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2024年11月2日(土)~4日(月・祝)の3夜にわたり、新宿・歌舞伎町で新たな芸術祭「BENTEN 2024」が開催される。ホストクラブやバー、能舞台、オルタナティブスペースなど、これまで個々に活動してきた場が結束し、「夜の街」歌舞伎町ならではの躍動的な芸術祭を仕掛ける。
今回、7つの会場とプログラムの一部が発表されたので紹介したい。
芸術監督はChim↑Pom from Smappa!Group
芸術監督を務めるのは、アジアを代表するアートコレクティブ、Chim↑Pom from Smappa!Group。10年以上にわたり歌舞伎町でのプロジェクトを継続的に展開しており、2019年に歌舞伎町の雑居ビルを丸ごと使った「人間レストラン」、2023年には今回の会場の一つでもある「王城ビル」で「ナラッキー」を開催している。
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3夜にわたって、個別のスペースをアートの生態系としてつなげ、歌舞伎町がすでに独自の芸術地区として成立していることを可視化するという。
60年代のシンボル的建物「王城ビル」
1964年、「東京オリンピック」の年に建てられた、城のような風貌の「王城ビル」。純喫茶、キャバレー、テレフォンクラブ(テレクラ)、カラオケと時代の変化に合わせてさまざまな商売が行われた、非常に味のある建物だ。
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このシンボル的な建物では、11月2日・ 3日(日)に、 2022年まで渋谷でクラブ 「Sound Museum Vision」「Contact」を手がけていたGlobal Heartsが音楽イベントをプロデュース。また、チェン・ティエンジュオ(Chen Tianzhuo)が大規模なインスタレーションを展開する。
さらに、会田誠や「すすきの夜のトリエンナーレ」など、おいしいものや楽しいことにこだわるアーティストやアートコミュニティーが集まり、朝まで飲食やパフォーマンスを行う横丁イベントも。ダラダラと、緩く楽しめる場を目指す。
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新宿最ディープな会場「東京砂漠」
狭い小道を通り、バラック小屋のような家屋が並ぶ面白い立地の「東京砂漠」。アート愛好家が集うアートバーだ。ここでは、アーティストのトモトシが、新宿で最もディープな会場の立地を生かしたサイトスペシフィックな展示を仕掛ける。
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通常営業では、多様なバックグラウンドを持つバーテンダーが日替わりで行い、日曜日は主にアーティストがバーに立つという。
ごみ置き場からたどり着く「新宿歌舞伎町能舞台」
1941年に作られ、2022年に同芸術祭のプロジェクトメンバーであり、歌舞伎町で多数のホストクラブや飲食店などを展開するSmappa!Groupが購入した「新宿歌舞伎町能舞台」。マンションの一部にあるため、どう入ればいいのかが分かりにくいが、ごみ置き場を通ってたどり着くのが何とも面白い。
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普段は、Smappa!Groupに所属するホストが日舞などを練習をする場所として活用されている。今回は、渡辺志桜里+加藤眞悟+安田登+ドミニク・
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アーティストのやりたいことがそのまま実現できる「WHITEHOUSE」
ツタが絡まる外装を持ち、夜に訪れるとかなり異様な雰囲気を放つ「WHITEHOUSE」。Chim↑Pom from Smappa!Groupのアトリエとして活用していた場所で、ギャラリーとして2021年にオープンした。かつては、1960年の前衛芸術運動「ネオダダ」の活動拠点でもあり、建築家・磯崎新の処女作としても知られている。
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アーティストがやむに止まれず作ったものがそのまま見られる、都内で唯一と言ってもいい場所だ。作品表現に対して規制が強くなる現代の美術シーンの中で、同ギャラリーはそれが一切なく、作家がやりたいことをそのまま実現できるという。今回の芸術祭中は、篠田千明が新作の演劇公演と展示を行う。
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そのほかにも、ホストクラブ「AWAKE」で、インフルエンサー現象や、セレブが生み出す文化トレンドを批判的に探求する台北のアーティスト、ユ・チェンタ(余政達)が生み出したキャラクター「FAMEME」が登場。ホストクラブの観客を招き入れ、異性愛規範の疑似恋愛をクィアの視点から解きほぐすプログラムを展開する。
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また、町と融合しながら現代アートに触れられる場所を目指す「デカメロン」 の詳細は、第2弾のプログラム発表で公開される。
歌舞伎町の「喧騒音」が流れる公式ウェブサイト
ホワイトキューブから抜け出し、夜の街・歌舞伎町で真っ向からお金と欲に向き合っていくような本芸術祭。1960年代から残っているレトロな建物やユニークな人が集うバー、一見危なそうな小道を巡っていると、だんだんと活力にも満ちあふれるようだ。街歩きもぜひ楽しんでほしい。
最後に、10月4日に解禁された公式ホームページにも注目したい。歌舞伎町らしい「喧騒(けんそう)音」がサウンドとして流れ、街のマップ写真を5回ほどタップしていくとようやくトップページにたどり着く。この地の騒がしさや無秩序ささえも魅力として捉えた、こだわりを感じる。11月が待ち遠しい。
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