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頭バー
値段:¥¥
音量:★★★
照度:★
ポイント:気軽に入れる雰囲気
この一杯:開店当初から人気のウーロンハイ
テキスト:高岡謙太郎
定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフがセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。
今回紹介するのは、恵比寿と渋谷の中間にあるDJバー、頭バー。渋谷川と明治通りに挟まれた一戸建てを改築した店舗。2階建ての壁一面にはグラフィティが施されているので、一目でそれとわかるだろう。1階がDJブースつきのカウンターバーで、2階の座敷ではくつろぐこともできる。
都内のDJバーにしては珍しく大通りに面しているので一見の来店も多い。バーカウンターの距離は狭すぎず空きすぎず、客同士の距離感を縮め、フレンドリーになりやすい間合いだ。「酔っ払いすぎて夕方まで帰らない人もたまにいるんです。前の店長の木村はくっつけ上手で、ここから何人も結婚した人がいるんですよ」と語るのは、昨年から2代目店長になった押川大二郎。
DJイベントは日々行われている。過去にはイギリスの大御所ダブエンジニア、エイドリアン・シャーウッドがお忍びでプレイしたことも。押川も時折DJを披露する。プレイリストの3曲目までは客から曲名を聞かれることの多い曲だそうだ。「1曲目はアフリカ、コンゴの電気リケンベ(親指ピアノ)グループ、Konono No.1。彼らにしてはダークな曲だったので気に入っていますね」。
レギュラーイベントも幅広く、アダルトな夜遊び企画も。「ノイズから歌謡曲、四つ打ち系もあり、日によってジャンルが違います。毎週水曜日は『妖怪倶楽部』というイベントで、フリーマイクでラッパーたちが自由にフリースタイルを披露できます。そのほかに、おしんこさんという、服を脱いだ素人の女性の写真を撮る催しもありますね」。 この店では台湾人女子が働いていたときから台湾料理がメニューに登場するようになったのだが、「働いていた台湾人の子の婚活パーティを店でやって、2回目で彼氏ができて店をすぐ辞めちゃいました(笑)」。今は彼女の味を改良して出しているそうで、魯肉飯(ルーローハン)、煮玉子、水餃子を中心に屋台料理が楽しめる。
一度この店を訪れたことがある人なら、同店が醸し出す独特なムードを知っていることだろう。非日常感あふれる店の成り立ちを聞くと、「GAS BOYSのイマイさんが立ち上げたスニーカーブランド『マッドフット』の事務所が原宿にあって。そこで週末は内輪の飲み会的なパーティが行われ、『頭バー』と呼ばれていました。100円で買ったチューハイを200円で売ったりして(笑)。それがどんどん広がって知らない外国人も来るようになって、頭バーをリアル店舗化することになったんです」という。
押川の音楽の原体験は、10代の頃。音楽好きの友人の兄がリーダーの、エレクトリックミュージック・ユニットGeodegikにメンバーとして参加。テルミンやサンプラーを担当し、2回目の『フジロック』に出演するという希少な体験をしている。「最近はリーダーの下城さんに全然会っていないですね。頭バーでもライヴしてほしいですね」。
その後、ターンテーブリストとして名を馳せたDJ BAKUのVJや、音楽系の映像制作の仕事を経て、リキッドルームなどでも働く。たまたまヘルプで入った頭バーで、3ヶ月後に店長になったという。店名の由来は定かではないそうだが、「ズババー」という説がひとつ。そして1軒目に寄る店、つまり夜遊びの頭に来るという意味合いがあるらしい。11月18日(金)、19日(土)、22日(火)、25日(土)には5周年イベントが4日間行われる。昨年は満員になったという周年イベントは今年もミラクルが起こるはずだ。