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解体予定のビルに必見のグラフィティアート、荏開津広が語る「ART GOLDEN GAI」

渋谷のビル1棟丸ごとアートの場へ、1月28日まで

編集
Genya Aoki
テキスト:
Hiroshi Egaitsu
アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTOフィリー言語学校展示風景
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渋谷駅南口から徒歩約5分、恵比寿や代官山からも中間地点でアクセス可能な建造物が、老朽化のために2025年2月に解体される。現在、その10階建て、50戸にも渡る空間を丸ごと使ったアートイベント「ART GOLDEN GAI by NoxGallery x Superchief x Brillia」が開催中だ。

主催は、東京建物株式会社、そして同ビル1階にあるNOX GALLERYを運営するエフ広芸。東京の混沌(こんとん)としたキャラクターを鮮やかにアートとして観客に問うことに成功を収めたこのイベントに、まずは拍手を送りたい。

アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTOART GOLDEN GAI 全景

ビル1棟を丸ごとアートの場を化すだけでなく、東京のNOX GALLERYとNY/LAの「Superchief Gallery」とのコラボレーション的なキュレーションでもあるこの展示に参加したアーティストは、なんと数十人にも及ぶ。そもそも賃貸マンションだった同建物の各部屋を、彼らがギャラリーや美術館の展示室さながら、アートの現場に変貌させるのが「ART GOLDEN GAI」である。

エントランスから各階のいわゆる共有部分は、『ジョーカー』『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』など多くのハリウッド映画やテレビに背景美術家(シーニックアーティスト)として参加したAmanda Hagyがプロデュースをして、「NEO TOKYO」「JAPANESE VILLAGE(日本の伝統的な村)」「Burnout(焼け跡)、それに「Dekotora(デコトラ)」など各階ごとにテーマが設けられ、それぞれに足を踏み入れるとそこからまた映像展示もあればインスタレーションもというその多様なスタイルの変化は、観客を飽きさせない。

アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTOバーンアウト(Burnout)フロア

「ART GOLDEN GAI」という名前は、新宿は歌舞伎町一丁目の一角、250軒以上の小さなバーなど飲食店を中心にさまざまなスペースが約2000坪の狭い空間にひしめく地域の通称「ゴールデン街」に由来する。第二次世界大戦後まもなく闇市としてその歴史の幕は開き、文学・美術・音楽などカルチャーの香り高い坩堝(るつぼ)として、現在では多くの観光客も引き寄せるグローバルに人気なスポットである。

アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTOジャパニーズ・ヴィレッジ・フロア(JAPANESE VILLAGE)

そもそも、東京の大きな魅力は「ゴールデン街」のようにグローバルに比較してもダイナミックでありながら、ほかの都市では体験できないユニークなカルチャー/アートを体験できるところにある。ここでは「ART GOLDEN GAI by NoxGallery x Superchief x Brillia」、その目玉のひとつと思われる6階はグラフィティのフロアを少しだけ紹介しよう。

アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTO6Fの廊下の様子

1970年代のニューヨークのストリートで激しく発達したグラフィティは、1980年代には既に現代美術のギャラリーへ持ち込まれ、グラフィティの背景を持ったジャン=ミシェル・バスキアなど今や日本でもお馴染みのスーパースターを生み出し、世界中に広まったのはご存知の通り。

ここではなんと、1990年代以降のグラフィティ/ストリートアート/コンテンポラリーアートを考えるときにグローバルに外せないアーティストたちの作品や足跡を一気に楽しむことが可能だ。 

まず到着して廊下の壁に描かれた無数のグラフィティの中でも、鮮やかなウサギたちと文字に目を留める方は多いだろうが、これらは、日本人女性ながらニューヨークを拠点に世界で活動するLADY AIKOのシグナチャー的なピースだ。

フィラデルフィアでそのキャリアを開始し、2000年代にはアーティスト活動を始めるESPOことスティーヴン・パワーズ(Stephen Powers)の部屋と、その隣、ドアに「フィラデルフィア語学学校」とスプレイされたメディアでその姿を現すことのない謎めく伝説的なグラフィティ・ライターKADISMたち、それぞれの部屋では、グラフィティの初源的なパワーとメディアをミックスさせアートに昇華させた魅力を存分に楽しむことができる。

実はそもそもグラフィティ自体がフィラデルフィア発祥であり、ここで見ることができるのは、何世代もストリートで伝承されてきたスタイルである。それに2000年代のNYのストリート/カルチャーシーンに欠かせない伝説のIRAK CREWの創設メンバー、マイク・アイラク(Mike Irak)の部屋の展示、グラフィティとは何かをインスタレーションとしても現す。

アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTOESPO展示風景
アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTOフィリー言語学校展示風景

日本から迎え撃つのは、snipe1、MIRA、NODAにtpfxなど。You the Rock もあとから参戦。それぞれが全く異なるが、グラフィティを基本にどのようにアート/インスタレーションとして成立させるのか、コンセプチュアル/リアルな方法論が興味深い。

そして、このグラフィティの展示は「ART GOLDEN GAI」のほんの一部に過ぎないのだ。NOX GALLERYは、日本でも珍しいNFTアートの展示や販売を行うディストリビューターだが、1・2階の没入型のアート体験ができるスペース、別会場などでもVMOやさまざまなアーティストのパフォーマンスやパーティーが会期中予定されているし、Pepelangelo、CODE:V.ex、Todd Seelie、RAX、KANJI、FAR、EMI KUSANO、HARTO、ELENA KNOX、SHINTARO KAGO、Alligator Jesus、Clown Vampなどなどなど(順不同)….。

アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTOMIKE IRAQ 展示風景
アートゴールデン街
Photo: JOJI SHIMAMOTOSNIPE-1 6F廊下

二度と繰り返されない展示として日々変化していくらしい「ART GOLDEN GAI by NoxGallery x Superchief x Brillia」は1月28日(火)まで開催中。会期中にぜひ訪れていただきたい。

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