みんなジャンルに寄りかかって音楽聴いているんだ
—TOYOMUさんは、今年26歳ですか。
TOYOMU:はい。1990年生まれです。Tofubeatsが同い年、Seihoさんが少し上です。
—ヒップホップだとFla$hbackSとかKANDYTOWNとかも同世代になりますね。
—元々、かなりヒップホップがルーツだと。
TOYOMU:そうですね。DJはUSBを使って遊びでやっている程度でしたが。
—1990年生まれ前後の世代の音楽ファンって、必ずヒップホップは通っているじゃないですか。ひとつ前の世代だと、もうちょっと、悪めの人たちのものって感じで、誰もが通るものではなかったんですが。
TOYOMU:それは、ヒップホップの人たちが頑張ったからだと思いますよ。SUMMITとか。僕自身のヒップホップの目覚めはリップスライムです。そこから、大学まで洋楽のヒップホップは聴いてなかったんですよ。
—なるほど。インタビュー前に、ジェフ・ミルズはあまり聴いてこなかったとおっしゃっていましたが、クラブに通っていた時期はありました?
TOYOMU:ありましたよ。京都の、METROとか、WHOOPEE'Sとか。ヒップホップ系ばかりを聴いていたんですけど、友達が出ているパーティーに行って、アンダーグラウンドなテクノとかを知りましたね。
—ヒップホップ以外の音楽は、クラブで知ったと。
TOYOMU:そう。なんだこれ?って、思って、テクノと出会ったりしてました。
—結構、世間的にはTOYOMUさんの音楽はヴェイパーウェイブ系とかインターネット系の音楽として解釈されている向きもありますが。
TOYOMU:僕自身は全然そういうジャンルの音楽は聴いてなかったんですよ。まわりに言われて、なるほどそういう聴き方もできるのかって。変なサンプリングのヒップホップとして作ったつもりなんですけど。たとえば、QuasimotoっていうMadlibの変名プロジェクトがあるんですけど、そういう感じを目指したんですけど。Quasimotoらへんの音楽って、『SP-303』っていうシークエンス機能が極端に乏しい機材を使って作っているから、譜割りがすごく自由で。だから、四つ打ちの音楽には行かなかった。とりあえず、意識的にヴェイパーウェイブなことをやろうと思ったことは一度もないんです。
—そうカテゴライズされた原因には、エレクトロニックな音楽だけれどダンサブルじゃない音楽に対するボキャブラリーが、現在は乏しいからということがあるかもしれないですね。
TOYOMU:それはすごく思っていることで、僕はジャンルで音楽を作りたくないんですよ。ハウスを作ろうとか、テクノを作ろうとか。ヴェイパーウェイブですらヴェイパーウェイブを作る、という型があるじゃないですか。なんか、みんなジャンルに寄りかかって音楽聴いているんだって、思いましたよ。
—分からないものが出てくると、どうしても誰か教えてくれよ、と。
TOYOMU:分からない方が面白いのに。そこはみんな不安になるんですよね。だから、僕はこれはどんな音楽、ってあまり言いたくない。メロディーが良ければ、どんな音楽だって良いわけですし。
—新作の『ZEKKEI』では、トラックのそれぞれの素材を一度カセットテープに録音して、またPCに戻すという工程を挟んでいるとのことですが。
TOYOMU:テープを通す理由は音質もありますけれど、テープに入れた素材って、PCに戻すと尺がそれぞれ微妙に違ってるんですよ。テープが伸縮するせいで。だから、ぴったりシンクロしていたトラックが、それぞれ微妙にずれる。それが面白いというか。
—『Ableton』(音楽制作ソフト)というシークエンシャルなソフトの縛りから逸脱したいからというのもあるんじゃないですか。
TOYOMU:だから、最近はもう『Ableton』じゃなくて、ハード機材を揃えようかなと思ってきて。この前観たGold Pandaのライブがもうめちゃくちゃに良くって。彼はMPCを2台使っているんですけど、まさかのアンコールが起きちゃったので、「今ロードするから待って」って(笑)。彼は、ハウスとか何かジャンルを押さえにいって作っている感じじゃないんですよ。近い感覚だと、Teebs。彼らは絵を描いている感じなんですよ。それはピカソを描きましょう、桜を描きましょう、ではなくて、ただフリーに描いている。だから、(モデルを探すために音楽を聴いたりしないから)有名な人しか聴いてなくて。リアーナとか、カニエ・ウエストだとか、M.I.Aとか。