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タイムアウト東京マガジンにて連載中のローカルレジェンド。この連載では、渋谷の絶滅危惧種ガングロギャルや、102歳のコーヒーレジェンド関口一郎など東京の街で活躍する人にスポットを当てて紹介している。今回は、夜な夜な都内をさまようバー Twillo(トワイロ)のオーナー、神条昭太郎に話を聞いた。
東京の街角に夜な夜な現れては消えるバーがある。白い屋台を引いて現れたのは、モバイルサロンTwilloのオーナー神条昭太郎。ロウソクの火を灯し、輝くバカラのグラスを用意すれば、街の一角がバーへと変貌する。神条がTwilloを始めたのは2006年。銀行員、フリーター、衆議院議員公設秘書という職歴を経て、彼が選んだのは屋台バーだった。神条は、「感性が表現できる、自由度が高い、食べていける。この3つの条件を満たした仕事をしていきたいと考えていたんです」と話す。
Twilloは当初、明治神宮外苑のイチョウ並木で365日、雨の日も雪の日も、台風が来ても休まず出店していた。その後、2年間の休業の後再開する。この頃から出店場所をTwitterで発信し都内を巡るようになり、現在まで毎夜冒険の旅を続けている。
出店情報を手に入れられるのはTwitter上のつぶやきのみ。詩のようなメッセージを頼りに店にたどりつけば、とっておきの時間が過ごせる。屋台といえどドリンクは、神条の選んだバカラグラスで提供され、ビールやワインのほかにもカルバトスや葉巻なども用意している。場所が変わることで初めて来店する客も多い一方、常連が友人や同僚を喜ばせるために連れてくることも。筆者が訪れた夜にはバーの前をふらりと通りかかった人が立ち寄ったりと、人と人との出会いがうまれていた。ある客が「後ろは道路なのに、前を見れば異空間」と話していたとおり、なんとも不思議な空間なのだ。
毎回新しい場所でのスタートと言えるこの仕事だが、神条は「場所を変えると慣れない土地で寂しいし、客を待つ間にエネルギーも使います。しかし様々なお客さんに出会えることが楽しい」とやりがいを口にした。夜を彷徨うバーを見かけたら躊躇(ちゅうちょ)せずにカウンターに並び、一夜の出会いを祝って乾杯しよう。