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ブルータリズム建築の「怪物」であるバタシー発電所は、約40年もの間、テムズ川のほとりに寂しくたたずみ、再び人々から「愛される」のを待っていた。その間、イギリス指定建造物2級に指定されながら、完全な廃虚と化す寸前まで追い込まれたこともあった。しかし、2012年にこの場所を豪華な複合施設として生まれ変わらせることを決めたデベロッパーたちによって、その未来は救われることになった。
それから丸10年、ついに再開発が完了。バタシー発電所が新たに複合商業施設として、2022年10月14日(金)にグランドオープンすることが発表された。同施設には高級ブランドと手頃な価格の衣料品ブランド、新しい書店、多数の娯楽施設などが入り、2023年には食料品店のオープンも予定されている。
この再開発は、90億ポンド(約1兆4,610億円)かけたナイン・エルムス地区再生プロジェクトの一部。マレーシアの投資家コンソーシアムがオーナーである同プロジェクトには、4000戸以上の住宅、新しいNHS(国民保健サービス)ビル、19エーカー(約7万6890平方メートル)の公共スペース、さらにはElectric Boulevardという名の地元コミュニティーのための新しい目抜き通りの建設も含まれている。
敷地面積は42エーカー(16万9968平方メートル)と、とても広大。プロジェクト全体で、1万7000人以上の雇用と首都経済に200億ポンド(約3兆2,530億9,000万円)をもたらすと予測されている。
この発電所の再開発に当たり、デベロッパーはクリエーティビティーを発揮。有名な4本の煙突のうち1本を、高さ109メートルまで上がれるエレベーターに改造し、ロンドンの景色を360度見渡せるようにした。一方、発電所の旧制御室は、元々あったダイヤルや制御装置をそのまま残し、しゃれたイベントスペースとして再利用されるという。
バタシー発電所は、1929年から1955年にかけて「バタシーA」と「バタシーB」の2つに分けて建設され、石炭火力発電所として稼働していた。最盛期にはバッキンガム宮殿、国会議事堂、カーナビーストリートの電力など、ロンドン全体の5分の1を供給していた巨大な「電気の神殿」だった。しかし、1983年に操業を停止して以来、これほど広大な敷地をどうするべきなのかと、ロンドン中心部の「頭痛の種」となっていた。
ZARAやM&Sのフードホールなど、おなじみのブランドが新しく登場する新施設とともに、ナイン・エルムス地区は世界に名を馳せることになるだろう。世界で最も有名な発電所が、寂しさを感じたり、愛に飢えることは、もうないはずだ。
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