[title]
Beat Cafe
値段:¥¥
音量:★★★
照度:★
出会い:★★★
ポイント:ワールドワイドなレコードコレクション
この一杯:マルチニーク島のラム
テキスト:高岡謙太郎
※プレイリストは記事下部
定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフ、常連客がセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。
第16回は、レコードの聖地、渋谷宇田川町に居を構える、MILLIBAR。店内では、レゲエをはじめとする様々なワールドミュージックが流れ、それらにマッチする洋酒を味わいながら、各国の料理に舌鼓を打てる。今年で20年目を迎え、老舗ならではの安心感のある店だ。
センター街の喧噪を抜けた先、東急百貨店本店の向かいのビル3階にある同店は、東急百貨店本店の向かいのビル3階に見逃してしまいそうな場所にひっそりと佇む、アットホームなバーだ。入口には、パンク写真家の菊地昇によるThe Clashの写真や、イラストレーター八木康夫によって描かれたダブのレジェンド、オーガスタス・パブロの名盤『Ital Dub』のジャケットの原画が飾られている。元々はレコードショップで働いていた店長の清野は、音楽だけでなくそれにまつわる周辺文化についても造詣が深い。
「(店内BGMは)レゲエだと、60年代から90年代前半まで。そのほかのジャンルになると幅広くて、最近のワールドミュージックだとジプシー系のミクスチャーものとか。ワールドミュージックというジャンルは最近、アナログはおろかCDすらも手に入りにくくなっていて、ダウンロードで探していくしかないですね。レゲエも同様ですが」。レゲエといえば7インチというイメージだったが、それも昔の話だそうだ。店内BGMに使用される音源は古いものが多めで、レコード、CD、MDからピックアップされる。
聴いてきた音楽の影響がフードメニューにも色濃く反映されているのもユニークな点だ。1番人気の料理はニューオリンズ料理をアレンジした『チキンガンボ』。そのほかのメニューも、『ジャーク・ラム・ソテー』、『カリビアン・ドライカレー』など手間をかけた料理が多い。珍しいメニューの数々に、想像力が働く。
「お酒はマルチニーク島のラムがオススメですね。ジャマイカなどのイギリス領はラムを糖蜜から作っているんです。フランス領になると砂糖から作るので、ジューシーでフルーティーなものになります」。
MILLIBARがオープンした1996年は、レコードバブルの時代。宇田川町は世界一レコードショップが立ち並ぶ街であった。レコード店をハシゴして店に寄る客も多かったという。「自分は元々レコードショップに勤めていたんですが、レコード屋って自分のかけたいものばかりをかけられたり、好きなものばかりを売ることができるわけではないので、それなら飲食店の方がその点で自由度が高いんじゃないかと思って。最初は、渋谷にあったレゲエバーのロシナンテに長く勤めて、その後に自由が丘のニューオリンズリズム&ブルースの店でも働いて、それから独立しました」。
この店のBGMに引き寄せられたミュージシャンも数多い。ダブトランペッターのこだま和文、ジャパニーズレゲエのオリジネイターのランキン・タクシーなどの重鎮も近くでライブがあった後などに顔を見せるという。また昨年来日したイギリスの重鎮ダブエンジニアでプロデューサーのエイドリアン・シャーウッドや、ドラム&ベースやダブステップのDJであるロブ・スミスも来店し、朝まで飲み明かしたという。「業界の人が連れて来てくれてから、20回ぐらい来ています」とのこと。
同店の店の看板には「EAT・DRINK・MUSIC」と書かれている。この3者が程よい具合に噛み合ったこの店の空間は、音に揺られながら呑むだけでなく、普段と違った夕食を楽しむのにも良いだろう。
そんなMILLIBARの店長、清野によるプレイリスト第2弾がこちら。「1曲目は、先月2月3日に亡くなったモーリス・ホワイトを追悼して、E&W.Fからのスタート(原題 は『Feelin' Blue』。邦題『暗鬱な時間』なのかぁ……)。そこから、春の予感を感じさせるポップなレゲエ〜ロックステディーを挟みつつ、軽快かつルーディーなSKAナンバーを2曲。そして3月といえば、アイルランドのお祭り、セント・パトリック・デイ=(3月17日(木))ということで、ラスト2曲は、アイリッシュ系バンドで締め!(ラストのチーフタンズで歌っているのは、マリアンヌ・フェイスフル)」。
※プレイリストリンク 先:KKBOX
【スマートフォン】KKBOX有料会員の方は「アプリを開く」
【PC】30秒試聴でお楽しみいただけます。
[ プレイリスト]
2月17日更新分のプレイリストのテーマは「MILLIBAR Feburary」。清野によるプレイリストだ。1曲目から、Black Uhuruのメロディックなハーモニーボーカルが心を温めてくれる。「寒い季節にもピッタリな、クールでダビーなレゲエを中心に、癒しの90'sR&B、そしてラストは、昨年2月14日に亡くなったシーナさんを悼んで……」。