大阪中之島美術館
Photo: Kisa Toyoshima
Photo: Kisa Toyoshima

大阪、感性を磨くアート巡りガイド

定番の美術館やヴォーリズ建築、パブリックアートなどで脳を潤す

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アートの街として知られる北加賀屋や、2022年に開館した「大阪中之島美術館」など、アートの面でも進化し続ける大阪。話題のスポットだけではなく、パブリックアートやロマンの詰まった建築、レトロビルなど、街のあちらこちらにインスピレーションの源がちりばめられているのもこの街の魅力である。

ここでは、必ず行きたい美術館からうっとりするようなウィリアム・メレル・ヴォーリズの建築、コーヒーブレイク中にどこか遠くの惑星へとワープしてしまいそうな喫茶店まで、感性が刺激されるアートスポットを幅広く紹介する。

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  • Things to do

北加賀屋エリアにある複合施設。カフェやバーのほか、ネイルやチョークアートの教室、男性専用のヘアサロンなどが入居している。

建物は築60年を超える「文化住宅」(近畿地方に多い集合住宅の一種)をリノベーションしたもの。「継ぐかたち」をコンセプトに改修された建物は、耐震補強を行いつつ、当時の部材をできるだけ活用し、昔の面影を残している。

「千鳥文化食堂」では、プレートランチや名物のダッチパンケーキなどが楽しめる。食堂内に併設する「千鳥文化商店」ではアンティーク雑貨や作家もののTシャツ・手ぬぐいや、リトルプレスの雑誌など、パンチのきいた雑貨が販売されている。奥の「ホール」では不定期に展覧会などが実施され、吹き抜けのエントランスでトークイベントが開催されることも。「アートのまち・北加賀屋」を代表するコミュニティースペースとして地元の人にも親しまれている。

  • アート

構想から約40年間の期間を経て中之島にオープンした美術館。黒いキューブのような外観が印象的な建築の設計は、遠藤克彦建築研究所が手がけた。

2022年の開館時には、約40年間で収集した6000点以上のコレクションを所蔵。⼤阪と世界の近代・現代美術・デザインをテーマとするコレクションを核に、アートの新たな価値を提⽰する企画展や、子どもから大人まで楽しめるラーニングプログラムなども実施している。

美術館の入り口付近に設置されたヤノベケンジの作品「SHIP'S CAT(Muse)」も必見。ミュージアムショップには、大阪に縁のあるアーティストとのコラボレーショングッズや、センスのいいアート本などが並ぶので、展示を楽しんだ後はぜひ立ち寄ってみてほしい。

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  • アート
  • ギャラリー

OsakaMetro肥後橋駅からほど近い、阪神高速道路に臨む雑居ビルにあるアートギャラリー。同ビルには、ほかにもカフェを併設するカルチャー系の書店「カロ ブックショップ アンド カフェ(Calo Bookshop and Cafe)」や、美術ギャラリーが多く入居しており、大阪における一つの文化拠点になっている。

「ピンク」や「カワイイ」など、過剰な少女性を押し出した作風で国際的な評価を得ている西山美なコの作品などを取り扱う同ギャラリーは、東京の浅草近くで展開するホテル「カイカ(KAIKA) 東京」のアートストレージにも参加しており、ますます注目を集めている。

  • アート

初めて外観を目にした人は、その奇妙さに仰天するだろう。このユニークな姿をした建物は、現代美術を展示している美術館。「あべのハルカス」なども手がけたシーザー・ペリが設計した。

国内外の現代美術を中心とした作品を数多く収蔵し、年に数回、特別展やコレクション展を開催。見せるだけではなく講演会やシンポジウム、ギャラリートークなども積極的に行い、美術への深い理解と普及に努めている。

通常の休館日のほかに、展示替えなどのため臨時休館もあるので注意してほしい。しかし、もし急な休館に当たってしまっても、この建物を見ることができれば十分に来る価値はあるだろう。

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  • ショッピング

2025年「大阪・関西万博」の開催地・夢洲を有する此花(このはな)区。昭和の下町風景が広がるのんびりとした地域だが、実はアート関連のヴェニューが増え、じわじわと注目を集めている。

その中でも必ず足を運ぶべきなのが、書店「シカク」だ。住宅地に現れる白い扉をゴロゴロと引き開ければ、そこには「普通の書店」では絶対に出合えない作品たちがズラリ。まるで一冊一冊が「読んでくれ!」と話しかけてくるような、アイデアと情熱にあふれたインディペンデント出版物が並ぶ。

これらの作品との「逢い引き」を楽しむことができるのも、店主である竹重みゆきのたゆまぬ「ディグ(発掘)」があってこそ。同人イベントはもちろん、SNS上で気になった作家には自らアタックするという。誰かの熱烈な「好き」と商業的でない「緩さ」に触れ、心が充電されていくのを感じられるはずだ。

  • アート
  • ギャラリー

北区の西天満、曽根崎通から少し小道を入った場所に位置する、現代美術を扱うプライマリーギャラリー。道路に面したホワイトキューブの空間で、定期的に展覧会が開催されている。

グラフィックデザインやアートディレクションの分野で世界的に活躍する北川一成による、デザインにとどまらない表現世界を追求するミクストメディア作品や、「もの派」を代表する作家として知られる関根伸夫や小清水漸、原口典之による作品を取り扱っている。

また、舞踏家の土方巽や文学者の三島由紀夫を捉えたポートレートで写真界に強い衝撃を与えた細江英公をはじめ、桑島秀樹や勝又公仁彦など写真メディアをメインフィールドに新たな視覚表現に挑む作家なども紹介している。

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  • ショッピング

建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズが手がけたことでも有名な百貨店。2016年から2019年にかけて大規模なリニューアル工事が行われたが、百貨店の随所にはヴォーリズらしさが残されている。

当時のレンガや「万成石」という岡山県産の花崗岩が再利用された御堂筋側のファサードをはじめ、1階の天井やエレベーターホールなど、クラシカルなヴォーリズ建築に思わずうっとり。そのほか、旧本館の内装から保存された金物装飾やペンダントライトなども再利用する形で、さまざまな場所にちりばめられている。

同館の象徴でもあったクジャクのレリーフは、心斎橋筋側のエントランスで見ることができるので、こちらも欠かさずにチェックを。名建築でのショッピングを楽しもう。

  • カフェ・喫茶店

1970年オープン、大阪駅前第1ビルの地下1階にあるスペーシーな喫茶店。「宇宙」をデザインテーマにした「マヅラ喫茶店」は、クラシカルな喫茶店が多かった1970年当時から画期的な一軒として一目置かれてきた存在だ。祖川尚彦建築設計事務所が設計を手がけた。

宇宙的空間に興奮してしまう気持ちは分かるが、訪れた際は木材で作られた壁のレリーフにも注目してほしい。実は、全く同じ絵柄を手彫りした2枚の木材で透明の板を挟む仕掛けになっており、職人技が強く感じられるポイントなのだ。地下1階だと窓が設置できないが、この美しい仕切りのおかげでプライベートは保たれつつも、外から明るい光が入ってくる仕組みになっている。

夢と情熱、そして当時の人々の知恵と技術が詰まった空間はきっとこの先も色あせることはない。コーヒーブレイク中に、どこか遠くの惑星へとワープしてしまいそうな唯一無二の空間で一息つこう。

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  • アート

世界で唯一「上方浮世絵」を常設展示する、法善寺の門前の私設美術館。上方浮世絵とは、江戸時代後半から明治時代初期に主に大阪で作られた浮世絵版画のことで、道頓堀の歌舞伎芝居を描いた役者絵が多いことが特徴だ。

1階は、手ぬぐいや浮世絵のレプリカなど、浮世絵関連の雑貨を販売するミュージアムショップ。2〜3階では、約3カ月ごとにテーマを設けて展示を行う。4階は展示だけでなく、人気の「浮世絵制作(摺り)体験」ができる。初級・中級・上級の3コースに分かれており、希望の3日前までに予約が必要だ。浮世絵の魅力をより深く感じられるだろう。

華美で繊細な江戸浮世絵に対して、写実的で人間味あふれる上方浮世絵という東西の文化の違いにも触れられる。「Osaka Prints」として世界的にも評価の高い上方浮世絵を通して、江戸時代の暮らしに思いを馳せよう。

  • アート
  • 建築

梅田にある大規模な地下街「ホワイティうめだ」に外気を送り込むための施設。「阪神梅田本店」「阪急うめだ本店」「曽根崎警察署」に取り囲まれた車通りの多いエリアにあって、突如として現れる巨大な姿が特異な存在感を放っている。

林立する塔のなだらかな曲面にステンレスパネルが貼り合わされた、メタリックでありながらも有機的なイメージを想起させる建造物は、東京都の「日生劇場」などで知られる戦後日本を代表する建築家・村野藤吾の設計によるもので、1964年に完成した。

塔自体が建つエリアへと続く横断歩道はないため近づくことはできないが、JR大阪駅と「阪神梅田本店」を結ぶペデストリアンデッキから眺めることができる。御堂筋のイルミネーションイベントなどではライトアップされることもあり、日中とはまた異なる近未来的な景観が楽しめる。

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  • ミュージアム

近代化遺産として価値ある「築港赤レンガ倉庫」を生かし、世界中から集めた往年のクラシックカーを展示する博物館「ジーライオンミュージアム(GLION MUSEUM)」。館内の展示場は4カ所に分かれており、希少なクラシックカーを地域別で展示する。

併設された「ジースクエア(GSQUARE)」は完全予約制で、ネオクラシックカーから最新モデルまで、希少なインポートカーを販売。ハワイの老舗ステーキ専門店「ハイズ ステーキハウス(Hy's Steak House)」の姉妹店「アカレンガ ステーキハウス(AKARENGA STEAK HOUSE)」や、フレンチレストランの「ラ ヴィ(LA VIE)1923」ではプレミアムな食事が楽しめる。世界で唯一無二の「大人のミュージアム」を堪能したい。

  • アート

2022年4月1日に、樹木の間伐や根の成長を見越した植え替えや土壌改良を経てリニューアルオープンした「長居植物園」。季節とともに移り変わる草花や木々の空間を、自然のふるまいや人々の存在によってインタラクティブに変化させ、過去と現在、未来が交差するアート空間に変える。

チームラボが行っている「Digitized Nature」は、「自然そのものが自然のままアートになる」というアートプロジェクト。昼間は植物園である場所が、夜になるとそのまま作品空間になる。この作品空間は風や雨、訪れる人や鳥などから影響を受け、相互作用的に変化し、人々を自然とともに作品の一部にする。長い時間の連続性を感じてみては。

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  • ショッピング

建設者である芝川又四郎の自家事業用事務所として、1927年に完成した「芝川ビル」。戦前は花嫁学校として使われていたが、現在はジュエリーや器のショップ、レストラン、カフェなどが入居し、屋上テラスを備える4階は貸スペースとして運用されている。

大阪を代表するレトロビルの一つなので、建築に興味がある人はぜひ訪ねてみてほしい。

  • ビールバー

とにかくいろいろなビールを飲んでみたい、という人におすすめの一軒がここ。 「クラフトビアベースマザーツリー(CRAFT BEER BASE MOTHER TREE)」は、ビアパブと醸造所、ボトルショップを兼ね備えたクラフトビールのワンストップショップである。

国内外問わず、常時約500種類のボトルと缶のクラフトビールを用意。店内にはビール専用の巨大冷蔵庫があり、好きなビールを選ぶことができる。個性にあふれるクラフトビールのパッケージはどれも愛らしく、飲み終えた後も大切に持っておきたい存在だ。

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