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行くべきか、北アルプス国際芸術祭。2017年初開催の芸術祭に注目

テキスト:
Kosuke Shimizu
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2016年は定番の『瀬戸内国際芸術祭』などのほか、新たに開催された『さいたまトリエンナーレ』や『茨城県北芸術祭』なども加わり、もはや参加アーティストはおろか開催地を把握することすら難しくなってきた印象のある芸術祭たち。2017年も、初開催のものや大規模な『横浜トリエンナーレ』など注目のイベントの開催がアナウンスされてきている。そんななか、6月から7月にかけて長野県で初めて開催される『北アルプス国際芸術祭2017 ~信濃大町 食とアートの廻廊~』の情報が徐々に出揃ってきた。総合ディレクターを務めるのは、芸術祭ではおなじみ、アートフロントギャラリーの北川フラムだ。芸術祭について、出品作家の作品イメージとともに紹介するので、美しい夏の小旅行にふさわしいか判断する材料にしてもらえたら幸いだ。

布施知子布施知子 作品イメージ:《無限折りによる枯山水》

会場となるのは長野県北西部の大町市。JR大糸線の信濃大町駅へは松本駅から電車で50分、北陸新幹線を使うなら東京駅から1時間20分の長野駅から急行バスで60分の距離にある。決して近いとは言い難いが、松本までも新宿から特急電車や高速バスが出ているので、ショートトリップには最適と言えるかもしれない。苦学生であれば、高速バスと電車を乗り継げば片道4,000円程度だし、到着後の移動も見越して友人を誘いレンタカーという手ももちろんいいだろう。

しかし、そもそもなぜアートを観るために地方へ行く必要があるのだろうか。旅行を伴う芸術鑑賞が満足のいくものになるかどうかには、多くの場合その土地が持つ魅力も大きく関わっている。この手の芸術祭の母とも言うべき『ヴェネツィアビエンナーレ』を擁する水の都は言うまでもないことだが、日本での成功例である瀬戸内もまた土地自体が強い磁力を感じさせる。また、年を重ねるごとに支持者を獲得している新潟県『大地の芸術祭』は、作品鑑賞のために費やされる移動距離の長さでも知られるが、この移動そのものや様々な景色と出会う体験が、来訪者にとって好ましい影響を少なからず与えていることも見逃せない。

大地の芸術祭のポチョムキン『大地の芸術祭』に出品されたカサグランデ&リンターラ建築事務所『ポチョムキン』

通俗的なアートツーリズムと言われればそうなのかもしれないが、景色や食を通じてその地の風土を感じることも十分に文化的な営為だろう。まだ罪悪感が拭えなければ、ランドアート(アースワーク)が「場所」や「風景」を作品から切り離せないものとしたように、芸術祭もまたアート体験に新たな軸を持ち込んだのだとでも無理矢理に考えよう。美術館のコレクションだけがアートではない、と。慧眼の建築史家、五十嵐太郎が『ネットTAM』内の『芸術祭はどのように始まったのか』で教えてくれているように、クリスト&ジャンヌ・クロードによる大がかかりなプロジェクトなどを古くからサポートしてきたアートフロントギャラリーが、現在の日本の芸術祭シーンの一翼を担っていることはその意味で興味深いことだ。

川俣正川俣正 作品イメージ

さて、それでは『北アルプス国際芸術祭』ではどんな光景を見ることができるのだろうか。大町市は、3000m級の山々が連なる北アルプスの麓に位置する町。美しい山々や湖、自然豊かな温泉郷、趣深い町屋の家々など、見るべきものはたくさんあるが、注目したいのはダムだ。黒部ダムを望む立山黒部アルペンルートの玄関口として知られる大町にもまた多くのダムがあり、この重厚な近代土木建造物が鎮座するエリアにも作品は展開される。作品が設置される具体的な場所に関しては未定のものもあるが、ダムを舞台にアートに触れる機会もそう多くないだろう。どのような作品が展示されるのか、どうしても期待は禁じ得ない。

おおたか静流 with 藤本隆行おおたか静流 with 藤本隆行 作品イメージ:《Under the Camphor tree》徳島LEDアートフェスティバル2013

肝心の参加アーティストにも簡単に触れておこう。北川によるディレクションのためもあるだろうが、川俣正や遠藤利克、新進気鋭の目【め】、大岩オスカールといった各地の芸術祭でも引っ張りだこの作家がまずは目につく。一方で、地元の折り紙アーティスト布施知子のように、国際的に高い評価を得つつも国内のアートシーンではあまり取りざたされていない作家が名を連ねているのも嬉しい。海外からもアルフレド&イザベル・アキリザンやジェームズ・タップスコットなどが参加する。フィンランド出身のアーティスト、マーリア・ヴィルッカラは、かの有名なデザイナーのタピオ・ヴィルッカラとルート・ブリュックの娘だという。そのほかにも、大阪でカルト的な盛り上がりを見せる『セルフ祭』を主催するコタケマンや、2016年の市原湖畔美術館でのコラボレーションも話題になった、おおたか静流 with 藤本隆行などにも注目したい。

マーリア・ヴィルッカラマーリア・ヴィルッカラ 作品イメージ

目『大地の芸術祭』にも参加経験のある目【め】の南川憲二(左)と荒神明香(右)

美しい景色に温泉、食事、そして忘れてはいけない地酒。アート鑑賞は、気散じの旅に出る口実にはもってこいだ。それから、ダムの魅力に目覚めてしまったら、国土交通省による『ダムカード』を集めてみるのもいいだろう。

『北アルプス国際芸術祭2017 ~信濃大町 食とアートの廻廊~』の詳しい情報はこちら

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