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2015年10月25日(日)に豊洲公園にて上演されるパフォーマンス、『SLOW MOVEMENT ーThe Eternal Symphony 1st mov.ー』に注目が集まっている。プロジェクトを主催するSLOW LABELは、国内外で活躍するアーティストやデザイナーと、企業、福祉施設などを繋げ、「特色を活かした新しいモノづくりとコトづくり」に取り組む団体。2014年に開催された『ヨコハマ・パラトリエンナーレ』や、東京都が『東京オリンピック・パラリンピック』に向けて推進する『TURN』など、近年アート界隈から再び熱い視線が福祉へと向けられており、その意味でも同プロジェクトの存在感は大きい。
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豊洲での公演に先立って、10月3日(土)には青山の国連大学前広場でも上演された同パフォーマンス。年齢、性別、国籍、障害の有無などの区別なしに一般公募で集まった多様なパフォーマーによる、きわめて感動的な作品に仕上がっていた。パフォーミングディレクターを務めたのは、フィリップ・ドゥクフレ作品への参加でも知られるサーカスアーティスト、金井ケイスケ。車椅子を有効に用いたサーカスアクトも観客を喜ばせた。
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しかしながら、 本作が優れている点は、決して卓越した身体能力を持つスタープレイヤーのアクロバットにあるのではない。様々な特徴を持つパフォーマーたちが、それぞれに固有の身体表現へ到達できていたところに、観客の多くは心を揺さぶられたのだろう。まさしく同プロジェクトが掲げる「多様性と調和」というメッセージが体現されていたと言える。「身体」と並ぶ本作のもう1つのキーワード「技術」においても、圧倒的なハイテックガジェットに依拠した演出に頼るのではなく、たとえば指向性の強いスピーカーを仕込んだパネルをゆっくりと観客の頭上で動かすといった、技術を後景へと退かせることにより細やかに空間を練り上げていく方法が選ばれている。
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最先端の技術が用いられていながら、それを誇示することのないのは、パフォーマンスを通して使用されている車椅子も同様だ。一見すると単なる装飾的な車椅子としか見えないが、実は楽器として機能している。楽器のヤマハ株式会社と、オートバイのヤマハ発動機株式会社が共同開発した、電動アシスト車椅子『&Y(アンディ)01』は、メディアアーティストが開発したインタラクティブメディアが装備されることで、車輪部分の動きと連動して音を奏でる。ヨットの帆のように後方に張り出した部分が、八分音符の符尾を模したスピーカーになっている。車椅子を操るスキルこそが、そのまま楽器の演奏技術に直結する点も、「障害者なのにすごい」といった浅はかな感慨が、本作にはまったくもって関係ないということを象徴しているように思える。
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両社のロゴで「M」の字が異なるのはよく知られたこと
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パフォーマーそれぞれが独自の感性や身体をいかした多様な表現を生み、アーティストや企業による振付や美術、そして科学技術を通して、全体で1つの作品としての調和を成す。率直に言って、非常に勇気づけられるパフォーマンスだった。
『SLOW MOVEMENT ーThe Eternal Symphony 1st mov.ー』の詳しい情報はこちら
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