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TOKYO MUSIC BOX #6 リトルソウルカフェ

テキスト:
Kunihiro Miki
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※プレイリストは記事下部
in collaboration with KKBOX 

リトルソウルカフェ

値段:

音量:★★★

照度:

出会い:

ポイント: レコード1万2千枚、リクエストOK、ソファーあり

この一杯:ラム酒飲み比べ 

定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフ、常連客がセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。

第6回は、下北沢からその名を世界に轟かしているバー、Little Soul Cafe(リトルソウルカフェ)。1999年にオープンしたこの店は、DJ、レコードマニア、バイヤーなどが出入りするブラックミュージックの名所として知られている。

飴色に変色した木造の店内には、8席ほどのカウンターと6席ほどのソファー席。音楽にじっくりと耳を澄ましながらアルコールを傾けるには狭過ぎず広過ぎないちょうどいい広さだ。店が所蔵する約1万2千枚のレコードは、壁中の棚にも収まりきらず、部屋の一角にも積み上げられている。

ラッパーのNASをはじめ、来日する有名DJも数多く訪れる同店だが、同店が海外のアーティストやレコードコレクターをも惹きつける理由とは何なのか。店主の宮前伸夫いわく「お店でかかっているのはジャズ、ソウル、ファンク、ディスコといった現在のクラブシーンのルーツとなるような音楽が多いです。昔から日本では古いレコードや音源を掘り起こし、新たな価値を見出して愛情を持って接するという文化が発達していましたし、様々なスタイルのレコード酒場も時代の変化に対応しながら進化し続けています。そういった日本人ならではのレコードを取り巻く文化は、レコード好きの海外の人にとってみればとても興味深く映るらしく、自分の国にもこんな店があればいいのに、という声はよく耳にします。特別なことをしている自覚はないけれど、レコードや音楽をきっかけにいろんな人と出会える毎日が楽しい」。

オープンした当時、渋谷宇田川町周辺のDJカルチャーは絶頂期を迎えていたが、下北沢にはまだソウルやファンク、レアグルーヴを聴かせる店は少なかったという。自分の部屋に友達が遊びに来て、そこで音楽やレコードを囲んでワイワイみたいな雰囲気になればいい、という店内には、幅広い客層が集まってくる。

「昔のレコードに興味を持ったきっかけは、ヒップホップのサンプリング・ソースやブレイクビーツからという、よくあるパターンで、クラブなんかで働いていたこともあり、そのうち、レコードの流れる空間を作りたくなって……まあ、できることがこれしかなかったというだけの話なんですが(笑)。最近でもジャズ、ソウル、ファンク、ディスコといった昔のレコードを掘り始める若いリスナーは多いですね。でも、常連さんには全然ブラックミュージックに興味がない方もいます。ソウルは興味ないけど、レコードが好きだから、という理由で来てくださるみたいで。僕も営業中はあんまり音楽の話はしないです。かけてる曲そっちのけで馬鹿話してるほうが多い(笑)。興味のない人に押し付けるようなことはしたくないですから。でも、聞かれたらなんでも答えますよ。リクエストも大歓迎」。

カウンターに並ぶ酒瓶にはラム酒がひときわ多い。世界各国のラム酒を味わって欲しいとのこと

 ソファー席はゆったり寛げるように配置されている。周辺にクラブのない下北沢では、深夜の客は少ない。店が最も賑わうのは週末の終電までの時間だ

そんな、クラブミュージックファンやレコードマニアの心を掴んで離さないリトルソウルカフェの店主、宮前が選ぶ10曲とは。

プレイリスト第三弾は「Jazz, Fusion, Crossover Boogie」をフィーチャー。店主の宮前から届いた解説文もあわせて紹介したい。「70年代中盤から80年代前半にかけて、ジャズ、フュージョン系アーティストがディスコ的なダンスサウンドを積極的に取り入れたトレンドは、画一化された商業的楽曲を多数輩出、各アーティストのディスコグラフィーを振り返るにあたってはつまらない時代の作品と片付けられることもないわけではないが、この件に関してはソウルやファンクも同様と捉える方もいるであろう。それはさておきDJサイドからみれば頻繁にプレイされ人気となった楽曲も多く、後にダンスクラシックスとして定番化、現在もフロアでよく耳にする楽曲が多いのも事実。この流れにおいては80年代後半以降のUKレアグルーヴやジャズファンクのシーン、ヒップホップ・カルチャーのフィルターを通しての新しい世代からの再評価が影響するが、2000年以降もエディットで再構築されたり引用されたりと、各時代の感覚に沿って新たな価値を見出されながらダンスフロアーでなお輝きを放っているといえる。今回はジャズ、フュージョン系アーティストが取り組んだ、ディスコサウンドとクロスオーバーしてブギー感覚が冴えた定番を中心に10曲選んであります」。

プレイリストリンク 先:KKBOX

【スマートフォン】KKBOX有料会員の方は「アプリを開く」ですぐに全曲試聴できます。アプリをお持ちでない方はKKBOXアプリをダウンロードしてお楽しみくだい。
【PC】30秒試聴でお楽しみいただけます。

①ジャズトランペッターが自身の代表曲にボーカリスト、アル・ジャロウを招き1979年に再録音したヴァージョン。壮大なストリングスが印象に残る、展開も素晴らしい人気のクラブクラシックス。セオ・パリッシュのUgly Edits 3での再構築や、Pepe Bradock、ATCQが自身の楽曲で引用した流れで知った方もいるでしょう。
②は60年代のハード・バップ期、ソウルやファンクといった70年代のトレンドと上手く調和したスカイ・ハイ・プロダクション期を経て、1981年にアイザック・ヘイズをプロデューサーに自身のバンドを率いて録音したコンテンポラリーなダンスクラシックスの定番。クラブの朝方の時間に流れるとフロアは幸福感で溢れるのであります。
③L.A.の人気ドラマー1979年の作品。膨大な数のセッション仕事をこなしながら自身のリーダー作品もリリース、シーウインドのプロデュースを行なったりとこの時期としては最も仕事量の多かったフュージョン系ミュージシャンの一人。メリー・クレイトンのボーカルをフューチャーしてデヴィッド・フォスターと共作した当ナンバーもダンスクラシックスの定番。
④セッションドラマーとして引き合いの多かったレニー・ホワイトもソロアルバムをリリースしながら、1979年になると自身のグループを率いて音楽プロデューサーとしての能力を発揮するのがTwennynine Featuring Lenny Whiteというバンド。ディスコ期を経てのフュージョンテイストな良質ファンクを目指したコンテンポラリーなサウンドメイキングにはあのドン・ブラックマンもメンバーで参加していました。
⑤フュージョン界の新生ピアニストとして登場、1980年にThe Grooveのスーパーヒットを放ったロドニー・フランクリからは女性ボーカルをフューチャーした隠れクロスオーバー・ブギーをピック・アップ。1978年にも取り上げているが、今回のは1980年の新ヴァージョンで。
⑥70年代中盤までのプレスティッジ時代のファンキーなオルガン・ジャズファンク期が人気のチャールズ・アーランド、1983年メジャー・コロンビアレーベルでの2作目に収録された楽曲。時代性を反映したコンテンポラリー志向の強いサウンドプロダクションからはめまぐるしいトレンドの変化さえ感じるが、職人プロデューサーDunn Pearson Jr.のセンスがキラリと光るアーリー80'sのN.Y.ならではのアーバンな雰囲気を楽しみたいところ。女性ボーカルをフューチャーした歌ものだけど鍵盤の見せ場もいっぱい出てくるシンセブギー。
⑦もともとはブラジル出身の鍵盤奏者&アレンジャーとして活動、1973年にジャズの名門CTIから自己名義のアルバムで鮮烈な全米進出。ソウル系ではアース作品への参加を経て1979年にクール&ザ・ギャングの建て直しに抜擢され見事プロデューサとして手腕を発揮、クールは全米ナンバーワン・ヒットを獲得した。当ナンバーは数多い本人名義のアルバムでは後期の1982年の作品。自身の楽曲でダンスクラシックス人気ナンバーWhistle Bumpのボーカル入り続編という楽しみ方も出来よう。相変わらずのデオダート節が炸裂するアーリー80'sらしいモダンブギー。
⑧ディスコやファンクだけではないが、常に時代を切り開く革新的なアイデアでクロスオーヴァーなサウンドに取り組んだ点で大御所ハービー・ハンコックの名前を忘れるわけにはいかない。得意のヴォコーダー使いも印象的な1979年の当ナンバーをファンキーなディスコ感覚が見事に表現されたハービーのブギー代表曲としてピックアップ。
⑨プレスティッジ~エレクトラ・レーベルの時代の流れにおいては、鍵盤奏者でありながら徐々にボーカリストとしても能力を開花させた才女。ダンクラForgets Me Not、サンプリングソース、メローグルーヴRemind Meがあまりにも有名だが、同じ1981年のアルバムに収録された当ナンバーはミュージシャンらしくインストにこだわった、鍵盤の手さばきが気持ちよすぎるまさにフュージョン・ブギーのお手本といえる楽曲。
⑩最後に大御所ピアニストのインストナンバーを。アースとのコラボ期を経て1977年にリリースされた当ナンバーはスティーヴィーが楽曲提供、シンセでも参加した心弾むナンバー。

プレイリストの第2弾は「70年代 ニュー・ソウル」。「今回は、現在のシーンにも影響を与える70年代初頭のいわゆるニュー・ソウルと呼ばれるジャンルから、有名アーティストの楽曲を中心にお届けします。

①は後にレア・グルーヴ界隈で再評価され定番化したナンバー。シカゴのリチャード・エヴァンス&チャールズ・ステップニーというカデットレーベルの名コンビが制作、印象的なベースラインを軸にストリートの空気をアーシーに演出した斬新なアイデア満載のヒップさが聴きどころ。②はL.A.のワッツ103丁目バンドのメンバーのタイトかつグルーヴィな演奏をバックに、裏マーヴィン的な表情を楽しみたい③はN.Y.ラテン界隈からソウルに愛着を持ち両者を見事に調和させた好例。人気のある楽曲を今回は近年のリミックス・バージョンで。チャカポコといかにもマイアミらしいリズムに乗った黄昏モードが心地よい④は、T.K.レーベル界隈のスタジオ・ギタリストの代表作。カーティス・メイフィールドやリロイ・ハトソンと並ぶシカゴ・ニュー・ソウル周辺の人気者が、フォーキーからソウルに傾倒していくのが⑤。モータウン・レーベルの制作の裏方として、数々のスーパーヒットを手がけた後に独立、新たな表現手段としてシンガーとしての境地を切り開いたのが⑥。⑦⑧といったビッグネームからは当時お蔵入りとなった楽曲をピックアップ。マーヴィンの方はドナルド・バードのバージョンでも有名な、ミゼル(マイゼル)兄弟の手による作品。フィラデルフィアの⑨⑩はヒットチャートも駆け上り、後にカバーも多く生んだハートウォーミングなれどメッセージ色の強い名曲」。

12月4日更新分のプレイリストは、ジャズ、レアグルーヴ、ファンク、ダンスクラシック、メロウグルーヴといったジャンルから同店の定番曲をセレクト。ファラオ・サンダースの大名曲『You've Got To Have Freedom』で幕を開け、ドナルド・バード、ロイ・エアーズなどクラブジャズの名曲から、終盤はシスター・スレッジ、ジョセリン・ブラウンときてオハイオ・プレイヤーズ『Sweet Sticky Thing』で締める、最高にグルーヴィーな10曲となっている。

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