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「バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰―ガンダーラから日本へ―」展が、日本橋の「三井記念美術館」で2024年11月12日(火)まで開催されている。バーミヤン遺跡の壁画に焦点を当てた本展では、壁画に描かれている太陽神と弥勒の世界に迫ることで、特に弥勒信仰の地理的な広がりをたどる。
バーミヤン遺跡は、「文明の十字路」とも呼ばれるアフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈に位置し、崖面には無数の石窟や、2体の巨大な大仏が彫られている。「東大仏」は高さ38メートル、「西大仏」は55メートルに及び、その壮大さは当時の栄華を表していた。鎌倉大仏の台座を含めた高さが約13メートルであることから、バーミヤン大仏の圧倒的なスケールが感じられるだろう。
7世紀には、『西遊記』に登場する三蔵法師としても親しまれている中国の僧・玄奘(げんじょう)がこの地を訪れ、信仰の様子や大仏の姿を『大唐西域記』に記録している。しかし、2001年3月にイスラム主義組織・タリバンによって2体の大仏と、大仏が収められていた仏龕(ぶつがん)の壁画は無情にも爆破されてしまった。この出来事に心を痛めた人は多いのではないだろうか。
復元図から東西文明の交流をたどる
本展では、日本の調査隊が爆破前に記録した写真やスケッチをもとに新たに作成した壁画の復元図が公開されている。かつてのバーミヤンの輝かしい仏教世界を目にできる機会は貴重なものといえるだろう。
西大仏の頭上には、「弥勒菩薩(ぼさつ)」と、菩薩が住むとされる兜率天(とそつてん)の様子が再現されている。また、東大仏の頭上には、古代ペルシアに起源を持つゾロアスター教の神・ミスラが4頭の白馬に引かれた馬車に乗る姿が描かれており、バーミヤンが異文化の影響を受けていたことが垣間見える。
さらにミスラの下方左右には、西洋の宗教画でも見られるような翼を持つ天使が描かれており、上部には東洋の画題としてもお馴染みの『風神雷神図』に登場する風神の姿さえ登場する。異なる宗教の神々が一つの壁画に共存していることは、バーミヤンが多文化の交差点であったことを物語っている。
弥勒信仰は日本へ
バーミヤンの壁画は、東西文明の交流を象徴するものであり、その中心に描かれているのが弥勒菩薩である。弥勒菩薩は未来仏として、ブッダが入滅してから56億7000万年後に兜率天から地上に降臨し、人々を救済すると信じられている。この弥勒信仰はインドからシルクロードを経て、中国や日本にも伝わった。
会場には、ガンダーラや中国、日本で作られた数多くの弥勒菩薩像が展示されており、生み出される場所が移動するにつれて姿を変えていく様子を見ることができる。その変化する姿を通して、各地域の人々がそれぞれの理想像を弥勒菩薩に投影していたことがうかがえる。
本展は、出品されている仏像や仏画の美術品としての美しさを鑑賞するだけでも十分に見応えがあるが、鑑賞前にその歴史的背景に触れておくと、より豊かな鑑賞体験が得られるだろう。
バーミヤン大仏とその壁画は、さまざまな宗教や文化が交わった歴史の証しであり、寛容さや共存の象徴でもあったことが伝わってくる。本展を通じて、かつての東西交流の在り方を感じ取ってほしい。
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