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テルアビブ中のファッショニスタが集結する『テルアビブファッションウィーク(TLV FW)』が、2015年10月18日〜21日の日程で開催された。イスラエル国内のみならず、多くの海外メディアも訪れ、国際的なファッションウィークとして存在感を強めている同イベント。昨年に引き続き、建設中のショッピングモールというフォトジェニックな舞台で、華やかなショーやパーティーが繰り広げられた。会場のギンディ テルアビブ ファッションモール(Gindi TLV Fashion Mall)は、イスラエルやヨーロッパで数多くの商業エリアやファッションモールの開発を手がけてきた不動産デベロッパー、ギンディ(Gindi)グループが2016年春にオープンさせる新たな大型施設だ。
昨年には『ミッソーニ』が参加して話題を読んだ同イベントだが、今年はイスラエル国内のブランドの目覚ましい活躍を目にすることができた。イスラエルで60年以上続く老舗ブランド『Maskit』をはじめ、イスラエルを代表するファッションスクール、「シェンカー(Shenkar College of Engineering and Design)」を卒業したデザイナーによる『Shai Shalom』や『Alembika』など、新旧問わずイスラエルのファッション界を担うブランドがオーディエンスを魅了した。もちろんイスラエル以外からも、ミラノを中心としながらグローバルな展開で多くのファンを持つ『Marcelo Burlon』などが参加。DJやクリエイティブディレクターとしても活動するMarceloのパフォーマティブなクリエイションは、コンテンポラリーダンス大国であるイスラエルでも強烈な印象とともに受け止められたことだろう。
多くのデザイナーがそれぞれに個性を演出したファッションウィークだが、とりわけ鮮烈な勢いを感じさせたのは、先述のファッションスクールであるシェンカーの在学生や、『Upcoming Designer』のセクションに登場した、新進気鋭のデザイナーたち。ファッションビジネスの業界のみならず、アートやデザインの分野にも新しい才能を輩出してきたシェンカーのショーでは、学生ならではの瑞々しい感性や躊躇のない表現が、ラグジュアリーブランドには出せない光彩を放っていた。『Upcoming Designer』に登場したのは、コンペティションで選ばれた若き8ブランド。構成力のあるショーで会場を沸かせた『Muslin Brothers』や、軽やかでルーズなシルエットが新しい時代の価値観にもマッチした『Hed Mayner』などは、特に日本でも人気を呼びそうだ。
ファッションウィークのラストショーを飾ったのは『Dodo Bar Or』。デザイナーのDodoは、映画や舞台で女優としても活躍するイスラエルのファッションアイコンだ。荒野に延々と伸びる道が大写しになったスクリーンを背景に、ランウェイを歩くモデルたちが着る服には、アラブのスカーフ「シュマグ」を想起させるモチーフも散見される。BGMとして使われているのも、アラブ音楽の影響を色濃く受けたミズラヒーム調の、おそらくはヒット曲。イスラエルという国にあって、どこまでも軽やかに時代を進むファッションの表層に、アラブ世界の表象がきわめて自然にちりばめられているところにも、この美しく複雑な地の、目をそらしがたい魅惑が表れているのかもしれない。