インタビュー:カール・ハイド(アンダーワールド)

会心の新作と、ジョン・ピール、メルト・バナナ、明治神宮

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テキスト:三木邦洋
通訳:BEATINK
 

「何かイマ風に翻訳しないと通じないようだ。そんなところにも、僕は断絶を感じてしまう」 と細野晴臣が語ったのが2000年代初頭。そうした時代の傾向は今や行き着くところまで行き着き、「イマ風に翻訳」=アップデートすること、それを追いかけ、躍起になることに、アーティストもリスナーも疲弊してきたような、そんな空気を最近では感じることが増えたように思う。

アンダーワールドの7枚目、6年ぶりの新作『Barbara,Barbara,We Face A Shining Future』は、なるほどこうきたか、などと余計なことを考える前に、何かを感じ、耳に、体に音が馴染んでいく。アンダーワールドは、もちろん『Born Slippy』をはじめとする数々のアンセム曲を世に放ったダンスアクトの最高峰として認知されているが、アンセムを連発することでキャリアを保つことに彼ら、カール・ハイドとリック・スミスの本性はない。本インタビューにおけるカール・ハイドの言葉から伝わってきたのは、彼がいかに時代よりも足下を見つめることを大切にする人間であるか、ということだった。おそらくはそれこそが、彼らが、ダンスミュージックという目まぐるしい新陳代謝を持つシーンで、30年間にわたってフレッシュな存在であり続けている理由なのだろう。

なお、『サマーソニック 2016』のヘッドライナーとしての来日公演が決定しているアンダーワールドだが、2016年3月12日(土)からパルコミュージアムで行われる『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION "O"』の期間中にも来日し、渋谷某所で限定ライブを行うことも決定している。

成熟っていうのはアーティストとして進むべき方向とは正反対

僕のドラッグはリズムで、キックドラムが僕の売人だ

ードラッグの香りを感じない、そもそもそうした土壌から生まれていないダンスミュージックというのが、メジャー、アンダーグラウンドを問わず新しい主流としてあると思うのですが、アンダーワールドの新作アルバムからは、そうした音楽とのリンクも感じられました。

カール・ハイド:なるほど、それは興味深い意見だな。うん、面白い。そういう、若い世代の作る音楽という要素は含まれている作品だと思うし、そう言ってもらえるのは非常に嬉しいね。というのも、僕たち自身、自分たちの音楽をドラッグの香りがするもの、そうしたシーンと関連があるもの、という風に捉えたことこれまで一度もなかったからさ。これはしばらく前の話になるけど、僕が考え出したフレーズに「僕の選ぶドラッグ、それはリズムだ」というのがあってね。で、「キックドラムが僕の売人だ」と。

ーなるほど(笑)。

カール:だけど、それって真実なんだよ!本当に、正直なところでそうなんだ。たとえば、僕らは朝の2時、3時にステージに上がることもある。で、そんな時間帯の自分は疲れきっているし、もうクタクタという感じだし、頭の中でも「無理だ、これからステージに上がってパフォーマンスなんて、自分にはできっこない……」と考えているわけ。

ところがこれが、1発目のキックドラムが鳴り響いた瞬間を耳にした、その途端に、突如として全身にアドレナリンが充満するんだよね。自分の内側にエネルギーも感じるし、身体の中に光も感じる。だけど、そのエネルギーが一体どこから出てくるのかは、我ながら見当がつかないんだよね。僕のドラッグはこれまでも、そしてこれからも常に音楽なんだってこと。本当にそうだよ。自分の抱えていたアルコール中毒の問題はずいぶん前に克服したし。アルコールは、僕にとっての真のドラッグである音楽に自分がコミットする、その妨げになってしまうんだ。

というわけで、僕を気持ちよくしてくれるものは何かと言えば、それは音楽なんだよ。音楽は何かを感じさせてくれるし、自分自身のエモーションと僕とをコネクトさせてくれるのも音楽だ。だから、ドラッグの香りがしない、ドラッグカルチャーとは関係のない音楽に僕たちの音楽をなぞらえてもらえるのは、僕たちからすれば「うん、正しい!」と思えるよね。ってのもほんと、自分たちをその手のカルチャーの持つメンタリティと関連づけて考えたことは一切なかったから(笑)。だから僕たちは、単純に音楽を聴くって行為を通じて超越的な経験を得ている、そういう人間なんだよ。

『トレインスポッティング』は「反ドラッグ」映画

ーなるほど。なぜいきなりドラッグの話を持ち出したかというと、映画『トレインスポッティング』の新作が作られるという話題からなんですが。

カール:フム。そうした意見の興味深いところっていうのは……あの映画がどれだけ誤解されているかという点。いかに「『トレインスポッティング』はドラッグ礼賛映画だ」と勘違いされているか、という点なんだよね。考えてもごらんよ?あれは要は「反ドラッグ」映画なんだ。あの映画のポイントは「ドラッグ反対」にある。で、僕たちの友人連中があの原作、アーヴィン・ウェルシュの書いた本を読んだころ、誰もが話題にしていたのは登場人物たちが耽るドラッグ行為の数々、あるいはあの本に宿っている享楽/快楽主義についての話ばかりだったんだよ。

そんなわけで、僕とリック・スミスはあの本を「これは避けておくべきだ」みたいに考えていたし、要するに、「自分たちは興味無し」と判断していたっていう。だからダニー・ボイルに映画化作品に参加してくれと請われた際も、僕たちの最初の返事は「ノー」だったんだよ。っていうのも、僕たちはドラッグ摂取行為を美化し賛美するような、そういう作品と関わりを持つのはごめんだったからね。

ところが彼に映画のシーンをいくつか見せられて、そこで我々も気づいたんだよ、「何てこった!これはドラッグの美化でも何でもないぞ」と(苦笑)。むしろ強烈にドラッグ行為を薄汚く、実に汚らわしいものとして見せているよね。というわけで、僕たちも「これなら喜んで作品に参加するよ!」という姿勢に変わったんだ。とどのつまり、ドラッグをやるのって乱雑で、かつ非常に汚らしい結果を迎えることになるわけじゃない?だから、あの映画の有名なドラッグの場面にしても、あれは極端なところまで引っ張った描写とはいえ、要はああなってしまったら「ドン詰まり」ってことだからね。

ーなるほど。しかし若者はドラッグカルチャーについてのああいった描写に感化されてしまうものです。でも、『トレインスポッティング』はそうではなく、アンチドラッグの映画だ、と。

カール:ああ、それは確かにそうだけど、若者がドラッグを賛美するっていうのは、昔も今も変わらずにある風潮なんじゃないかな。たとえばかつてのニューヨークの抽象表現派のアーティストたちなんかにしても、シーダー・タヴァーン(The Cedar Tavern。1950年代に抽象表現派の画家たちが愛用したバーとしても知られる)に集まってはぐでんぐでんに酔っぱらって、喧嘩沙汰を起こしたりしていたわけじゃない?で、そういう記述を読むと「……ワオ、最高だな!かつての偉大な画家たちが酔っぱらって殴り合いかぁ!」なんて考えもするわけだけど、実際のとこ、そんなのお粗末な、悲惨な話だよ、というね。

薬物乱用の行為に美しいところなんてこれっぽっちもないんだって!むしろ、実に醜い光景だよ。まあ、今だからこそ自分にもそういう面が見通せるようになったけど、若いころはやっぱり、「わー、クールだな、かっこいい」って思ったものだけどね。ただ、薬物乱用者のリアリティというのはー僕自身がアルコールに依存していた時期を通じて体験したリアリティなんだけど―とにかく、非常に醜いものだし、とても孤独で絶望的な状況なんだよ。だから、そこにロマンなんか一切存在しないんだ、と(苦笑)。

ー肝に銘じます。

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クラフトワークの化学的な響き

ー今作はすごくナチュラルな自由奔放さに満ちた作品であると感じました。あなたたちはもともと、フロアを意識した曲作りというよりももっと自由で、クリエイティビティをなにより優先するグループですよね。

カール:これまでのほかのアルバムと比べて、この作品の楽曲にはより自由さがある、という意味で言えば、うん、イエス。そうだと思うね。このレコードについて言えば、「直感的な自由さ」みたいなものがあるし。これまでアンダーワールドが作ってきたどのアルバムと比べても、そうした要素を多く含む作品だろうね。

ー個人的な感想としては、アンビエントやニューエージと呼ばれた音楽がここ数年で、本来の非センセーショナルなあり方を取り戻したように、あなたたちの音楽もコアなエッセンスに改めて光を当て、自然さを得たような気がします。

カール:それは僕たちも潜在意識の中で考えていたんだろうね。だから、おそらく僕たち自身、自分たちがそもそもエレクトロニックミュージックに興味を抱かされたそのきっかけ、ルーツみたいなものに無意識のうちに近づいていた、というか。

たとえばそれは、60年代末~70年代初期のドイツのグループたち、クラフトワークやノイ!、そしてラ・デユッセルドルフといった面々のことだけれど、彼らは本当に革新的な先駆者だった。すごく新しくてフレッシュなサウンドを作っていたわけだけど、同時にそれは非常に化学的な響きでもあって。だから、彼らの使っているマシーンにはどこかしらヒューマニティに分子レベルで訴えるところがあるな、と。まあ、口で説明するのは難しいんだけども、彼らの音楽を初めて聴いた時、ほかのどんな音楽よりも深い結びつきを感じたんだ。

僕はギターが大好きだし、7歳の頃から弾いてきた。ギターをプレイするのが本当に好きだし、ブルースも大好きなんだよ。ただ、ああいったドイツの初期のエレクトロニックミュージックには、なにか僕の深い部分に触れるものがあるっていう。で、この新しいレコードを作ることになった動機もそこにある。リックは自分で組み立て始めた大きなモジュラーシンセサイザーを使ってすべてのサウンドを作っていたんだよ。そのことが部分的に、この作品にエレクトロニックミュージックのルーツ的な姿との非常にダイレクトな結びつきを生む作用をもたらしたんじゃないかな。

一度ピークを迎えたら、次のフェーズへ移行していくしかない

ーツアーをしていて、またはほかのアーティストの作品を聴いていて、クラブカルチャーやダンスミュージックが担っている役割についての変化は感じますか。

カール:ああ、それは確実に感じる。っていうか、大きな変化が起きたのはずいぶん前の話なんだよ。80年代後半~90年代初期頃のクラブカルチャー/ダンスミュージックというのは革命的だった。メインストリームなカルチャーの外側に立つアウトサイダーだった、という意味でね。

既存の音楽産業の一部に組み込まれてもいなかったし、音楽産業からの束縛に対する反発の動きでもあったわけで、だからこそカルチャーにオルタナティブを提供することができた。あの頃のダンスミュージックは、かつてパンクが提案したものの、実際にはもたらすことのできなかった、そういうオルタナティブを提供したんだよ。だから、僕たちにとってそれはごく自然な居場所でもあってね。というのも、僕たちはほんと、常にアウトサイダーだったわけだし。

ーそうなんですか(笑)。

カール:80年代に音楽ビジネスの中に入り込もうとしてみたこともあったけど、僕たちはあんまりそういうのが得手な人間ではなかったんだ(苦笑)。そういう僕たちからすれば、うん、(シーンは)変化したね。しばらくの間はとてもファンタスティックな状況が起きていたし、海賊ラジオ局に違法のレイヴ……どれも本当に素晴らしかったんだよ。

人々が自宅のベッドルームでオリジナルの音楽を作り出し、それをDJショップに持ち込んで売っていたり。だからあれは、ほかからまったく切り離された別個のカルチャーを生み出していたんだよね。

ところが、当然のごとくお金が関わってくるようになって、そこで状況が変化してしまった。90年代半ばのどこかで、ダンスミュージックは一気に「新たなメインストリーム」になってしまったんだよ。で、その時期から現在に至るまで、その状況はある意味変わっていない。もちろん、アンダーグラウンドなダンスミュージックのシーンは現在もポツポツと点在している。ただ、それらはいまだにかつてのような「独立したカルチャー」までには成長していない。で、そうなることはもはやあり得ないんじゃないか?僕はそう思っていてね。というのも、エレクトロニックミュージックはいまや「ビッグビジネス」としてすっかり受け入れられているから。

ーそうした状況も含め、ある意味成熟期に達しているとも言えませんか。

カール:そうだなあ……まあ、これからも続くだろう、そこは間違いないけどね。だから、ダンスミュージックが消えるってことはまずないんだよ。進化するだろうし、移行し続けてもいくだろうね。たとえば、しばらく前にSuperclubs(Ministry of Sound、Fabricなどの、いわゆる「大バコクラブ」人気のこと)のブームなんてのがあったけれど、ああしたクラブも廃れてしまったわけで。

で、あの時期には色んな人が「ああ、これでダンスミュージックもおしまいだ」なんて考えたわけだけど、そんなことはないし、形を変えて進化したに過ぎないんだよ。何かがいったんビッグになってしまったら、やっぱりその規模はある程度の期間しか継続しないものでね。一度ピークを迎えたら、それは次なるフェーズへ移行していくしかないし、そうすることで自らを再発見していく、新たなフォルムを見つけ出していくことになる、と。

たとえば今のアメリカではEDM人気がものすごいし、ダンスミュージックはあちらで素晴らしい時期を満喫している。で、それはワンダフルな状況だな!と。アメリカがエレクトロニックダンスミュージックを発見し、しかもあんなにすごい規模で受け入れてくれたのは最高だと、僕は思っている。ただし、それだっていつかは過ぎ去ってしまうんだよ。EDM人気もいずれ終わりを迎え、ほかの何かに取って代わられてしまう。というのも、どんなブームも永遠に持続できるはずがないし、EDM世代だっていずれ成長していく。そうなると彼らもほかに色々とやるようになり、若い頃のようにパーティ三昧ってわけにいかなくなる。だから、オーディエンス層そのものが変化してしまい、いずれいなくなってしまうんだよね。シーンそのものも縮小するし、維持すること自体が無理、ということになってくる。そうなったところで、そのポジションに取って代わる何かが登場してくるものなんだよ。

だけど、「成熟」かあ。「成熟」ってのは、おかしな言葉だよね(笑)。ってのも、アーティストとしての僕たちは、というかアーティストの多くというのは、「(クリエイティヴィティのために)子供っぽいままでいたい」と願っているわけだからね。

ーなるほど。

カール:だからある意味、「成熟する」っていうのは、アーティストとしての我々が進むべき方向とは正反対だろう、と。

ー「みんな子供のままでいるべきだ」、と(笑)。

カール:(笑)まあ、その弊害も多いだろうけど!

自分にもメルト・バナナみたいな情熱が備わっていたらいいのに!

ジョン・ピールにオープンマインドを教わった

ー夏には『サマーソニック』での来日がありますね。日本のアンダーワールドファンは、本当に色々なジャンルのリスナーたちなんです。テクノやハウスを聴かない人も、アンダーワールドは好き、ということも当たり前です。それって、なぜだと思いますか?

カール:まあ、僕たちはその意味で本当にラッキーだよね。そういう風に色んなジャンルのリスナーが聴いてくれるなんて、本当に素晴らしいことじゃない?いまだに自分でも「これって本当?夢じゃないの?」って頬をつねることがあるくらいだよ。というのも、音楽、そしてアート好きな人間として、僕とリックはどちらも非常に折衷的で多彩な趣味の持ち主なんだよね。で、その面は僕たちの作るレコードに常に反映されてきた。

たとえば『Dubnobass』というアルバムにしても、当時としてはインディミュージック、ギターミュージック好きな人々と、アシッドハウスやトランスミュージックのファンたちとの間の重要なクロスオーバーだったわけだよね?だから、僕たちのレコードを聴いてそれぞれに「これは俺たちのものだ」と感じて受け入れてくれた。異なる2つのトライブがひとつの場所に集まる光景を、自分たちは活動初期に目撃したんだよ。

で、彼らはそこからまた、ひとつの新たなトライブを結成したわけ。彼らはとてもオープンマインドで折衷的なテイストを持つ連中だったし。ファンたちに「自分らしさを保つこと」を応援してもらえているんだよね。それって実にファンタスティックなことだよ!思うに、大概のアーティストというのはひとつのジャンルに留まっているものなんじゃないかな。そんな立場になるのは僕はごめんだし、昔も今もファンのテイストが多種多様なままというのは、本当に自分たちは運がいいな、と。

通訳:と同時に、あなたたちのファンもまた、あなたたちの音楽に含まれる多彩な要素を通じての新たな出会い、目を開かされるのを楽しみにしているんでしょうね。たとえば、新作で言えば南米のクアトロ音楽だったり。

カール:確かにね。僕からすればそれって、BBCのDJだった故ジョン・ピールがやっていたようなことなんだ。僕は彼の番組を聴きながら育った人間だし、あの番組の「ジャンルを問わずにオープンマインドで様々な音楽をオンエアし紹介しよう」のメンタリティに慣れ親しんで育った。

彼の番組を聴いていると、自分のお気に入りの音楽に続いて、逆に大嫌いな類いの音楽がかかったりするんだよ。で、耳にしてからしばらくは「あんな音楽最低だ!」なんて考えているんだけど、結局2週間後くらいにはそのレコードを買っている自分がいた、みたいな。それまで知らなかった何かに気づかされ、物事の見方を変えさせられたわけだよね。要するに、ジョン・ピールに教えられた通りに振る舞っているんだよ、僕たちは(笑)。そのおかげで、初めて体験するアートに対してもオープンに接することができるんだ。

ーなるほど。

カール:今の僕はリックと仕事することにエキサイトしているし、「次に何が起きるだろう?」と興奮しているんだよね。たとえば、面白い話があって……まあ、これは現時点ではまだ誰も知らないんじゃないかと思うけど、僕は実はメルト・バナナっていう日本のグループとコラボを続けていて。かれこれ2年くらいになるけども。

 ーそうなんですか!メルト・バナナは素晴らしいグループですよね。

カール:うん、僕は彼らが本当に好きでね!彼らはジョン・ピールのフェイバリットバンドのひとつでもあったし、ジョンが亡くなったとき(2004年)に彼らとコンタクトをとってね。以来、彼らとコラボレーションしているというか、一緒に何か音楽を作ろうと取り組んでいるんだよ。

で、こういう僕個人の興味や活動はアンダーワールドにもフィードバックされていくから大切なんだ。ほんと、自分にもメルト・バナナみたいな情熱が備わっていたらいいのに!と思わざるを得ないよ。そうやってほかのアーティストから吸収した何かというのは、いつか何らかの形で居場所を見出して、アンダーワールドの音楽の中にも現れてくるものなんだ。

明治神宮は「ナルニア国」みたいなもの

ー2016年3月12日(土)からパルコミュージアムで行われる『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION "O"』に合わせての来日もありますが、東京に行ったら必ずしたいことはありますか。

カール:うん、必ず神社に行くようにしているよ。

ーどこか決まった神社ですか?

カール:明治神宮に行くね。森に囲まれた、あの神社。あそこに行くのにはいろんな理由があるんだけども、まず、僕は森の中で育ったというのがあってね。森に囲まれたエリアで大きくなったんだよ。だから木々のたてる音が大好きだし、ああいうとんでもなくエキサイティングな大都市のただ中にいながら……そうだな、これはどう形容したらいいだろう?明治神宮はちょっとした「ナルニア国」みたいなものだ、というか。大都会の中にある「衣装箪笥」(『ナルニア国物語』では、衣装箪笥が現実界と別世界とを繋ぐ役割を果たす)なんだよね。

ーなるほど。

カール:色んなことが起きている目まぐるしい大都会のど真ん中にいながら、あの箪笥のドアを開けた途端、そこには別世界が広がるっていう。突如として緑豊かな森の中に放り込まれて、「ワオ、何が起きたんだ?」と。森の中の歩道を歩いているだけでも、僕は「故郷に戻った」って気分になるんだよ。

それと、純粋にピースフルな空間へと自分を連れて行ってくれる、そういう場所でもあって。だから僕はあそこが好きなんだね。というわけで、東京に行くと必ず明治神宮には足を運ぶよ。あとは鯉の泳いでいる池にも行く。ああいう場所に行くと、とにかく童心に戻れるんだよね。うん、やはり子供時代に戻るというのは、しょっちゅうやっていることだよ(苦笑)。

ー素敵なお話ですね。渋谷での限定ライブパフォーマンスですが、どんなものになる予定ですか。観客もヘッドフォンを使ったライブスタイルということですが。

カール:うん、ここしばらくの間ずっと実験してきたことなんだ。『バウアーズ&ウィルキンス(Bowers&Wilkins)』のヘッドフォン部門と一緒に仕事していてね。リックとダレン・プライスは『B&W』製のヘッドフォンをライブで使っているし、スタジオでも彼らの機材は色々と使わせてもらっている。で、僕たちは彼らと一緒に「サイレント・コンサート(ワイヤレスヘッドフォンを介して観客にダイレクトにサウンドを届けるスタイルのイベント)」という実験プロジェクトを続けていてね。ロンドンでも実験したよ。このスタイルのコンサートというのは長いこと僕たちがディスカッションを重ねてきたものなんだ。これがうまくいけば、将来的に僕たちは世界のどこでだって、好きな時にコンサートをやるのが可能になるわけだよね?ライブ会場の音響の良し悪し、そこに束縛されずに済むわけだから。

ーなるほど。

カール:だから、これもアンダーワールドという存在の経ている進化の側面のひとつ、というかな。「アンダーワールドを体験するため」の、今までとはまた別のやり方だ、ということ。だから僕たちにとってはやはりエキサイティングなんだよ。それに、このスタイルだと音が外に出ない=騒音にならないから、警察が出動してライブをシャットダウン、なんて事態も起きないわけだよね?(笑)

ーそうなりますね(笑)。

カール:そう考えれば、僕たちはきっと、本来ライブをやるべきではない場所でライブをやることになるのかもよ?

通訳:でも、そういう実験を日本のオーディエンス相手にやってくれる、というのは嬉しい話ですね。このアイデアは日本の音楽ファンにきっとウケると思います。

カール:これは、僕たちが日本の観客を大好きな理由のひとつでもあるんだけど、彼らは常に「何か新しいもの」を求めているわけだよね?それがあるから、僕たちだって自己満足に陥ってのんびりするのを回避できる。僕たちとしても、毎回日本を訪れるたびに、「今回はどんな新しいことを提示できるだろう?」と考えるんだよ。日本のオーディエンスはそういうマインドを応援してくれているんだよ。

ー分かりました。で、『タイムアウト東京』は英語版もあるので困ったらチェックしてもらえると嬉しいです。

カール:(笑)ファンタスティ~~ック!うん、ありがとう。この夏に『サマーソニック』出演で日本に行くときに、僕は家族も日本に連れて来て、一緒に2週間くらい夏休みをとるつもりなんだ。今回は夏の日本だから、カントリーサイドにもっと足を伸ばしたいな、と。北海道に行こうかと考えているんだよね。いろんな友だちに話を聞いたんだけど、みんな「北海道は夏でもそこそこ涼しいはずだ」ってことで。

ー北海道は四季を通じて素晴らしいですよ。ともあれ、今回は貴重な機会をありがとうございました。パフォーマンスと展示を楽しみにしています。

カール:こちらこそ、ありがとう! 

Underworld『Barbara Barbara, we face a shining future』の詳しい情報はこちら

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