僕のドラッグはリズムで、キックドラムが僕の売人だ
ードラッグの香りを感じない、そもそもそうした土壌から生まれていないダンスミュージックというのが、メジャー、アンダーグラウンドを問わず新しい主流としてあると思うのですが、アンダーワールドの新作アルバムからは、そうした音楽とのリンクも感じられました。
カール・ハイド:なるほど、それは興味深い意見だな。うん、面白い。そういう、若い世代の作る音楽という要素は含まれている作品だと思うし、そう言ってもらえるのは非常に嬉しいね。というのも、僕たち自身、自分たちの音楽をドラッグの香りがするもの、そうしたシーンと関連があるもの、という風に捉えたことこれまで一度もなかったからさ。これはしばらく前の話になるけど、僕が考え出したフレーズに「僕の選ぶドラッグ、それはリズムだ」というのがあってね。で、「キックドラムが僕の売人だ」と。
ーなるほど(笑)。
カール:だけど、それって真実なんだよ!本当に、正直なところでそうなんだ。たとえば、僕らは朝の2時、3時にステージに上がることもある。で、そんな時間帯の自分は疲れきっているし、もうクタクタという感じだし、頭の中でも「無理だ、これからステージに上がってパフォーマンスなんて、自分にはできっこない……」と考えているわけ。
ところがこれが、1発目のキックドラムが鳴り響いた瞬間を耳にした、その途端に、突如として全身にアドレナリンが充満するんだよね。自分の内側にエネルギーも感じるし、身体の中に光も感じる。だけど、そのエネルギーが一体どこから出てくるのかは、我ながら見当がつかないんだよね。僕のドラッグはこれまでも、そしてこれからも常に音楽なんだってこと。本当にそうだよ。自分の抱えていたアルコール中毒の問題はずいぶん前に克服したし。アルコールは、僕にとっての真のドラッグである音楽に自分がコミットする、その妨げになってしまうんだ。
というわけで、僕を気持ちよくしてくれるものは何かと言えば、それは音楽なんだよ。音楽は何かを感じさせてくれるし、自分自身のエモーションと僕とをコネクトさせてくれるのも音楽だ。だから、ドラッグの香りがしない、ドラッグカルチャーとは関係のない音楽に僕たちの音楽をなぞらえてもらえるのは、僕たちからすれば「うん、正しい!」と思えるよね。ってのもほんと、自分たちをその手のカルチャーの持つメンタリティと関連づけて考えたことは一切なかったから(笑)。だから僕たちは、単純に音楽を聴くって行為を通じて超越的な経験を得ている、そういう人間なんだよ。