音の一番美味しい部分が削られているような感覚
ーまずは、お互いの音楽についてどんな印象を持っているか教えてください。
食品まつり a.k.a foodman(以降、食):『印象III : なんとなく、パブロ』※ を聴いた時は、ユーモアのセンスを感じました。
TOYOMU(以降、T):ユーモアという部分は、シンパシーを感じるところです。食品まつりさんは、メロディーを組み立てるということからはみ出て、新しいものを模索している人というイメージがありました。特に、『Ez Minzoku』(2016年)を聴いた時に、この人は違う道を歩き出した人だ、と思いました。
食:ビートミュージックと呼ばれるジャンルをやり続けていくうちに、次第に自分の特色を意識するようになってきたんです。打ち込みの音楽は、生楽器を演奏する音楽と違って、自分の頭の中を忠実に形にする面白さがあるから、遊び心が大事だと思っています。
ーTOYOMUさんは、2年前のインタビューでは、DTMソフト上の譜割りに縛られないような作り方を試行錯誤していて、いかに音をズラすかを考えていると語っていましたが、現在はどうですか。
T:『TOYOMU』に収録されている曲のいくつかは、クオンタイズをかけています。ズレを狙った作り方をしているうちに、音の一番美味しい部分が削られて、排泄物を固めているような感覚に陥ってしまって。そうした方法は一度全部捨てて、まずは踊れるものを作ってみようと思うようになりました。
クオンタイズをかける、かけない、にこだわりがあるわけではなく、その先に面白いものができていればどちらでも良いんです。
※『印象III : なんとなく、パブロ』:カニエ・ウェストの2016年のアルバム『The Life of Pablo』が、リリース当初、日本で聴くことができなかったために、TOYOMUがネット上で拾った各収録曲のサンプリングソースや歌詞のテキストデータをもとに、想像で作り上げた『The Life of Pablo』のオマージュアルバム