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Netflixの新シリーズ「BEEF/ビーフ ~逆上~」(全10話)の配信が、イースター(復活祭)に合わせてスタートした。
A24が制作したこのダークコメディーは、2人の運転手が危険運転をし合う場面から始まる。路上でのバトルを見過ごせないと考えている2人の間でエスカレートする確執や復讐(ふくしゅう)がドラマの中心。彼らが引き起こす出来事が、痛快かつ滑稽なタッチで描かれていく。
製作総指揮は、韓国出身のイ・サンジン。彼自身が道路で同じように受けた「激高」からインスピレーションを得て、この作品が作られたという。また、10話のうち3話を日本人監督のHikariが務めている。
怒りに支配されながら、自分の人生をゆっくりと歩んでいく物語は、マイケル・ダグラスの「フォールディング・ダウン」に通じるものがある。
このドラマについて知っておくべきことを、紹介しよう。
1.「ビーフ」が配信されたのはいつ?
2023年4月6日から、全10話が全世界で配信開始となった。各エピソードの長さは、30〜39分となっている。
2. 予告編はある?
もちろんだ。
3.「ビーフ」では何が起こる?
主人公は、裕福な植物デザイナーのエイミー・ラウ(アリ・ウォン)と、苦労人の便利屋であるダニー・チョウ(スティーヴン・ユァン)。それぞれ疲れを感じていた2人のアンジェリーナ(「ロサンゼルス人」の意)の車が、ホームセンターの駐車場で衝突しそうになる。
エイミーはメルセデス・ベンツのSUVのクラクションを鳴らし、ダニーに向かい中指を立てると、彼は怒ってピックアップトラックで彼女を追いかける。これは、その後に両人を苦しめることになる一連の出来事の始まりだ。
しがないが働き者のダニーは、「ブレイキング・バッド」のシーズン初めのジェシー・ピンクマンのようなエネルギーを持つが、限界に近づいている。韓国人の両親のために理想の家を建てるという夢は相変わらず遠のき、便利屋業は失敗。現金は底をついている。不公平感を募らせた彼には、失うものは何もない。ただ逆に、全てを持つ。
絵に描いたようなエイミーの人生は、億万長者の大物ジョーダン・フォースター(マリア・ベロ)による数百万ドルの事業買収によって、さらに充実したものになろうとしていた。その中で、猛烈に怒った復讐に燃える見知らぬ男の、予測不能で厄介な存在は、エイミーが最も必要としないものだった。
この後、不満や憂鬱(ゆううつ)が無制限の怒りに転化していく様が、コメディータッチで巧みに表現されていく。我々が目にするのは、雪だるま式に増えていく愉快で恐ろしい小さな惨事の数々。2人の人生が崩壊する前に、誰かがブレーキをかけるのだろうか?
4. 誰が出演しているのか?
ダニーとエイミーを演じるのは、「ミナリ」のスティーヴン・ユァンとスタンダップコメディー界のスーパースターとして知られるアリ・ウォンだ。
ユァンは「ウォーキング・デッド」のファンにはおなじみだろう。ウォンはNetflixのスタンドアップコメディースペシャル「アリ・ウォンのオメデタ人生?!」でブレーク。その後、2019年にNetflixで発表されたロマンティックコメディー「いつかはマイ・ベイビー」の共同脚本・主演も手がけている。
ダニーの弟で、生きる道を模索しているゲーム好きのポール・チョウを演じるのは、ヤング・マジーノ。アーティストでミュージシャンでもある俳優のデビッド・チョーは、兄弟のいとこであるアイザックにふんしている。彼はチョウ兄弟の両親のモーテルで起きた火災に巻き込まれて刑務所から出たばかりで、すぐにダニーを自分の最新の怪しい計画に誘い込む。
エイミーの夫、ジョージを演じるのはジョセフ・リー。彼はほとんど禅の境地に達しているような専業主夫で、セス・ローゲン風の花瓶も作っている。彼の母親であるフミ(パティ・ヤスタケ)はエイミーの悩みの種。おせっかいな義姉ナオミ(エミリー・イン・パリのアシュリー・パーク)も同様だ。
5. どんな音楽が使われている?
現代の設定でありながら、ドラマで聞こえてくる音は、明確に1990年代や90年代初頭の雰囲気を漂わせている。前半のエピソードで選曲されたのは、フーバスタンクの「The Reason」、スマッシング・パンプキンズの「Today」、ブッシュの「Machinehead」、システム・オブ・ア・ダウンの「Lonely Day」など。
偶然にも「イエロージャケッツ」のシーズン2でも大きく取り上げられているトーリ・エイモスの「Cornflake Girl」や、2004年に発表されたキーンによるソフトボーイ(物腰の柔らい男性)たちのアンセムとなっている「Somewhere Only We Know」も使われている。
なぜ「ウッドストック 1999」世代の応援歌のような曲が選ばれたのだろうか。サンジンが次のように説明している。
「ノスタルジックな要素があるんです。登場人物たちが自分のやり方に固執し、過去のものにしがみついて前に進めないからこそ、久しぶりに聴く古い曲を使うのがふさわしいと思ったんです」
「私がこの番組の開発を始めた頃は、まだ90年代の流行が戻っていなかったので、当時は90年代のグランジオルタナティブの曲だけを使うというのは斬新なアイデアではないかと」と、ソンジンは冗談めかして語り、こう続けた。
「そのアイデアを提案した時、みんなは 『そんなのおかしい!』と言っていました。そして3年たった今、ほとんどドラマから派生したもののように感じられます」
6. タイトルバックのアートは誰のもの?
各エピソードのタイトルバックで使われている、クールでありながら威圧的なアートワークは、ダニーの前科者のいとこ・アイザックを演じているチョーの作品だ。ただ、第1話は例外。ルネサンス期の画家ピーテル・アールツェンの「施しをする聖家族と肉の屋台」で始まる。文字通りのビーフ(牛肉)やほかの肉を視覚的に表現したものだ。
各エピソードのタイトルは、ヴェルナー・ヘルツォーク(「鳥は歌わず、痛みにうめく」)、シモーヌ・ド・ボーヴォワール(「最初に選んだ物語」)、フランツ・カフカ(「私は鳥かご」)など、著名人の著作や作品タイトルからインスピレーションを受けているという。
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