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ニューヨークのリンカーン・センターが中央広場に芝生公園を設置

10の屋外ステージでは多くのイベントを開催

Shaye Weaver
テキスト:
Shaye Weaver
Editor, Time Out New York
Lincoln Center The Green
Shaye Weaver/Time Out
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ニューヨークの総合芸術施設として知られるリンカーンセンターの中央広場に、芝生のスペースが出現した。「The Green」と呼ばれるこの場所は、2021年9月まで設置される「屋外パフォーミングパーク」。公園のように市民がくつろげる場であり、ライブパフォーマンスが開催される場所でもあるという。

The Greenはリンカーン・センターが進めている復興プロジェクト『Lincoln Center's Restart Stages』の目玉企画の一つ。平行して、センターのキャンパス(敷地)内には、10の屋外ステージ、公共図書館のキオスク、ミュージシャンのためのリハーサルエリアなどが設置され、イベントが多数行われる。

リンカーンセンター・フォー・ザ・パフォーミングアーツの社長兼最高経営責任者(CEO)であるヘンリー・ティムスは、The Green のプレビューで次のように述べた。

「私たちが本当にやろうとしているのは、ニューヨークにおける我々の役割を果たすことと同時に、自分たち自身を変革することです。つまり、私たちが行う仕事やその方法、誰にどのようにサービスを提供するかについて、これまでとは異なる考え方をすることです。そもそものきっかけは、スタブロス・ニアルコス財団とのパートナーシップと、彼らが考えていた『アゴラ』(市民的で文化的で刺激的な空間)というアイデアでした。アゴラを新しく、興味深い方法で再構築するにはどうしたらいいか、ということから始まったのです」

ティムスが言うように、『Lincoln Center's Restart Stages』は単にパフォーミングアーツの復興だけを目指すのではなく、献血や食料配給、市長選の予備選挙投票所設置といった、コミュニティーサービスも提供するという。

ホットなスポットとして間違いなく注目を浴びるであろう、この夏のリンカーンセンターの注目ポイントを紹介する。

The Green

Lincoln Center The Green
Photograph: Shaye Weaver/Time Out

レブソン噴水を中心とした約1300平方メートルのスペース。リサイクル可能で、アメリカの農家から調達した材料で作られているSYNLawn社製の芝生が敷き詰められている。その一部がカーブしているのが印象的だ。日光浴を楽しんだり、リラックスするのに十分な広さがあり、北東の角には、軽食や飲み物を買うことができるスタンドも登場する。


リンカーン・センターからの依頼でこのスペースのデザインしたのは、セットデザイナーでマッカーサー賞の受賞経験もあるミミ・リーン。SYNLawnの利用、スロープ、カーブはアクセシビリティを考慮して設計されており、目の不自由な人のためのつえの検知機能も実装されている。カーブした芝生のデザインは、メトロポリタン歌劇場のアーチからインスピレーションを得たという。

The Greenのデザインついてリーンは、「中央広場の物理的な空間を、より包括的で魅力的な環境に作り変えるにはどうしたらいいかと考えた時、すぐに思い付いたのは、硬い敷石の地面を芝生のような素材に変えれば、誰でもどこにでも座れるようになるだろうということでした」と説明。

これまでの中央広場は、さまざまな公演、もしくは噴水へ向かう人がただ歩くだけの場所だったが、これからは憩いの場になる。そのことについて、彼女は次のように思いを語った。

「私の夢は、ここを居住空間、喜びの空間、そして休息の空間にすることでした。芝生の斜面に寝そべって、午後はずっと本を読んでいられるような場所にしたかったのです。コーヒーを飲んで日向ぼっこをしたり、赤ちゃんを連れて芝生ではしゃぐこともできる。会社の同僚と一緒にピクニック気分で昼食をとるのもいいでしょう。このカーブした芝生の表面が、抱擁と広がりを同時に感じさせ、この広場が街の緑地のような社会的インフラ、つまり集まる場所や公共スペースとして、再構築されることを願っています」

『Lincoln Center's Restart Stages』の終了後、SYNLawn社は芝生をアップサイクルする予定だ。ニューヨーク州北部に作られる、危機的状況にある若者向けの家や遊び場に再利用されるという。

屋外ステージ

Lincoln Center The Green
Shaye Weaver/Time Out

センターのキャンパス全体で10の屋外ステージとリハーサルエリアが設けられる。そのうち一つは駐車場内、Jaffe Driveの地下。この洞窟のようなスペースは、Jazz at Lincoln Centerがジャズとコメディーの「クラブ」として活用する予定だ。

地上にはダムロッシュ・パークにメインステージがある。この場所ではこれまでもコンサートが行われてきたが、今年の夏は座席数を大幅に調整。通常キャパ約2000人のところを約380人にして、ソーシャルディスタンスを保つため、座席は2席ずつに分けられる。このメインステージは、ニューヨーク映画祭が上映会場として使うほか、ジュリアード音楽院が公演を実施。また地域の高校の卒業式も行われ、各団体が地域のイベントに利用する。10日のオープニングコンサートに登場するのは、ノーム・ルイスだ。

ハーストプラザにあるニューヨーク公共図書館の分館近くには、より親しみやすい小規模パフォーマンス向けステージが設置される。このステージで最初にパフォーマンスを披露するのは、マーサ・レッドボーン。アメリカ先住民であるラマポー・レナープの首長であるドウェイン・ペリーが、土地の祝福儀式を行った後に登場する。

また、建物の階段やハーストプラザの屋根の上では、ミュージシャンによる演奏も行われるという。

Lincoln Center The Green
Shaye Weaver/Time Out

図書館、リハーサルスペースなど

ニューヨーク公共図書館は中央広場の北側のテラスにキオスクと屋外図書館を設置。その近くにはミュージシャンのためのリハーサルスペースが設けられており、音楽を聞きながら読書が楽しめる。

また、室内で演奏されている音楽を屋外のスピーカーを流し、外を歩いている人やサンケンプラザの階段でくつろいでいる人に聞かせるというパフォーマンスも行われる。

こうしたことをまとめ上げた創造性には感銘を受ける。リンカーン・センターは今後もさらに想像力に富んだプログラムを提供してくれるに違いない。

リンカーン・センターのプログラム担当シニア・ディレクターであるジョルダナ・リーは、「この夏はいわば、屋内外問わず、私たちがやろうとしていることのための素晴らしい基盤となり、私たちの価値を示すことができる機会。コミュニティー、キャンパス、そして芸術を取り戻すために協力している全ての組織を巻き込んでいます。テストとして、想像力を働かせ、いろいろなことを試していきたいです」と述べている。

パフォーマンス

今年の夏と秋に予定されている公演には、リンカーン・センターでよく公演を開催している組織やコミュニティーパートナーとのコラボレーションにより、無料または低価格で見られるものもラインアップされる。例えばバイオリニストのジェニファー・コーが、作曲家でピアニストのコートニー・ブライアンと共にアジア・太平洋諸島系およびアフリカ系の経験を表現した『Our Time is Now」の初演、NEAジャズ・マスター・アワードの受賞経験があり10度グラミー賞に輝いているエディ・パルミエリのライブなどがある。無料チケットはTodayTix Lotteryで予約可能。最新の公演リストはlincolncenter.orgで確認できる。

また7月からは、アーティストのアンドレア・ミラーによる、彫刻とサウンドのインスタレーション『You Are Here』がスタート。彫刻を手がけるのはミミ・リーンで、彫刻に内蔵するスピーカーから流れる音を制作するのはサウンドアーティストのジャスティン・ヒックスだ。ヒックスは、リンカーンセンター関係者(アーティスト、案内係、警備員、教育者など)や一般のニューヨーカーたちが、語り、ダンス、歌、息、反響などから生み出した音を使い「聴覚の庭」を作り出す。

会期後半ではスピーカから流す音を、ライブパフォーマンスが生み出す音に置き換えるという試みも行われる。パフォーマンスにはGALLIMのダンサーが参加し、振り付けはアンドレア・ミラーが担当。最終日の夜にはパフォーマー全員が集まり、その場で一夜限りのライブパフォーマンスを行う予定だ。

原文はこちら

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