今ある価値や役割に縛られていると先に進めない
ー まず、自撮りを始めたきっかけを教えてください。
きっかけは、行きつけの飲み屋で開催された『セーラー服ナイト』でした。みんなでセーラー服を着て飲むっていうイベントなんですが(笑)。そのイベントに参加するため、ネットでセーラー服を買って、自撮りしてSNSに載せたら反響がすごくて。そこから図に乗って続けている感じです。
ーその一歩が、普通の人には、とても勇気がいることだと思うのですが……。
それが、意外と抵抗がなくて。オバハンがセーラー服着て自撮りしてるって、絵面的に面白いじゃないですか!
ー でも、セーラー服で始まった自撮りが、ホタテの貝殻ビキニまで行き着くのは、とても飛躍しているように感じます。
よく言われるんですけど、単純に人が見て面白いものを追求していった結果です。セーラー服を着て、次にベビードールを着ても面白くないし、「じゃあ、ホタテビキニかな!」という流れです。
ーマキエさんは元々カメラマンとして活動されていたんですよね。男性が多い業界の中、一人のカメラマンではなく、女性として扱われることが嫌で、仕事の時は服装も地味にして、女性である部分を見せないようにしていたとか。自撮りで体のラインを見せ、色気を出し、女を前面に押し出すことに、矛盾はなかったんでしょうか?
全くないですね。今だからできる表現で、若かったらできないんですよ。閉経して子供が産めない体になり、それはある意味、生き物として女ではなくなったということ。女じゃなくなったから、女としての美しさを求めた写真ではなく、面白さを追求した作品になったと思います。
ーそんな今のマキエさんのありのままに捉えた写真を見て、「女性としての解放」を感じました。女性でも容姿や年齢などを気にせず、自分の思ったことをそのまま発信して良いのだ、と。
写真展を開催すると、男性のお客さんが多いんですが、女性客もかなり来場します。中にはモデルの子もいて、彼女たちは容姿や年齢で選別される世界にいるので、歳を取ることにすごく恐怖感を持っている。そのモデルたちが私の写真を見て、「年齢を重ねても、こんな表現ができるんですね。勇気をもらいました」と言って帰っていきます。
年齢なりの役割、女性なりの役割というのがある程度存在するのは仕方がない部分もあるけれど、現状で与えられている価値や役割に縛られていると先に進めない。「この年齢だからできること」「この容姿だからできること」を日々考えながら過ごしていけば、歳をとることへの恐れは消えるんじゃないかな。