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ミツバチが置かれている状況は、知っているだろう。気候変動と不適切な農業により、イギリスでは1985年からミツバチの数が50%以上も減少。一方アメリカでは、1ヘクタール当たりのミツバチのコロニー数が1962年以来、なんと90%も減少している。
しかしそれがなぜ由々しいことなのか? 実はミツバチは、人類の大半を養う100種の作物のうち70種の受粉に貢献している。つまりミツバチがいなければ、我々は食べ物を手に入れることができないと言っても過言ではないのだ。
幸運なことに、大事なミツバチの数を増やそうと、屋上やバス停、コミュニティーガーデンなどへの巣箱の設置を活発に行っている都市がある。
スロベニアの首都リュブリャナでは、10年ほど前に市内最大の文化施設であるカンカルジェフドムの屋上への設置を皮切りに、約150の企業や個人がミツバチの巣箱を設置。今では20万ものミツバチコロニーが作られているという。
同市の都市養蜂家協会を率いるゴラズド・トゥルシュノヴェクは、ミツバチと都市の関わりを次のように説明する。「ミツバチに優しい街は、人間にとっても住みやすい街となります。また私たちは、人間は自然の一部であること、都市は田舎よりもさらに豊かな生物多様性を保持できるという意識を高めたいと考えています」
都市部での養蜂はパリでも盛んだ。Apiterra社のような民間企業が、大企業の屋根にミツバチを呼び込むためのサポート業務を行っており、2021年時点で登録された巣箱は、2500以上に上る。
また、ロンドンではBermondsey Street Bees(BSB)のような組織が、街の中心でミツバチを飼う方法をコミュニティーにアドバイスしており、レストランやシェフ向けの蜂蜜も生産にも取り組んでいる。
こうした動きは全て好ましいことではあるが、ミツバチに優しい植物の量も増えないと意味がないと警告する一部の専門家もいる。
BSBのサラ・ウィンダム・ルイスは、「ロンドンはヨーロッパで最もミツバチの数が多い都市で、ひと頃の3倍は増えています。しかし、同時にこの街の緑地は急速に縮小しているのです」と警鐘を鳴らす。実際ルイスたちは、ミツバチが餌を探し回れるように、ドックランズ地区の遊休地にミツバチを移動させているそうだ。
またアメリカでも、ミツバチの巣箱を管理するAlvéole社が、利益の一定割合を野草の植栽計画に寄付している。全ての養蜂家が同様の行動をするべきといえるだろう。
ミツバチの巣箱を設置するのと同じペースで緑を植えられれば、都市はより(ミツバチで)にぎやかに、よりグリーンになる。2022年の都市の発展において、ミツバチは「不可欠」なものといえるのかもしれない。
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