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日本で生きるフィリピンダブルに焦点、映画「世界は僕らに気づかない」先行上映会が開催

特別トークイベントも実施、飯塚花笑監督、主演の堀家一希、ガウが登壇

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Genya Aoki
「世界は僕らに気づかない/Angry Son」
Photo: Genya Aoki左から飯塚花笑、堀家一希、ガウ
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2022年12月26日、映画「世界は僕らに気づかない/Angry Son」の先行上映会が「新宿シネマカリテ」で開催された。それに先がけトークイベントを実施。監督の飯塚花笑、主演の堀家一希、その母・渡辺レイナ役のガウが登壇した。ここでは同作の紹介とともに、その様子をレポートする。

同作は群馬県太田市を舞台にフィリピン人の母親と日本人の父親を持つ主人公が、自身のセクシャリティとアイデンティティの危機に対峙する姿を描いた作品である。監督は、トランスジェンダーである自らの経験を元に制作した「僕らの未来」、トランスジェンダーとシスジェンダーのカップルを描いた「フタリノセカイ」などを手がけた飯塚花笑。本作は8年の構想期間を経て、結実したものだ。

飯塚は、自身の幼少時代をともに過ごしたフィリピン人と日本人のダブルの友人に対して「自分がいかに無理解だったかを作品に取り込んでいる」と語る。日本ではまだ人種問題が日常的に話題にあがることは少ないが、外国での上映では大きな話題を集めた。2022年の「大阪アジアン映画祭」でワールドプレミアを迎え「来るべき才能賞」を受賞。その後ドイツ、韓国、ニューヨーク、香港、オランダ、シカゴ、フィリピンなど世界各地で高評価を得ている。「日本におけるセクシャルマイノリティーや人種間の問題に関して、とても熱心に質問してくれた」と飯塚は各国上映に対しての手応えを語る。

「世界は僕らに気づかない/Angry Son」
©「世界は僕らに気づかない」製作委員会/©Soichiro Suizu

主人公の渡辺純悟を演じたのは、本作で映画初主演となる堀家一希だ。「東京リベンジャーズ」(2021年)でのパーちん役など、存在感ある演技が光る若き俊英である。1カ月間、群馬にある純悟の部屋に泊まり込み、役作りに没頭。飯塚曰く「視野が1ミリほどしかないくらい」役に入り込んでいたそう。フィリピンダブルであり、同性愛者でもあるという複雑なバックグラウンドを抱える難しい役柄に、自身の本音をうまく言葉にできず、母と衝突してしまう若者らしさと、異なる文化やセクシャリティのはざまでもがき、葛藤する姿を見事に演じている。

「世界は僕らに気づかない/Angry Son」
©「世界は僕らに気づかない」製作委員会/©Soichiro Suizu

母親・レイナを演じるのは、スコットランド人の父親とフィリピン人の母親を持つガウ。本格的な演技は初挑戦だというが、パワフルな演技で観客の視線を釘付けにする。作中の純悟とレイナは愛し合いながらも、すれ違いから常に衝突し合ってしまう仲だ。2人は映画製作中、「カット」の声がかかっても、作中のテンションを維持し続けていたそう。

「(どんな態度であっても)そこにある愛を汲み取ることが大切なんだと思います」とガウは同作に込めた思いを話す。愛ゆえの激しさの一方で、社会的な差別に対しても毅然とした姿勢を見せる。時に純悟へ不器用な言葉を投げかけ、すれ違ってしまうが、陽気さを忘れない姿に力をもらえる。

「劇場を出た後は(同作について)たくさん考えて、たくさん話をしてほしいです。話をしていくことで考えが拡がっていく作品だと思います。この映画を観ることで価値観のアップデートがあればうれしいです」と飯塚は来場を促す。多くの日本人にとって理解の外側にあるだろう「異なる文化を持った親子」や「セクシャルマイノリティー」という問題に「愛の物語」として触れたとき、自身の内側へ共感とともに入り込んでくるだろう。

2023年1月13日(金)から「シネマカリテ」、「Bunkamuraル・シネマ」ほか全国でロードショーされる。ぜひ劇場へ足を運んでみてほしい。

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