―ヘラルボニーを起業したきっかけは何ですか。
崇弥:僕らの兄が自閉症だったので、小さな頃から福祉施設や自閉症協会を訪れる機会が多く、昔から福祉に関わる仕事をしたいという気持はありました。『MUKU』は、そうした想いから始めたんですが、続けるうちに、アートだけに留まらず、知的障がいのある人を含めた新しい経済や、ブランディングといった仕組みづくりにも興味が広がっていったんです。ヘラルボニーでは、アートの小売だけではなく、イベント開催や福祉施設のプロデュースなど、広い範囲で福祉にアプローチしていきたいと思っています。
―活動のミッションとして掲げている「異彩を、放て」には、どんな意味が込められているのでしょう?
崇弥:知的障がいのある人は、自分だけの強いこだわりがあったり、不安になると叫んでしまったりと、一見 、普通ではない行動をとることもあります。それはある意味で、彼らの「異彩」。しかし、世間では知的障がいを持つ人に対して、「変わってる」や「普通じゃない」と感じることすらタブー視されているような空気がある。そこで僕らはまず、声を大にして「普通じゃないことは、同時に可能性である」と、言い切りたいんです。“普通”とは異なる感覚を持っているからこその価値を打ち出し、その価値にちゃんとお金もついていくるような、マネタイズの仕組みや構造を作っていく。そうすることで、センシティブな問題として捉えられている壁を、打破していきたい。そんな思いを込めています。