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「アートフェア東京2024」でしかできない5のこと

キュレーションブースの新設や初参加の海外ギャラリーらにも注目

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アートフェア東京2024
Photo: Naomi
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日本最大級の国際的なアートイベント「アートフェア東京2024」が、今年も有楽町の「東京国際フォーラム」でスタートした。国内各地のギャラリーが集結し、今手に入れたい注目作家の作品を展示・販売する。また、石川県の「金沢卯辰山工芸工房」をはじめとする工芸の作品、古美術や骨董(こっとう)の老舗も参加。多様なジャンルのアートを網羅しているのも、本フェアの特徴だ。

本記事では、2024年の「アートフェア東京」で特に見逃せない5つのポイントを紹介しよう。

アートフェア東京2024
Photo: Naomi

1. キュレーションブース「The Project YUGEN」を楽しむ。

間もなく20周年を迎える「アートフェア東京」において、初めての取り組みとなるのが、「ロビーギャラリー」エリアで開催される「The Project 幽玄/ YUGEN」だ。

アートフェア東京2024
Photo: Naomi

ロンドンを拠点にキュレーター・ライターとして活動するタラ・ロンディ(Tara Londi)がキュレーションを担当。パリの「A2Z Art Gallery & Radicants」など、ギャラリーの枠を越え、デヴィッド・ヌーナン(David Noonan)、ドミニク・ラクロシュ(Dominique Lacloche)、枝史織らの作品を展示している。

例えば、メキシコシティとニューヨークに拠点を置く現代アートのギャラリー「JO-HS」から紹介された、ニール・ハマモト(Neil Hamamoto)のカラフルな大型作品は、よくよく観察すると、プライスシールの集積によるもの。ポップな印象の裏側に、資本主義や大量消費へのアンチテーゼを垣間見るようだった。

アートフェア東京2024
Photo: Naomiニール・ハマモトの作品群
アートフェア東京2024
Photo: Naomiニール・ハマモト「Untitled ( triptych ) 」(2024)より

1993年ニューヨーク生まれのハマモトは、スタンフォード大学で機械工学や製品設計などを学んだ経歴を持ち、彫刻、絵画、写真、インスタレーションなどの作品を制作・発表。2018年からは、ブルックリンを拠点とする非営利のアート団体「WORHLESS STUDIOS」を自ら立ち上げ、新進アーティストのためのワークスペースを提供するなど、ユニークな活動も行っている。

このほかにも、おそらく日本で初めて紹介されているであろう作家たちの作品群が並んでいる。日本語の通訳スタッフも常駐しているので、ギャラリストらとコミュニケーションを取ってみてほしい。

2. 絵画、彫刻、工芸、浮世絵、骨董に古美術、多様なジャンルを鑑賞する。

本フェアは、誰もが無料で楽しめる「ロビーギャラリー」エリアと、有料のチケットが必要な「ホールE」エリアで構成されている(チケットは前売・当日券とも、インターネットでの予約購入制)。

ロビーギャラリーだけでも30以上のギャラリーが並び、さまざまなジャンルの作品を鑑賞できる。とてもオープンな雰囲気で、気軽にギャラリストや作家らと会話もできる。入場料もかからないので、気兼ねなく立ち寄ってみてほしい。じっくりと巡っていると、あっという間に時間が過ぎるので、余裕を持って訪れることをおすすめする。

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Photo: Naomiロビーギャラリー展示風景

有料チケットが必要な「ホールE」エリアでは、さらに100以上のギャラリーが並ぶ。全国各地、そして海外からも出展する数々のギャラリーが、今最も紹介したい作家・作品群を展示・販売している。

特に今年はミュージアムの展示室にあってもおかしくない貴重な作品が、例年以上に紹介されている印象を持った。例えば「名古屋画廊」のブースでは、フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)の素描作品「ショールを巻く女性」(1883)が、「たけだ美術」のブースでは、李禹煥(リー・ウーファン)の作品群が、そして「瀧屋美術」のブースでは岡本太郎の作品群が販売されていた。会場マップを片手に、隅々まで巡ってみてほしい。

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Photo: Naomi「たけだ美術」展示風景(ホールE)

3. 古代から現代アートまで、移り変わる表現の多様さに魅了される。

世界各国で開催されるアートフェアと、「アートフェア東京」との大きな違いといわれているのが、古美術・骨董店が参加していることだ。その賛否や評価については長らく議論されているものの、結果的にとてもユニークな形態のアートフェアとして継続してきた。

アートギャラリーを巡ることが好きでも、古美術・骨董店は少し敷居が高い、と感じる人も多いだろう。本フェアのブースなら気軽に立ち寄りやすい上、ミュージアムではケース越しにしか鑑賞できない古代の陶磁器や日本美術なども、じかに鑑賞できる。ただし、ブース内や作品の写真撮影はNGということが多いので、あらかじめギャラリストに確認しよう。

また、筆者が驚いたブースの一つが、葛飾北斎肉筆の春画を展示していた、東京・日本橋の「角匠(すみしょう)」だ。浮世絵肉筆画を中心に近世絵画全般を扱う古美術の老舗で、東京国立博物館など国内外のミュージアムからの信頼も厚い。

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Photo: Naomi「角匠」のブース(ホールE)
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Photo: Naomi「角匠」代表の角田日出男(ホールE)

代表の角田日出男は、「今秋、京都の『細見美術館』で、大規模な春画展を準備しています。その先行展示として本フェアでご紹介することに決めました」と語った。大切に保管されてきた肉筆の春画は、顔料が鮮明に残っており、目を見張る美しさだった。今秋、大きな話題となるであろう企画展を先取りできる、必見の機会だ。


4. 初出展から、お気に入りの作家やギャラリーを見つけてみる。

毎年、または数年おきに参加するギャラリーが多い中、初出展というギャラリーにも注目したい。

例えば、現代書や墨作品、現代美術作品を中心に扱う、赤坂の「北井画廊」は、直近では「ロンドンアートフェア」やベルギー・ブリュッセルでのアートフェアなど、海外のフェアに参加することが多かったという。今回は、墨と和紙を用いた綱島礼子の作品群を展示・販売。「墨の情景」と題し、自然の風景を想起させる静謐な作品世界を紹介している。室内に飾りやすいサイズ感ながら、細部までこだわっている丁寧な額装も目を引いた。

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Photo: Naomi「北井画廊」では綱島礼子の作品群を紹介(ロビーギャラリー)

紙の原料の買い付けから、製造・販売や栽培の支援、美術作品の保存修復まで手がけている、東京・日本橋「かみ屋」も初参加。陶芸作品で世界的に知られる辻村史朗の平面作品を、複数点紹介していた。辻村と長らく交流がある同店が編集に協力したという、ヨーロッパで出版された辻村の書籍も手に取れる。近日中にギャラリーやECでも販売予定とのこと、楽しみに待ちたい。

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Photo: Naomi「かみ屋」展示風景(ホールE)
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Photo: Naomi「かみ屋」展示風景(ホールE)

また今年は円安の影響もあってか、例年よりも海外ギャラリーの参加が多いようだった。

オーストラリアのシドニー、パディントンのギャラリー「N.Smith Gallery」も、本フェアに初参加。ダニー・メラー(Danie Mellor)や、過去に札幌で滞在制作をしたこともあるオーストラリアのアーティスト、トム・ブレイク(Tom Blake)らの作品を紹介している。

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Photo: Naomiダニー・メラー(Danie Mellor)「A mystic river ( balan garrgal )」(「N.Smith Gallery(ホールE)」)

ロンドンのギャラリー「HOFA」も初参加。アジアのアーティスト、スグウェン・チャン(Sougwen Chung)、イルファ・キム(Ilhwa Kim)、そして彫刻家のジェン・ルー(Zheng Lu)の3名によるグループ展「Manipulated Motion」を展開していた。

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Photo: Naomi「HOFA」展示風景(ホールE)

普段ならなかなか出会えないような作家や作品を知るきっかけになるのが、アートフェアの魅力であり醍醐味だ。作品を購入するまでは難しくとも、気になる作家や好きな作品との思いがけない出会いを、会場で存分に楽しんでほしい。

5. 後日、それぞれのギャラリーや作家の展覧会を訪ねてみる。

SNSで世界中のアーティストたちが作品や活動を発信している現代だからこそ、「アートフェア東京」の会場に足を運ぶ楽しさがある。アートフェアの余韻をもっと楽しむなら、本フェアをきっかけに知ったギャラリーや作家の展覧会にも、ぜひ足を運んでみてほしい。

例えば、ロビーギャラリーに出展する「ポーラ美術振興財団」ブースでの展示は、銀座の「ポーラ・ミュージアム・アネックス」で現在開催中の企画展「ポーラ ミュージアム アネックス展 2024 ―表彰と趣意―」と連動している。国際フォーラムから徒歩で行けるので、併せて立ち寄りたい。

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Photo: Naomi

「アートフェア東京2024」は3月10日(日)まで。会場のすぐ近くでは「有楽町ウィンドウギャラリー」も開催されているほか、都内を中心に多くのギャラリーが、出展有無を問わず、本フェアの会期にあわせるように展示を行っている。本フェアを起点に、春の東京のアートをたっぷりと楽しもう。

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