Tokyo Beats & Brews #5
Photo: Daiki Hosomizo
Photo: Daiki Hosomizo

一筋縄ではいかない奴らが一夜限りのトリオ結成、Tokyo Beats & Brews #5 レポート

第5回目のゲストはギターの小金丸慧、酒は東京最古の酒蔵・豊島屋酒造が参戦

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ようやく秋めいた日が続き始めた今日この頃。現在進行形のジャズと酒にスポットを当てたイベント「Tokyo Beats & Brews」の第5回目が2024年10月17日、恵比寿「タイムアウトカフェ&ダイナー」で開催された。今回は、ギタートリオ編成の演奏でロック寄りなサウンド。これに日本酒が絶妙なペアリングとなった。

レジデントミュージシャンは「THE FIRST TAKE」で長谷川白紙のバンドセットに参加したことが話題となったドラムス・秋元修、フランスの雑誌「Bassiste Magazine」でインフルエンサーのトップ15に選ばれたベーシスト・Yuki Atori。両者ともに、菊地成孔の最終バンド・ラディカルな意志のスタイルズに参加する若手である。

前回はサックスやエレクトロニクスなどを駆使する大谷能生をゲストとして迎え、轟音(ごうおん)のフリージャズが奏でられたが、今回フィーチャーされたのは同年代のギタリスト・小金丸慧だ。

小金丸と秋元は高校時代からの付き合いで、メタルバンド・Mysterious Priestessとして一緒に演奏してきた仲だが、関係値がどのように演奏に出るのか。また普段はAtoriの足元だけに置かれるエフェクターの数が、単純計算で2倍設置されており、視覚的にも開演前からワクワクさせられた。

Tokyo Beats & Brews #5
Photo: Daiki Hosomizo小金丸慧

霧のような音像が立ち込める即興演奏

1stセットは、秋元がたたいたビートに、Atoriがチャーリー・パーカー(Charles Parker)の「Donna Lee」のテーマを乗せてスタート。センターに鎮座するゲスト・小金丸は、途中からソロリレーで弾き始めた。直球なジャズというよりも、エフェクターを交えた音色とギターらしいフレーズでアプローチするような印象だ。

続いて演奏はアブストラクトな質感へ。前回も即興演奏が主体のステージだったが、それとはまた違う、空間系の霧のような音像が現場に満たされる。

そこに突然の高速4ビートが投下されるなど、サウンドは変化。最終的に7拍子の楽曲「The Law」のロックなビートになった。DC/PRGで参照されたこともある理論「M-BASE」を提唱したサックス奏者のスティーブ・コールマン(Steve Coleman)の楽曲だが、「菊地成孔イズム」を感じさせる選曲だった。力強いグルーブの中、小金丸のきっかけでフィニッシュする。

Tokyo Beats & Brews #5
Photo: Daiki Hosomizo

リピーター続出、東京最古の酒蔵による利き酒

ステージのインターバルに楽しめるのが「Tokyo Beats & Brews」の「BREWサイド」。今回用意された酒は、1596年創業の東村山が誇る酒蔵「豊島屋酒造」が参戦した。武蔵野台地の地下150メートルからくみ上げた地下水を仕込み水として使用し、香り高く豊かな味わいの日本酒を、手作業で丁寧に造っている。

提供されたのは、「屋守 純米吟醸 無調整 雄町 火入」「特別純米無濾過生原酒きたしずく」「金婚 山廃純米 無濾過生原酒/9号酵母仕込」の3種が一度に楽しめる利き酒セット。特別純米無濾過生原酒 きたしずくは、豊島屋酒造が開催する酒蔵イベント「豊島屋フェスタ2024」で販売された限定酒である。爽やかな香りと酸味、ドライで軽快な飲み口が癖になる一本だ。

「屋守 純米吟醸」は、幻の酒米で有名な岡山県の「雄町」を使ったもの。ほのかに甘く華やかで上品な香りと程よいコク、みずみずしく透明感のある味わいが心地よい。「金婚 山廃純米」は濾過(ろか)していない生原酒のため、生まれたままの味わいが楽しめるのが特徴的だ。メロンのような爽やかな香りの中に、わずかに山廃(やまはい)らしいヨーグルト調の香りが感じられる。今回「飲みやすい」と多くの人から反響があった商品である。

出演アーティストをはじめ、お代わり注文も多く、多くの客にとって新しい美味との発見の場になったようだ。

Tokyo Beats & Brews #5
Photo: Daiki Hosomizo秋元修

2ndセットは既存曲を遊び心に満ちたアレンジで

トランペット奏者のケニー・ホイーラー(Kenny Wheeler)が作曲した「Kind Folk」で2ndセットの幕が開く。シンプルなベースライン上で大きく美しいメロディーを紡ぐ小金丸、細かくリズムをシュレッドする秋元という対比が鮮やかだった。

本企画では初演奏となった秋元のオリジナル曲「キヨーレオピンオーヴァドライヴ」では、リバースディレイの音がループする抽象的な場面があってから、小金丸の歌うようなメロディーがだんだんと手数を増してプレイがメタルに近接。それに引っ張られて、後ろで支えるベースとドラムの音量も上がっていく。

Tokyo Beats & Brews #5
Photo: Daiki HosomizoYuki Atori

シンプルなビートの中に変わったキメが現れるループが繰り返される曲を挟んで、最後は小金丸が発案したジェフ・ベック(Jeff Beck)​​​​の「Led Boots」で締め。ギターセッションでは定番曲だという。有名なリフを封印し、途中のメロディーに奇数連符を入れる遊び心が彼ららしい。

小金丸は立ち上がり、ディストーションをきかせてメロディーを弾きつつ、ソロ部分はオクターブ奏法で緻密にビートをかいくぐってからチョーキングに持っていく。最後にギターヒーローぶりを見せつけた。

堅くグルーヴを保ってから饒舌に独奏する二重人格を思わせるAtori、豊島屋酒造の「きたしずく」をキメた秋元の奔放なプレイも、最後まで堪能する。ビシッと全員がユニゾンしてエンディングへ。オーディエンスからも大きな拍手が送られた。

Tokyo Beats & Brews #5
Photo: Daiki Hosomizo

演奏後、小金丸は「一筋縄ではいかない奴らでしたね(笑)。恵比寿リキッドルーム(LIQUIDROOM)の上でこんな熱いセッションが繰り広げられているとは思いませんでした」とコメント。秋元は「同期なので音楽的な共通言語が多かった」、Atoriは「ビーバップでもコンテンポラリーでもない印象で、『Kind Folk』の曲調が合うと思いました」とゲストとのステージを振り返った。

2023年11月から始まった「Tokyo Beats & Brews」は早いもので次回で1周年。この記念すべき回は、どんなゲストと内容で彩られるのか。情報解禁に期待してほしい。

セットリスト

<1st>
01. Donna Lee (Charles Parker)
02. 即興
03. The Law(Steve Coleman)

<2nd>
01. Kind Folk(Kenny Wheeler)
02. キヨーレオピンオーヴァドライヴ(秋元修)
03. 曲名非公表
04. Led Boots(Jeff Beck)

Tokyo Beats & Brewsとは

  • ナイトライフ

Tokyo Beats & Brews」では一つのイベントという枠を超え、東京のジャズ・音楽・バーカルチャーを色濃く感じられるヴェニューを紹介している。ぜひチェックしてほしい。

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