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東京パラリンピック、6つの心温まる瞬間

アフガニスタン選手の奇跡的な参加、ゴール前でのプロポーズ、スポーツ史上最大の人権活動など

Emma Steen
テキスト:
Emma Steen
Former writer, Time Out Tokyo
Tokyo Paralymypics
Photo: Marcus Brandt/Getty Images Ibrahim Hamadtou of Egypt plays against Korea's Hong Kyu Park in the Class 6, Group E men's table tennis
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『東京オリンピック・パラリンピック』は、ある種の「落胆」から始まった。新型コロナウイルスが流行する中、スポーツイベントを推進することは、本来ならば興奮と祝福に満ちた機会を無駄にしてしまうのではないかと感じられたからだ。しかし、大会が盛り上がるにつれ、恐怖と不安の時代に力強い光を放つことが証明されたと言えるだろう。

ここでは、東京パラリンピックの6つの印象深いハイライトを紹介する。

#WeThe15キャンペーン

東京パラリンピックに向けてスタートした「#WeThe15」は、世界人口の15%いるといわれる障がい者への差別をなくすことを目的とした運動だ。スポーツ史上最大の人権キャンペーンと称されるこの運動は、障がい者の声を発信し、社会で活躍することを困難にしている障壁を取り除くことを目的としている。

#WeThe15が制作したプロモーションビデオでは、パラリンピックを盛り上げるだけでなく、障がいがあれば自動的に特別になれるという誤解が広まっていることを指摘。また、パラリンピック選手がヒーローになれるのは障がいの有無ではなく、規律と粘り強さであるという事実を強調するためにも、必要なメッセージだった。

Paralympics
Photo: Naomi BakerMiyuki Yamada of Team Japan celebrates winning silver in the Women's 100m Backstroke Final - S2

最年長と最年少のパラリンピック王者

本大会では、日本史上最年少最年長のチャンピオンが誕生した。14歳の山田美幸は、女子100メートル背泳ぎ(運動機能障害S2)で銀メダルを獲得し、パラリンピック最年少メダリストとなった。そして、パラ自転車競技に出場した杉浦佳子は、2つの金メダルを獲得し、50歳でパラリンピック最高齢記録を更新。

彼女はNHKのインタビューに「最年少記録は二度と作れないけど、最年長記録ってまた作れますね」と答え、感動とやる気を人々に与えた。成功には年齢は関係ないということを思い出させてくれる言葉だ。

2020 Tokyo Paralympics closing ceremony
Photo: Alex Pantling/Getty Images

アフガニスタン選手の参加

開会式では、アフガニスタンの首都がタリバンに占拠されたことで参加できなかった選手の代わりに、ボランティアがアフガニスタンの国旗を持っていた。

パラリンピック当局は、選手のザキア・クダダディ(Zakia Khudadadi)とホセイン・ラスーリ(Hossain Rasouli)がカブールから避難できたが、大会には出場しないことを発表する。しかし、両選手は東京に無事到着し、クダダディはテコンドー女子の試合に出場。陸上競技選手のラスーリは、自分の種目の予選と決勝を逃したが、男子走り幅跳び決勝のT47クラスに出場した

閉会式では、選手たちがアフガンの国旗を持って登場し、この物語を締めくくった。

2つのチーム、1つのゴール

オーストラリアのパラサイクリスト、スチュアート・ジョーンズ(Stuart Jones)は、ロードレース男子決勝で最後の1周を終えたとき、後ろから南アフリカのトニ・モールド(Toni Mould)が迫ってくるのに気付く。モールドは女子ロードレース決勝で1周遅れており、土砂降りの雨の中、レースを続けるために戦っていた。

ジョーンズは、まったく別のチームで違う競技に出場していたにもかかわらず、スピードを調整してモルトの横に並び、彼女を応援。この行動は、金メダル獲得と同じくらい素晴らしいものだった。

パラリンピックでのプロポーズ

視覚障がい者のマラソン競技には、複雑な要素がある。選手にはガイドとなる伴走者が付き、伴走者は選手のペースに合わせてコースを誘導。選手と息が合うようになるまで何年もかかるといわれており、競技者のペアが親密な関係になるのは自然なことだ。

西アフリカの島国、カボベルデから出場したケウラニドレイア・ペレイラセメド(Keula Nidreia Pereira Semedo)と彼女の伴走者、マヌエルアントニオ・ヴァスダヴェイガ(Manuel Antonio Vaz da Veiga)は、陸上女子200メートル(視覚障害T11)の予選でゴールした直後、ヴェイガが片膝をついてプロポーズをし、パラリンピックの人気デュオになった。彼女はもちろん「イエス」と答えている。

イブラヒム・ハマドゥーのユニークな卓球スタイル

エジプトのイブラヒム・ハマドゥー(Ibrahim Hamadtou)は、幼少期に卓球とサッカーの2つのスポーツをしていた。10歳の時に列車事故で両腕を失ったハマドゥー。彼は友人と卓球の腕前を巡ってけんかをしたことをきっかけに、卓球を極めようと思うようになった。

数十年後、2児の父となった48歳のハマドゥーは、東京パラリンピックの卓球競技で準々決勝に進出。惜しくも準決勝には進めなかったが、パドルを口にくわえて試合をする見事なテクニックは誰にも負けていなかった。

パラリンピックの情報は『東京オリンピック・パラリンピックガイド』でチェックしよう。

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