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予約の取れない人気店として知られる「鮨つきうだ」の姉妹店として2019年にオープンした、中目黒の「鮨おにかい」。 にぎり15貫と3品の小皿料理から成る「おまかせコース」を1万1,000円(以下、全て税込み)と、楽しく、リーズナブルな価格で楽しめるとあり、若い世代を中心に話題を集め、予約が3カ月待ちとなったこともある。
そんな鮨おにかいの5店舗目となる新店「浅草橋 鮨うらおにかい」が、2023年7月オープンした。
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まずは、鮨おにかいについて簡単に紹介しておきたい。人気の要因は、江戸前寿司の伝統や本格さを重視しつつも、独創性を加えた寿司を肩肘張らずに楽しめること。筆者は、コロナ禍真っ最中の2020年春、2号店となる「鮨おにかい+1(たすいち)」を訪ねたことがあるが、カウンターを囲む人たちの年齢層の低さに驚いた。たまたまその日がそうだったのかもしれないが、20代、30代が主流だった。
「おまかせコース」の内容は、毎月、各店の責任者が集まる商品開発会議で決定しているそうだが、「本マグロの中トロ」「海老天のり巻き」「マグロ手巻き」は、どの時期に訪れても味わえる名物メニューだ。
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大トロのあぶり、中トロ、赤身の漬け、3貫分のマグロを使った「マグロ手巻き」は、押しも押されもせぬ看板アイテム。香ばしい有明の海苔と、マグロの重層的なうま味、そして、こだわりのシャリが混然一体となって口内に広がる。これと双璧を成すスペシャリテが、ミシュラン一つ星に輝く「天婦羅 みやしろ」監修の「海老天のり巻き」だ。さっくり薄い衣のぷりぷりの海老天は少量のシャリと海苔を身にまとい、手渡しされる。
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この日のハイライトは、たっぷり脂を蓄えた、北海道のニシン。ちなみに筆者は、ニシンを刺し身で食べたのは初めての体験だ。塩味と酸味を強めにきかせた赤酢を使ったシャリは、ぷりぷりのニシンの濃厚なうまみを最大限に引き上げていた。
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新店に話を戻そう。同店は、浅草橋駅から徒歩1、2分足らずの好立地にある。しかし、入り口が非常に分かりにくい。工事中の最中のような外観は、つい通り過ぎてしまいそうになるが、よく見ると店名が記載されている。
店主の長谷川健太は、「これが完成形です。遊び心が欲しくて。でも、なかなか勇気のいる決断ではありました」と笑う。躊躇せず店に入ってくる人もいるが、「本当にここなの?」と、入れない人もいるので、予約の時間にはスタッフが外に出て出迎えるそうだ。
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店内は前衛的な外観とは一転。スパイスワークスとともにデザインを考案しており、つけ場を囲むように9席のカウンター席が設えられていた。システムは一斉スタートの2部制。日・祝日は12時からの回も設ける。
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浅草橋では、「おまかせコース」のほか、イタリアワインで構成されるワインペアリング5,000円、ノンアルコールペアリング3,800円を用意した。もちろん、ビールや日本酒などをアラカルトでオーダーもできる。
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また、エンターテインメント感を大切にしている長谷川は、あぶりやスモークなどのといった華やかな「演出」で、ゲストを盛り上げることにも心血を注いでいる。例えば、目の前で仕上げる「鯖スモーク」は、通常、酢で〆るところを、塩で下味をつけたうえで醤油漬けにし、サクラやブナなどの広葉樹のミックスチップで燻して提供。蓋(ふた)を開けた瞬間、スモーキーな煙と香りが立ち上がり鼻腔と胃袋を刺激する。また、パティシエとしての経験もあり、アニバーサリーデザートの提供も可能だ。
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本格的な江戸前でありながら、料理、ドリンク、外観、内観と、至る所に遊び心満載の、浅草橋 鮨うらおにかい。おまかせで寿司を食べるのが初めてという人も、食べ慣れている人も楽しめる、知っていることを自慢したくなる一軒だ。
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