ヴィヴィアン佐藤
美術家、文筆家、非建築家、ドラァグクイーン、プロモーター。
タイムアウト東京 > 映画 > 今こそ観てほしい、日本のLGBT映画5選
特定の都市や施設、学校、部隊など閉ざされた社会において、性
カランコエの花
現在の日本人が持つ感覚と比べると、非常に新しい感覚とセンス
フレンチドレッシング
1998年公開の日本映画で、当時世間を一斉風靡した漫画家、やまだないと原作の作品。煌めくようなアイドル櫻田宗久(さくらだむねひさ)が、主人公のナルコレプシー(居眠り病)を患う高校生役で出演。教師役は阿部寛が務める。友人の女子高生役は唯野未歩子。この3人の奇妙な三角関係が描かれている。後半の逃避行では、社会の枠を飛び越え、まるで昔のヌーベルバーグ映画のようだ。そもそも岡崎京子作品をはじめ、90年代の日本のコミックは非現実的であったり、時代の虚無感をうまく描写しており、ヌーベルバーグの影響を感じさせる要素が多い。
戦場のメリークリスマス
1983年公開の大島渚監督作品。世界的スーパースターのデヴィッド・ボウイや、坂本龍一、ビートたけしなどいわゆる映画人ではない人物を役者として起用したことでも話題になった。日本統治下、インドネシアのジャワ島の捕虜収容所を舞台に繰り広げられる本作は、スクリーン上に映し出される昼間の強い太陽の光と対照的な夜の暗さと星の美しさが印象に残る。ボウイ演ずるセリアズが独房で、故郷イギリスでの出来事を回想するシーンが、心を揺さぶる。「いわゆる」同性愛映画ではなく、人間の尊厳や敬意から立ち上る高貴な情感を見事に描いている。
御法度
脳出血で倒れた大島がリハビリを経て監督に復帰し、1999年に発表した作品。小説家の司馬遼太郎原作だ。日本を代表する俳優、松田優作の息子である松田龍平を初出演させたことでも話題になった。新撰組に新しく入隊する加納惣三郎(松田龍平)は美剣士ゆえ、浅野忠信ふんする田代彪蔵に衆道(男色)の世界に引き込まれる。しかし加納は、田代に濡れ衣を着せられ、2人は終盤に決闘することとなる。志高い新撰組において、隊の団結や意気を消沈させるものとして、男色を取り除こうとする集団心理が働くのは当時珍しいことではなかった。本作で、男色を超えた魔性の魅力を放つ加納の存在感は特異なものであった。
カケラ
安藤モモ子の初監督作で、原作は桜沢エリカによる少女コミック『ラブ・ヴァイブス』。満島ひかり演ずる大学生のハル、中村江里子ふんするレズビアンアーティストのリコ、年配のレズビアン役のかたせ梨乃などが、「人生とは?」「恋とは?」について模索し、自分とは何かを追い求め、自分らしく生きていく物語。人生も恋愛もまだ未熟なハルの成長物語でもあり、様々な人間が生きている東京という街の奥行きや、多くを受け入れる懐の深さなど、東京の都市としての魅力もジェンダーの多様さとともに描かれている。安藤紘平が、ドイツ現代文学『ブリキの太鼓』について熱の入った講義をする場面も見どころだ。
美術家、文筆家、非建築家、ドラァグクイーン、プロモーター。
タイムアウトロンドンでLGBT映画のベスト50が紹介された。同ランキングは、LGBT文化のパイオニアであるグザヴィエ・ドラン、キンバリー・ピアース、ブルース・ラ・ブルース、トッド・ヘインズ、ジョン・ウォーターズらが挙げたベスト10をもとに作成された。
2010年代、世界と日本で話題になった経験と回想をめぐる5編のLGBT映像叙事詩。私たちは過去に縛られては生きていけないが、過去を何度も回想し救済してあげること。過去は完全に終了してしまったことではなく、未来と同様に現在にも含まれていて、何度も物語し直す必要がある。そのことではじめて「いま」を生きることができる。現代性に溢れた5編のLGBT映画を見つめることで、私たち自身の物語を語り直すことができるはず。
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