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タイムアウト東京マガジンにて連載中のローカルレジェンド。この連載では、渋谷の絶滅危惧種「ガングロギャル」など東京の街で活躍するレジェンドたちを紹介している。今回は、2016年5月に102歳を迎えた、カフェ ド ランブルのオーナー関口一郎に話を聞いた。
銀座の路地裏に、意思表示ともとれる「コーヒーだけのお店」と書かれたオレンジ色の看板を見つけ扉を開けると、関口は焙煎作業の最中であった。
カフェ ド ランブルは、1948年に創業したコーヒーの老舗だ。店名になっているフランス語「ランブル」は、関口の理想とするコーヒーの色「琥珀色」を意味する。オープンのきっかけは、戦前に映画関係の音響のエンジニアをしていた際に、客にコーヒーを振る舞っていたところ、評判が良く、口々に「コーヒー屋を開いた方がいい」と言われ、決意した。元々コーヒーに興味を持ったのは学生時代で、コーヒー豆の問屋などに通い、関口の基礎となる様々な知識をこのころに学んだそうだ。そして戦後、営業許可を取得するために四苦八苦しつつも、「アルカロイド研究所」という名目でランブルの前進となるカフェを銀座でスタートさせた。
カフェドランブルのメニューには50種近くのコーヒーがある。そのなかでも10年以上熟成させたオールドコーヒーは、ランブルのキーとなるメニューで唯一無二のものだ。さらに、焙煎機、ミル、ポット、カップにいたるまで、関口が考案、設計しており、美味しい一杯への探究心は半端なものではない。「豆と焙煎はコーヒーの味を左右する」と関口は語り、現在も焙煎作業をできるだけ自身で行っている。
関口の悩みは、1970年代以前に涙が出るほど美味しいと感じたコーヒーをそれ以降味わえなくなったことだ。「大量生産の方向に向かってしまった市場からは、いい豆がなかなか入らなくなってしまいました。しかし、近年少しずつですが市場での価値が見直されており、希望を持っています」と語る。
また、最後にコーヒーとパイプタバコを愛する関口に長生きの秘訣を尋ねると、「ストレスを溜めないことではないでしょうか、コーヒーにはストレスの解消にも効果があることも発見されています」と教えてくれた。
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