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1969年夏の「ストーンウォールの反乱」や、80〜90年代にかけて見られた、ACT UPなどの団体によるHIV/エイズ啓蒙(けいもう)活動など、ニューヨークでは象徴的なLGBTQ社会運動がいくつも行われてきた。
そうした街の歴史をアーカイブするために、2017年からThe American LGBTQ+ Museumという博物館の設立が検討されていたが、最近決まったニューヨーク歴史協会の拡張計画の中でようやく実現することになった。
1907年設立のニューヨーク歴史協会はセントラルパークウェストにある。建物の大規模な拡張工事は2022年から開始され、American LGBTQ+ Museumは2024年にオープンする予定。完成後の新しい博物館では、アメリカの歴史でも規模が大きく、また過酷な公民権運動である、LGBTQ社会運動を紹介するモノ、ポスター、写真、そのほかの記念品が展示される。
タイムアウトニューヨークの取材によると、ニューヨーク歴史協会の最高経営責任者(CEO)兼会長であるルイーズ・ミラーは、芸術的にも歴史的にも注目すべき展示品を揃えるため、これから国内に多数あるLGBTQ団体に働きかけを行っていくという。また、「新施設ができるというニュースを聞いただけで、コレクションを持っている人たちに声をかけてくれました」と、すでにうれしい反応が届いていることも教えてくれた。
ニューヨーク歴史協会では、長年にわたってLGBTQに焦点を当てた展覧会を開催してきたため、すでに多くの展示品や資料を保持している。ミラーは「服からバナー、さまざまな人物の証言まで、紹介できるものがさまざまそろっている。もちろん、ビリー・ジーン・キング(テニスプレーヤーで著名なHIV/エイズ活動家)についての資料もあります」と語っている。
近年、アートの世界ではクィアに焦点を当てた展覧会が増えてきたが、博物館についてはほとんどが小規模なものにとどまっている。American LGBTQ+ Museumのような施設の登場は、これまでのLGBTQ運動の重要な歴史を後世に伝えていく上で、必ず役立つといえる。
ニューヨーク歴史協会では、さらにLGBTコミュニティーについての教育を強化する必要性を認識している。例えば、ある意味で現代的課題といえる、HIV/エイズ問題についてもだ。ミラーは「HIV/エイズの展覧会に来てくれた若い人たちはその内容にとても驚いていたようだった。彼らは何も知らなかったのだ」と述べている。
同協会の今回の拡張工事では、ほかにも追加されるものがある。協会で博物学を学ぶ大学院生やニューヨークのさまざまな公立学校の生徒を受け入れるギャラリーや教室の新設は、その一つ。こうした取り組みは、ニューヨークの多くの市民とって恩恵となるはずだ。
American LGBTQ+ Museumのニューヨーク歴史協会への設立は、同協会と周辺のコミュニティーと長い話し合いの末、実現した。隣に立つの共同住宅の住人からの懸念を受けて、博物館は2つの建物が共有する境界地に向かって建物を全面的に縮小。代わりに庭園を作ることにしたという。これについてミラーは「建物の細部を見直すような意見もありました。共同住宅の住民にとっては、庭園が窓の外を眺める楽しみになることは間違いありません」と説明している。
American LGBTQ+ Museumプロジェクトの詳細は、このウェブサイトで見ることができる。
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