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狛江の廃銭湯にヒカシュー、The fin.。DIYパーティーの神髄

テキスト:
Kunihiro Miki
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Facebook経由で届いた全文英語のその招待状は、狛江にある(らしい)ギャラリーが音楽イベントを開催する、という内容を伝えていた。出演者はヒカシュー、メルト・バナナ、The fin.、Boys Ageという4組のバンドと、DJたち。控えめに言っても、大きめのライブハウスが軽く埋ま豪華なメンツだ。それにも関わらず、エントランスはフリー。イベントの告知情報を検索しても、Facebookページ以外にインフォメーションがヒットしない。そして狛江という場所柄がそもそも音楽イベントとイメージが結びつかないことも、このイベント『The Bathhouse show』に漠然とした期待を抱かせた。

会場は、間もなく取り壊される廃銭湯とアパートであると招待状には記されている。その位置をスマートフォンで確認すると、狛江駅から徒歩15分ほどの住宅地ど真ん中だ。駅前すら小綺麗な狛江の住宅街で、このメンツが演奏する。一体、これはどんなイベントなのだろうか。

メルト・バナナに間に合うよう向かうつもりが、遅れてしまった……そう思っていると、すでに会場にいる友人からメッセージが来た。「騒音で警察が来ています。雲行きが怪しいです」。メルト・バナナの爆音が閑静な町に響き渡っているかと思うと、焦りを押さえられなかった。

会場の周囲はやはり完全なる住宅街で、到着のかなり手前の時点で、もう音が聴こえてきた。ほとんど野外イベントと変わらない状況だ。会場に着くと、入り口ではいまだに警察と運営スタッフたちがやり合って(?)いる。中止には至っていないようで、目下ヒカシューが演奏中である。

8割が外国人の客で混み合う会場に足を踏み入れる。雰囲気は、夢にまで見たDIYでアンダーグラウンドなウェアハウスパーティーがそこに、といったところだ。浴場の天然リバーブも、演出に一役買っている。かつて女湯と男湯を仕切っていた壁が、ステージとラウンジの境目だ。

銭湯の2階、アパートだったスペースは、約40名のアーティストの作品が展示されたギャラリーになっている。アーティストたちの国籍はイギリス、アメリカ、ドイツ、台湾と様々。

このイベントを仕掛けたのは、狛江でSpace Space Galleryを運営し本イベントのギャラリーゾーンをキュレートしたオーストラリア人のエラと、ライブブッキングを担当したアメリカ出身のドロシー。準備期間には約半年を費やしたという。

 左:エラ、右:ドロシー。ドロシーは日本の音楽が好きで、今回のイベントのために各バンドに正面からオファーをしたという

騒音に配慮して小さめの音でプレイしたBoys Ageが終わり、この時点でバンド演奏の中止がアナウンスされた。トリのThe fin.の出番がなくなってしまったわけだ。エラとドロシーたちは事前に近隣住民にこのイベントの開催に関して承諾を得ていたというが、想定していたエリア外の住民から苦情が入ってしまったのかもしれない。残念な事態ではあったが、会場内の空気が冷めることはなく、客たちは最後までパーティーを楽しんでいた。

東京ではこういう事件のようなことも、たまに起こるのだ。そして、その事件の動機がピュアすぎる熱意からくるものだったとしたら、その現場に立ち会えたことは幸運と呼ぶべきだろう。エラとドロシーのこれからにも、大いに期待したい。

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