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次々と桜の満開の便りが届く4月。大田区の老舗銭湯、桜館でも、名物のソメイヨシノがようやく咲き始めた。花見と温泉を同時に楽しめる癒やしのスポットとして、区内外から大勢の人々が足を運んでいる。
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1959年創業の桜館は、池上駅からほど近い、閑静な住宅街の一角にある。深緑色の外観が特徴の銭湯で、建て替えと改修を経て、現在の形になった。料金は、大人460円、小学生180円。桜を眺めながら湯に浸かることができる心地良さが人気で、昔から地域の人に愛されてきた。同区は、様々な銭湯がひしめくエリアだが、桜館のように花見もできるところは珍しい。最近では、テレビやインターネットなどで紹介されることも増え、遠方からの客も増えているという。
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桜を見られるのは、1階の『弐の湯』にある露天風呂と、2階飲食スペース。露天風呂は天井が吹き抜けのように大きく開けており、毎年、建物脇のソメイヨシノが、中に入ってきそうなほど咲き乱れる。10年以上通い続ける常連客のひとりは、「満開になると、桜の花びらがひらひらとお湯に舞い落ちてくる。桜を見ながら体を温め、お酒も飲めるなどという贅沢はほかの銭湯ではできないでしょう」と魅力を代弁する。
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2階飲食フロアに上り窓の外を見てみると、薄桃色の桜が建物を取り囲むようにして咲き始めている。別の常連客は笑顔を浮かべ、「桜が咲くと本当にきれい。心が和らいでくる」と話す。2階では、ビールだけでなく、麻婆豆腐や餃子、モダン焼きなどの食事も注文できるため、子連れからお年寄りまで幅広い人が宴会気分を堪能できる。カラオケセットも備え付けられており、春の繁盛期には、賑やかな歌声が館内に響き渡る。
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桜館の魅力は花見だけではない。『壱の湯』の奥にある階段を上がった先には展望風呂もあり、涼やかな風を感じながら湯に浸かることができ、夜には月見も楽しめる。1階の浴場には、薬草風呂や電気風呂、水風呂など、数種類の風呂を用意。湯はアルカリ性で黒褐色の「黒湯」で、高い美肌効果を得られると人気を集めている。太古の時代の樹木が腐食し、湯に有機物が溶け込むことから褐色になるらしく、ミネラル分が豊富に含まれているという。桜館を経営する野口朋宏は「黒湯に浸かれば、体がコーティングされてつるつるになる。これは実際に入った人だけが体感できるもの」と自信を持って勧める。一度訪れてみれば、つい時を忘れて、あれこれと浸かってみたくなるだろう。
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桜館から見えるソメイヨシノの木は1990年頃の建て替え工事と同時に植えられたもの。植樹以来、花見ができるという評判は徐々に拡大。野口や従業員らによると、花見目当ての客も増え、なかには八王子市から毎週訪れるという人もいるという。自然豊かな地方の温泉郷でなくとも、花見と温泉は楽しめるのだ。銭湯というのどかな空間で、桜を愛でながら贅沢な気分に浸ってみてはどうだろう。
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