2012年に強制立ち退きが執行された。
ベルリンのアートシーン、そして社会運動の歴史を語る上では欠かせない重要な場所に誕生した、フォトグラフィスカ。Instagramの、「コミュニティーと文化交流のための宮殿」といううたい文句に反論する市民も出てきている。きらびやかな美術館誕生の背景に、ジェントリフィケーションの波によって追いやられたアーティスト達の歴史があることを忘れてはいけない。
「フォトグラフィスカ ベルリン」についての詳細は、公式ウェブサイトを確認してほしい。
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『Berlin just got a massive new art museum(原文)』
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