写真:Rob Greig
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インタビュー:ウェス・アンダーソン

ウェス・アンダーソンに聞く、日本を舞台にした新作アニメーション映画『犬ヶ島』

Mari Hiratsuka
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タイムアウト東京 > 映画 > インタビュー:ウェス・アンダーソン

インタビュー:Gail Tolley
写真:Rob Greig

ウェス・アンダーソンは唯一無二の映画監督だ。スタイルの巨匠、風変わりのチャンピオン、特定の色彩をこよなく愛する人というイメージだろうか。最新作『犬ヶ島』は、『ファンタスティック Mr. FOX』に次ぐ2本目のアニメーション作品。日本を舞台に、犬のインフルエンザが発生後、島に追放されて来た犬たちの物語だ。アンダーソン作品に期待される視覚的な要素があり、その根底には寛容の大切さという強いテーマも流れている。そして、俳優ハ―ベイ・カイテルの吠え声も。ロンドンでの公開前にアンダーソンに電話インタビューを行った。アンダーソンはとても魅力的で、文学的表現や皮肉っぽい観察、そして思慮深さに満ちていた。

原文はこちら

『犬ケ島』より

—『犬ヶ島』は、ロンドンにある「Isle of Dogs(犬島)」 の道路標識を見てインスパイアされたという噂がありますが、本当ですか。

本当だけど、すっかり忘れてたよ。『ファンタスティック Mr. FOX』でも制作を担当したジェレミー・ド―ソンが、いつかインタビューでその話をしたんだ。その時、この映画のはじまりがその道路標識だったことに気付いた。もとは「Isle of Dogs」が何かすら知らなかったんだ。

—本作の根底には包含や寛容という大切なテーマがあります。これは最近の政治的な風潮に触発されたのでしょうか。

この映画に6年くらい費やしてて、その間に世界はだいぶ変わった。世界で起こっていることは、物語の中で起こることに関連しているんじゃないかとよく思ったよ。背景の歴史を研究することから始めたけど、制作過程で、新聞の一面記事を読んで、アイディアを探すこともあったな。

—映画『ファンタスティック Mr. FOX』では、主人公のスーツが監督自身がよく着るスーツに似ていました。本作では個人的なアイテムは登場しますか。

主人公の犬はチーフっていう名前なんだけど、僕も同じ名前の黒いラブラドールと一緒に育ったんだ。そこが個人的なつながりだね。

—飼い犬のチーフは、映画のチーフと性格は似ていますか。

僕のチーフは、映画のチーフほど複雑な性格じゃなくて、もっと単純だったよ。

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『犬ヶ島』は、僕とジェイソン・シュワルツマン、ロマン・コッポラが書いた

—女優のグレタ・ガーウィグが、アメリカから日本を訪れる交換留学生に扮(ふん)しています。これまでガーウィグと一緒に仕事をしたいと思っていたのですか。

はい、グレタとは昔からの知り合いで。ノア・バームバック (映画監督で、グレタのパートナー) とは長年の親友なんだ。だから彼女とはいつか何かで協力することになると思っていたんだ。

—俳優のビル・マーレイも登場します。彼は連絡が取り難いことで有名ですが、あなたもメッセージを残して連絡を待つのみですか、それとも特別な連絡方法があるのでしょうか。

ホットラインが存在したとしても、彼は電話に出るとは限らないよ。僕はその罠にはまってるところなんだ。

—ロンドンでたくさんの映画を撮影してきましたが、ロンドンで好きな場所はありますか。

一番好きなレストランはRiver Caféだけど、St Johnもそれに近いね。メニューはよく変わるけど、美味しいんだ。血まみれの鳥も置いてあって。ハトかヤマシギかライチョウか何かだろうね。それをよく注文するよ。

—ロンドンでいつか撮影してみたいと思うロケーションはありますか。

ストランド(ロンドンの一区域)の周辺で、チャールズ・ディケンズの小説の中で、今まで映画化されていない作品を撮ってみたい。ディケンズの作品はほとんど映画になってるから、現実的には制作の余地がないんだ。でも、ディケンズ調のロンドンを舞台にした物語にはとても魅かれるね。

—ディケンズの小説で、特にやりたいものはありますか。

『デイヴィッド コッパ―フィールド』なんか特にいいね。小説に忠実に映画化するのは難しいかもしれないけど。

—作品のビジュアルやスタイルは、いつも独特ですよね。自宅が『グランド ブタペスト ホテル』のようだったら素敵だと思うのですが、私生活ではどうですか。

そんなことはないな。とてもシンプルなんだ。映画では、観客が90分から100分の間に楽しめる、幻想的な世界を創ろうとしていて。そこに住むことになると、状況は変わってくるな。

—最後の質問です。映画を観て、犬好きだと感じたのですが、猫好きに向けた作品の制作は考えていますか。

『犬ヶ島』は、僕とジェイソン・シュワルツマン、ロマン・コッポラが書いたんだ。彼らとは長年の友達でね。ジェイソンには11年くらい一緒に住んでいる犬がいて、彼は100パーセント犬好き。ロマンは猫を1匹飼っているんだ。僕は犬も猫も飼っていなくて。ケント(アンダーソンのパートナーが住んでいる)にヤギが2匹いるけど、ヤギ好きではないし。僕にとって、この映画の犬は人間と同じなんだ。実際、自分は究極の犬好きとは言えないと思うね。

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犬ヶ島
犬ヶ島

ウェス・アンダーソンの新作『犬ヶ島』は、近未来の日本を舞台に描かれる。鼻風邪と犬インフルエンザの大流行後に、「メガ崎市」から追放された犬たちは、ゴミ処理場の島に隔離され、ゴミの山に囲まれながら生活するようになった。美しいプードルたちは、すぐに自分たちが喧嘩っ早い野良犬たちと対等な立場であることを悟る。

2018年5月全国公開

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