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注目フードイベントでMinimalの「おやつ」を食べてきた

テキスト:
Yasuhisa Shimbo
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レーザーカッターなどの最新設備でものづくりが楽しめる渋谷のFabCafeで、2016年から月に1回ペースで開催されているフードイベントを知っているだろうか。その名も『OYATSU』。食とクリエイションの可能性を探るべくスタートした全12回のこの企画では、毎回人気店からゲストシェフを招き、オリジナルの「OYATSU」を開発。トークショーとあわせ、彼らの思想やコンセプトに触れることができる。ゲストのコーディネートを務めるのは、代沢の人気店Salmon & Troutのオーナーシェフ、森枝幹。自身の店でも他店のシェフを招いたコラボレーションを行うなど、料理の枠にとらわれない彼らしく、ゲストシェフの顔ぶれもユニーク。これまでは、中目黒のニューフレンチレストランNARITA YUTAKAの成田寛や、カフェ&バーFUGLEN TOKYOのバーテンダー野村空人らが登場した。

第5回にゲストシェフとして迎えたのは、Bean to Bar Chocolateの人気店Minimalの山下貴嗣。銀座店のオープンを2日後に控えたこの日、「引き算の思想から生まれるチョコレート」と題し、チョコレート作りに対する熱い哲学を語った。普段は参加者の多くがリピーターだというが、今回は初参加者が目立ち、Minimalに対する注目度の高さがうかがえた。

Minimalの山下貴嗣

Bean to Bar(ビーン トゥ バー)とは、チョコレートをカカオ豆の焙煎から、板状のチョコレートにするまでの工程を全て自社で行うこと。チョコレートにおけるサードウェーブとして注目を集めている。世界中から集めたカカオ豆の個性をいかしチョコレートを製造している。

トークのはじめに配られたのは、ハイチとベトナム、異なる産地のカカオ豆を使用した2つのチョコレート。カカオ70%、砂糖30%のみで作られたシンプルなチョコレートは、豆のほかは製法も同じで、味の差が分かるかとおそるおそる口に運んだが、あまりの違いに驚かされた。Minimalではチョコレートのフレーバーを独自に分類しており、ナッツのようなコクのある「NUTTY」、果実のように爽やかな「FRUITY」、ハーブやスパイスのように香りが特徴的な「SAVORY」の3系統を、さらに4種類に分けた計12種類で展開。ハイチは「NUTTY」のなかで最もチョコレートらしい「CHOCOLATY」。ベトナムは、「FRUITY」のなかでベリーのような風味の「BERRY-LIKE」に分類されているという。スクリーンに映し出されたチャートを自分の舌の上で体験することで、「カカオの持つ表情の豊かさを知ってほしい」という店の思いが明快に伝わってきた。

「H」はハイチ、「V」はベトナム

Minimalの興味は、豆を仕入れるさらに前の製造工程にまで及ぶ。カカオ豆の発酵という工程に着目し、まだ大量生産的な発想で質の安定しないカカオを「発酵大国」である日本のポテンシャルをいかして変えていきたいという。はじめてBean to Bar Chocolateを食べたときの衝撃からチョコレート業界へ進むきっかけとなったという山下だが、コンサルタント出身だけあり、好奇心だけでなく、ビジネスとしての視点からもチョコレートの可能性を見極めている。

現在日本のチョコレートの市場規模は約4,800億円。その巨大な市場のなかでも川上である素材に関わることで、一般の消費者だけでなくパティシエやシェフまでも顧客になり得ると考えている。また、素材へのこだわりを打ち出すことで、ワインやコーヒーなどの「素材好き」が食いつくということも考えられるという。実際、女性の顧客が圧倒的に多いであろうチョコレート専門店には珍しく、Minimalを訪れる客の4割が男性だそう。

トークのあとは遂に「OYATSU」の登場。開発にあたり毎回ゲストシェフには、3つの条件が課される。コンセプトを一品で表現すること、カジュアルであること、実験的なものであることだ。今回振る舞われたのは、『Minimalのアイスクリーム』。アイスクリームは、コロンビア産のカカオ豆を使用し、果実味やシナモンのようなスパイスが感じられるように生クリームや卵を使用せずシンプルに作られている。添えられているのは、イベントの冒頭でも食べたハイチとベトナムのカカオ豆を砕いた2種類の「カカオニブ」。ザクザクとした食感はもちろん、噛むたびに口の中に広がる香り、苦みやえぐみは、チョコレートになった状態では味わえなかったものだ。これらを組み合わせることで口の中で色々な変化を楽しめる。

スーパーフードとしても注目されるカカオニブ
ゲストコーディネートを務めるSalmon & Troutの森枝幹

Minimal 銀座 Bean to Bar Standでは、カカオニブをはじめ、カカオ豆、カカオニブを更にさらに砕きペースト状にしたものなど、製造過程のチョコレートを試食しながらチョコレートを選ぶことができる。トークショーとアイスクリームでMinimalの思想に染まった今、チョコレート専門店がひしめく銀座エリアにインパクトを与えてくれることを期待せずにはいられない。

『OYATSU』は今後も月に1回開催予定。次回はグラスや料理との相性にもこだわる赤坂のビア バー、sansaの橋本一彦が登場。ビア バーがどんな「OYATSU」を披露してくれるのか期待して待ちたい。

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OYATSUが盛られるのは、さとうきびの搾りかすと竹を使用した『WASARA』の器

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