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2016年4月29日、ゴールデンウィークの初日であるこの日に、渋谷の未来を占うトークセッションが原宿のラフォーレミュージアムにて開催された。渋谷区長の長谷部健、レノボ・ジャパン代表取締役社長の留目真伸、渋谷区観光協会理事長の金山淳吾、タイムアウト東京代表取締役社長の伏谷博之、そして司会にASOBISYSTEM代表取締役社長の中川悠介の5人が登壇した。
「渋谷区の観光ビジョンについて」「渋谷区が世界最高の遊び場となるために」「PLAY! SHIBUYAアプリが目指すICTツーリズムについて」といったテーマが設定され、渋谷区観光協会の取り組みや、ナイトタイムエコノミーの活性化、レノボが提供するアプリについてなど、渋谷の魅力を引き出す方法が様々な角度から検討された。ここでは特に印象的だったものを紹介しよう。
長谷部区長がしばしば口にする「パリ、ロンドン、ニューヨーク、渋谷区」という言葉だが、決して冗談で言っているのではないという。東京が世界の先進都市と肩を並べるには、これまでにも竹の子族や渋谷系といったユニークな文化を生み出してきた渋谷区こそが先陣を切る必要があるという気概が、この言葉には込められている。また、「渋谷」ではなく「渋谷区」とされる背景には、西は笹塚から東は天現寺、また北では新宿髙島屋や先日オープンしたバスターミナルのバスタ新宿など新宿駅の一部までが実は渋谷区に含まれるという、この区の地域的な多様性がある。
もちろん区の中心である渋谷駅前についても、大規模な都市開発が2027年を一つの節目に続けられている真っ最中。しかしカルチャーというものが行政や大企業によって作られるものではないということも、長谷部は理解している。渋谷の街が育てた先述のようなストリートカルチャーは、「大きいビルではなく、たとえば渋谷と原宿をつなぐ道、渋谷と恵比寿をつなぐ道」などの、まさに「ストリート」からしか生まれてこないと言う。それゆえに区や企業は、物理的なものであれデジタルなものであれインフラを整備することで、実際に渋谷に住む人、渋谷を訪れる人が新たな文化を発信しやすくすることに努めるのだ。
そのデジタル部分のインフラを担うのが、トークセッションの一つの主題でもあるアプリ『PLAY! DIVERSITY SHIBUYA』だ。渋谷区観光協会の公認アプリとしてレノボ・ジャパンがリリースした同アプリは、渋谷の街をより楽しむことを目的に2016年4月に誕生した。レノボ・ジャパン代表の留目は、かつての渋谷のファッションに着目し、単なるアメカジが「渋カジ」や「キレカジ」と変容し普及していくために必須だった「編集」という視点が、今のIoTシーンにおいては未成熟であることを指摘する。その課題に挑んでいるのが同アプリだ。
同アプリの最大の特徴は、単に渋谷の街の情報が閲覧できるということにはない。アプリを起動させて渋谷や原宿を歩けば、近くで開催されているイベント情報や近隣店舗のクーポン情報などが自然にプッシュ通知される。『Bluetooth』の技術を用いることで、自発的な検索だけでは見逃してしまいがちな街のリアルタイムな情報の発見を促進するのだ。これを可能にしているのは、街中に300もの数が設置されたという「ビーコン」端末。端末の設置に協力する店舗や、実際にアプリを使うユーザーたちとが、より速く活発に情報伝達を行うことで、アプリひいては渋谷の街を発展させ新たなカルチャーの発信源となることが期待されている。
そのほか、来場者からの質問なども交えながら、渋谷区観光協会の様々な試みや海外都市の最新事情などが語り合われた。「『DIVERSITY』を掲げているわりには登壇者にあまり多様性を感じない」といった正鵠を得た意見もあったが、区長も観光協会の金山もまだ現職について日が浅い。今後の動向にも注目していきたい。