ニュース

小学生から70歳以上まで訪れるスタイリッシュなサンドイッチカフェ、スプレッドイット

テキスト:
Shiori Kotaki
広告

戸越公園駅から徒歩5分のところにある宮前商店街。ほど近くの戸越銀座商店街に比べると決して栄えているとは言えないが、人々の生活が垣間見えるノスタルジックな雰囲気の商店街だ。2017年5月22日、この商店街にサンドイッチカフェとイベントスペース、建築設計事務所が1つになったスプレッドイット(spread it)という空間が誕生した。商店街の雰囲気には少々似つかわしくないスタイリッシュな見た目ながらも、地域にしっかりと根ざしたスプレッドイットを紹介する。

スプレッドイットは、建築家の林口洋平と、美術家のオオツカリリリが夫婦で営むスペースだ。オープンさせた理由について2人は「お洒落なところもありますけど、会議室とかが素っ気ないオフィスって多いんですよね。コーヒーも紙カップで出てきたりして。美味しいコーヒーとお菓子をつまみながら打ち合わせができるようなスペースがあると良いなと思ってオープンさせました。ここに来てもらえば自分の設計を体感してもらえるかなと思ったのもありますね」(林口)、「面白い人たちが集まれる場所が欲しくて。食があるとアート関係以外の人も興味を持ってくれるかなと思っています」(オオツカ)と話してくれた。仕事とは別に、人が集えるような空間を持ちたいという互いの想いが一致したことからこのスペースを持つことになったのだという。

足を踏み入れると、ちょっとした違和感を感じるだろう。実は、建物自体は長方形なのだが、イートインスペースの面積は奥に進むにつれて広がっており、台形のような不思議な間取りになっているのだ。イートインスペースをこの形で取ると、キッチンや事務所も自然と変則的な間取りになる。つまり、全空間がサンドイッチの断面のような間取りになっているのである。洗面台の鏡も同じ形にカットされていたり、机や椅子もこの店のためにデザインされたものであったり、あらゆるところにデザインへのこだわりが感じられる。

テーブルもサンドイッチの断面を意識。イベントはイートインスペースで行う
イベントの際に使用するスクリーンは空間に馴染むようなデザイン
デザインへのこだわりはトイレの中までぬかりない

間取りの形にまでなっているサンドイッチだが、フードメニューに採用された理由は林口がサンドイッチ好きだったから。とてもシンプルな理由だが、探っていくとクリエイティブな食事であることに気がつき、さらに興味を持ったそうだ。「組み合わせ次第でいろいろなサンドイッチを作れるところもそうですが、イートインはもちろんテイクアウトもできるので、近くの公園で食べたり、自宅で食べたり、食べる風景が違ってくるのも面白いなと思いました」と語る。手軽に食べられるフードだからこそ、多様な食べるシーンに貢献できるところがクリエイティブだと感じたそうだ。メニューも細かいところまで凝っており、パン好きは必見。タマゴサラダに刻んだピクルスを混ぜ合わせた『たまごサンドイッチ』や、タマネギチリジャムとカマンベールチーズをチキンとともに挟んだ『チキンと2種のスプレッド』など、一工夫加えられたメニューが揃う。

『チキンと2種のスプレッド』。コーヒーは近所にある自家焙煎コーヒー専門店の豆を使用

取材をしていて印象的だった一言がある。それは「おじいちゃんとか、おばあちゃんもコーヒー飲みに来ますよ」というオオツカの言葉だ。喫茶店ならともかく、若い世代が愛用するような外見のカフェでこのような光景を見かけることはあまりない。しかしスプレッドイットでは、70歳を超えた人々が洒落た椅子に腰をかけてコーヒーをすするという光景が普通なのだ。なんと素晴らしいことなのだろう。時には小学生が雨宿りに来ることもあるといい、この空間の温かさを感じた。

林口の言葉を借りれば、戸越はオフィス街でもベッドタウンでもなく、人が住んでいる街だ。暑い日の昼食は冷蔵庫にある残り物で済ませるし、雨の日にわざわざ外に出ることもない。人々が自分のペースで生きる街にあるスプレッドイットは、オープンしてまだ数ヶ月。今後、さらに食やアートの面白さを戸越から発信してくれることに期待したい。営業は11時から19時で、月に1回ほど開催されるイベント情報はオフィシャルサイトでチェックできる。

スプレッドイットの詳しい情報はこちら

最新ニュース

    広告