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2014年10月10日(金)にオープンする神楽坂の新名所la kagu(ラカグ)を、一足先に見学して来た。昭和40年代に建てられた本の倉庫をそのままいかした、新潮社とサザビーリーグの共同プロジェクトとなる施設。独自の目線でキュレーターたちが集めたセンスあるアイテムに溢れ、今までにない「衣食住+知」が得られる場所だった。
総面積962.45㎡ の巨大フロアには、1階にウィメンズファッション、生活雑貨、カフェ、2階にメンズファッション、ブックスペース、家具、レクチャースペースを配置。開放感のあるテラスでは定期的にファーマーズマーケット『la kagu market(ラカグ マーケット)』が開催される。
まず、エントランスを入ると目を引かれたのが、作家が商品について綴った原稿が置かれたディスプレイ。江國香織、樋口毅宏、石田衣良など15名の作家が、洗剤、クラッチバッグ、ストールなどのアイテムを2週間使用し感じたことやエピソードが書かれており、それぞれの手書き、またはタイプされた原稿のコピーが自由にもらえるのだ。もちろんこれらのアイテムは購入可能。今後も様々な作家とのコラボレーションを不定期に行っていくという。
1階にあるウィメンズファッションのセクションは、大手セレクトショップのバイヤーを務めた安藤桃代が選んだ、アイテムが並ぶ。服の配置もブランド別に置くということはしないで、『MARNI』のパンツに『Acne』のジャケットを合わせるという様なスタイリングをワンラックで表現していた。主な展開ブランドは『Acne』、『J&M DAVIDSON』、『Maison Martin Margiela』、『MARNI』など。
そして、近所に住んでいたら朝食をここですませて出勤したくなるようなカフェでは、自家製ソーセージのホットドッグやイタリア、スペインから輸入した生ハムなどを中心とした料理と、鎌倉の名店カフェ ヴィヴモンディモンシュの堀内隆志が焙煎したコーヒーが飲める。シンプルだが食材にこだわった料理が味わえる、ロングテーブルが配置されたおしゃれなスペースだった。
2階に行くと、大人世代に向けたアメカジ、ヘビーデューティーをテーマに田中行太がセレクトしたアイテムや、Hans J. Wegnerを筆頭とした、北欧ヴィンテージ家具が揃う。
ブックスペースには新潮社の本の倉庫に元からあった本棚を使用して、la kaguならではのテーマに沿って選書された本が並んでいた。併設されたレクチャースペースSOKOには、新潮文庫、全タイトル3000冊が揃い、購入可能となっている。今後このスペースでは、山下裕二×戌井昭人の『つげ義春を語る夜』、蜷川幸雄の『ダメ出しの理由』、ジョンソン祥子with一茶による『写真を楽しむワークショップ!』など豪華な面々による様々なイベントが開催され、la kaguの「知」が体験できる。参加費も2,000円前後なのでふらりと立ち寄りたい。
設計をした、隈研吾はla kaguについてこう語っている。
「古びた倉庫をそのまま残すことも、私の当初からの考えです。今の時代は、物をだましだまし使っていくことが大事だと思う。だましだまし少しずつ変えていくということで歴史を継承することが出来る。一度更地にしてしまうと歴史を殺すことになるから、時間的継続性が担保出来ない。倉庫のように即物的な機能だけみたいな建物ですら、何十年も経っていると、しっかり歴史のあかが染みついていて、いい感じになっている。その歴史を生かしたいと思ったんです」
日本では、構造上の理由などで、古い建物を壊してしまうことが多いが、この場所は上手にリクリエイトされ、建物の良さが引き出されていた。この先la kaguがどのような歴史を刻んでいくのかが楽しみである。