こち亀記念館
Photo: Kisa Toyoshima | 外観
Photo: Kisa Toyoshima

「こち亀記念館」でしかできない5つのこと

両さんの部屋や両津大明神、こち亀のあそび場など

広告

タイムアウト東京 > カルチャー > 「こち亀記念館」でしかできない5つのこと

葛飾区亀有といえば、秋本治による漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(通称「こち亀」)だろう。亀有駅に降り立つと、主人公・両津勘吉(以下、両さん)の像が数カ所に設置されており、「ようこそ、亀有」と両さんのイラストとともに描かれたフラッグが目に入る。ここまで地域に密着した漫画は、ほかにないのではないか。

そして2025年3月22日、この地に新たに「こち亀記念館」が誕生した。両さんが「自分の記念館を勝手に建てた」ことをコンセプトとする同館では、エントランスから各階、階段、トイレの中まで、隅々までこだわりが凝縮した「こち亀ワールド」が施されている。

そんな同館のおすすめポイントを、5つに絞って紹介したい。

1. 両さん誕生の瞬間を目撃する。

エレベーターで一気に5階へ昇り、各階を順次降りていくスタイルの同館。前述したように、両さんが「自分の記念館を勝手に建てた」ということをコンセプトとするため、エントランスには派出所を再現したセットだけでなく、両さんが作ったとされる同館のジオラマや借用書も演出されている。

エレベーターを待つ間は、サブキャラクターの中川圭一や秋本・カトリーヌ・麗子から両さんへの電話として、机に置かれたスマートフォンが突然鳴り響く。エントランスだけでも仕掛けが満載だ。

5階では、原作者・秋本の私物である資料や模型、連載が始まった1976年から2016年の最終回記念までの歴代グッズが大集合。そして、タライから生まれたという両さんの誕生瞬間を、秋本の手書きによる映像で楽しめる。漫画の源泉が詰められた、胸に迫る空間だ。

その隣には、作中で両さんが金もうけをたくらんで作った「両津大明神」も。そこで参拝したら、キャラクターによるアドバイスが書かれた「キャラクターおみくじ」も引いてみてほしい。このワンフロアだけでも、かなりの見応えがある。

2. 作品世界に酔いしれる。

40年間、休載することなく連載し続けた秋本。そんな驚異的な漫画はほかにない。続く4階では、そんな長い歴史を持つ漫画の複製原画が、テーマごとに分かれて展示されている。特徴的な「こち亀っぽい」シーンや、両さんによる斬新過ぎるアイデアが紹介されている上に、映像でもシーンが流れ、作品世界へと没入できる。

ちなみに、同館のトイレの内装もぜひチェックしてほしい。男性・女性・共用と全てに異なるテーマが施され、「中川の外車コレクション」や「麗子の私服」など、キャラクターとイラストが全部違うのだ。世界観が徹底されている。

広告

3. 作中に登場するマシンで遊び尽くす。

続いて3階には、作中に登場するゲームやアイデアを再現した、ゲームセンターのような遊び場が広がる。「麗子と♡相性診断」「ジョン両津の漫画スクール」「AI人格診断!?両さん度チェッカー!」といった、マシンなどが約20個も配置さ、ここだけでも時間があっという間に過ぎてしまいそうだ。

とことんまで遊べるのに全てに小難しさはなく、直感的にできるものばかり。フォトスポットも用意されているので、記念撮影も忘れないでほしい。

4. 両さんの「汚い部屋」を味わい尽くす。

2階には、ファン必見の両さんの「汚い部屋」が登場。将棋の駒やビデオテープのタイトル、冷蔵庫に入った「麻里愛」が作ったとされる弁当など、乱雑感がくまなく再現された。テーブルの上には、あらゆるものを消化する胃を持つ両さんのための、革靴や恐竜が入った闇鍋も置かれている。

また、「両津永久名誉館長室」も用意され、両さんが自分で用意したという名誉館長の椅子にも座れる。両さんらしく、机の上はプラモデルやビールなどで乱れ放題。引き出しには、両さんが書いた始末書も配置され、記念として持ち帰れる。ファンにはうれしい工夫が満載だ。

なお、階段や廊下などにも、読者なら分かる小ネタが随所に点在。会場で解説はされていないが、想像力を刺激するような細かい芸が発見できるので、あらゆる箇所を見渡してほしい。

広告

5. 亀有を深く知り、散策する。

亀有という下町についても熱く紹介。駅から3分ほどの街の中間地点に位置するこち亀記念館は、漫画と地域の両方を知り、同館を楽しんだ後に街へ繰り出すことも目的としている。

「両さんぽ」と題したマップでは、亀有公園に設置されたフォトスポットや、街中に配された「こち亀スポット」で聖地巡礼できるだけでなく、商店街でのイベントも知ることができる。グッズも、葛飾区の北星鉛筆などの地場産業とのコラボレーションを実践している。

出口には、両さんのイラストで「いってらっしゃい」と描かれており、ここを出てから「街巡りを楽しんでほしい」という思いが伝わるだろう。同館を思う存分楽しんだ後は、漫画や作者、記念館への思いをつづれる「こち亀ポスト」もあるので、手紙を投函(とうかん)するのもいいだろう。

こち亀ファンはもちろん、漫画を読んだことがない人でも、驚きのこだわりとクオリティーの高さで、エンターテインメントとして楽しめる同館。出た頃には、こち亀を読んでみたくなっているはずだ。ぜひ足を運んでほしい。

「こち亀記念館」https://kochikame-kinenkan-official.jp/
©秋本治・アトリエびーだま/集英社

漫画展に行くなら・・・

  • アート
  • アート

2025年3月7日から「東京シティビュー」で開催されている「手塚治虫『火の鳥』展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命の象徴-」に行ってきた。漫画の神様・手塚治虫の傑作で、不死の超生命体である火の鳥を巡る全12編の一大サーガである。

とにかく気が狂うほど面白く、これを最高傑作に挙げるファンも多い。ちなみに『火の鳥』の大型展覧会が催されるのは、これが初めて。以上、解説終わり。

  • Things to do

漫画・アニメは、これまで日本文化の発展に多大な役割を担ってきた。作品やクリエーターに注目するイベントが今では多数開催され、国内外の人々で連日にぎわいを見せている。

ここでは、2025年に東京都内で実施される漫画・アニメの展覧会を紹介したい。手塚治虫による『火の鳥』の大型展、そして漫画家・士郎正宗の世界に迫る特別展はどちらも必見だ。会場でしか出合えない展示とともに、それぞれの世界観を探求してほしい。

おすすめ
    関連情報
    関連情報
    広告