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昔ながらの印刷工場や住宅・小さな交番など、古き良き東京の景色の中に突如出現したモダンな建物。この建物がある交差点だけオープンな洗練さを持ち合わせており、さながら上質なアメリカ映画のような国際的な風情なのだ。
2024年10月19日(土)に台湾ダイナー「バンライ ハンテン(BANRAI HANTEN)」が、文京区水道にオープンする。ホテル「ショートスイドウ(SHORTsuido)」の1階に位置し、コーヒースタンド「ストロール イン(stroll inn)」も併設。手がけたのは、建築家のクマタイチ。都市の中でコミュニティーを育むことを設計理念としている彼の思想が、このダイナーにも色濃く反映されている。
同店が位置する神楽坂・江戸川橋・早稲田に囲まれた文京区水道はレトロとモダンが融合した落ち着きのあるエリアだ。神楽坂や早稲田は、近年は多くの訪日外国人でにぎわい、多国籍化が進んでいる。そんな背景の中に新たに加わったのが、このダイナーだ。
地域に愛されてきた中華料理店「萬来飯店」をリノベーションした同店は、ネオンサインが煌々(こうこう)と光るスタイリッシュな外観が目を引く。
一面ガラス張りの外観からは、コーヒースタンドと台湾料理店がシームレスになっている25席程度の客席が見える。オープンな縁石型テラスも相まって、引き戸を開け放せば、もはや内と外の境界がなくなり、この店自体が街の風景になるかのようだ。
メニューは台湾家庭料理が中心で、朝から夜まで気軽に食べられる優しい味わいが魅力。シェフは神楽坂の人気台湾レストランでの経験を持ち、台湾独特のスパイスや素材を生かした本格的な料理を提供する。
「萬来飯店」の名物であったカツカレーは、排骨を大胆に乗せ、台湾のウスターソースを使った新しいアレンジで引き継がれた。ドリンクは主にナチュラルワインを提供し、クラフトビールは国内生産のものが揃う。いずれも同じくクマが展開する奥神楽坂の「ショップ(SHOPPE)」で取り扱っている商品などが並ぶ。
シェアハウスのようなミニマルホテルを併設
このダイナーがユニークなのは、2階から4階に小さなホテル「ショートスイドウ」が併設されている点だ。
和室など1部屋ごとにデザインが異なる部屋が5つあるほか、「また帰ってきたくなる」というコンセプトを掲げているように、共同キッチンを備えたロビールームなどシェアハウス的な使い方も意識。部屋はアメニティや家具も必要最低限しかない。これは、私物やその地で手に入れたものなどを置いていくことによって、より「自分の空間」に変わっていくのを体感できるようになるのではないかという発想からだ。
クマはこれまでも、シェアハウスやシェアオフィスの1階にレストランやバーを併設し、住人と地域住民が交流する場を作り上げてきた。「旅行者がこのローカルな場所で、地元の人やほかの旅行者と自然に関係を築いていくことに興味があります」と語るように、このダイナーも、コミュニティーが交わる場として機能することを目指す。
「ストロール イン」は、早稲田の人気コーヒースタンド「ストロール(Stroll)」の2号店。福岡のロースタリー「コーヒーカウンティー(COFFEE COUNTY)」など上質なロースタリーから厳選した豆を取り揃え、客が好みに合わせてカスタムできるコーヒーを提供する。同店からスタートするという特製バナナジュースも見逃せない。ふらりと寄りたくなる気軽な雰囲気も魅力的だ。
クマの設計理念が息づく同店。ここで生まれるコミュニティが、果たしてこのダイナーをどのような場所に育てていくのか、今から楽しみだ。
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