境界のないアイデア
まずはビジュアルを見てほしい。ジギー・スターダストのような優美さが漂い、パンクファッション全盛期の要素も感じられる。サウンドには、インターネット世代ならではの境界のないアイデアを取り入れ、過剰に表現している。例えば、『To the Door』という曲は、高揚感のあるマカロニウェスタンの楽曲を極端にゆがめて、欠陥のあるR&Bのような展開に突入したかと思えば、再び元に戻るのだ。
謎めく注目のニューカマーバンド、HMLTD。本記事では、タイムアウトロンドンが掲載した、彼らについての特集を紹介する。日本ではまだ無名な彼らだが、耳の肥えたタイムアウトロンドンの記者をして「まさに予測不可能。ほかとは一線を画すロンドン発の音楽を求めているのであれば、HMLTDを聴くことをおすすめする」と言わしめるほどの存在である。『ロッキー・ホラー・ショー』も真っ青な猥雑(わいざつ)集団の魅力とは。
まずはビジュアルを見てほしい。ジギー・スターダストのような優美さが漂い、パンクファッション全盛期の要素も感じられる。サウンドには、インターネット世代ならではの境界のないアイデアを取り入れ、過剰に表現している。例えば、『To the Door』という曲は、高揚感のあるマカロニウェスタンの楽曲を極端にゆがめて、欠陥のあるR&Bのような展開に突入したかと思えば、再び元に戻るのだ。
覆面を被った人々と飛び散る体液が映し出され、イギリスのティーンドラマ『スキンズ』の出演者たちですらやり過ぎだと思うであろうパーティーへと場面が移り変わる。デビューシングル『Stained』のミュージックビデオで繰り広げられるこれらの映像は、芝居じみていて、調和に欠けており、不穏。あらぬ方向に突き抜けた、強烈な世界観である。
サウンドと同様に、ライブもダークな雰囲気なのかと言うと、そういうわけではない。しかし、これまでにないライブであることは間違いない。彼らは「自分たちが挑発することで人々に反応してほしい」と考えており、それはポジティブな反応でも、ネガティブな反応でも構わない。Blitz(1980年代のニューロマンティックムーブメントの舞台となった伝説的ナイトクラブ)の世界観と共鳴する2017年のパフォーマンスアートと混ざり合いたければ、ぜひHMLTDのライブに足を運んでみてほしい。ただし、前方で観る際には注意を。最終的には、ボーカルのHenry Spychalskiが頭上で身をよじらせることになるかもしれない。
バンドは急成長中なので、今からチェックしておくべきだ。そして、彼ら一流のお祭り騒ぎを体験したければ、比較的小さな会場でライブを観ることをおすすめする。今夏は、ロンドンの音楽フェスティバル『Field Day』への出演が決定しているが、会場であるヴィクトリアパークを彼らなりの悪の巣窟に変貌させることだろう。
原文:Rhian Daly
翻訳:小山瑠美
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