新感覚のデジタルアートを体験、「ETERNAL Art Space」で楽しめる8の作品

没入体験型アートエキシビション『イマーシブミュージアム』ではクロード・モネの『睡蓮』をテーマにした作品を初公開
  1. Eternal Art Space
    Photo: 'The Morphology of Freely Rising Deformable Bubbles' Akiko Nakayama & Eiichi Sawado
  2. 'Dimensional Sampling' Eternal Art Space
    Photo: 'Dimensional Sampling' Cao Yuxi & Lau Hiu Kong
  3. Eternal Art Space
    Photo: 'Impressionism' Monet from Immersive Museum courtesy of Drill/Dentsu
  4. Eternal Art Space
    Photo: 'Infinity Flow 2022' Elevenplay x Rhizomatiks'
Written by Time Out. Paid for by Eternal Art Space / Mutek Japan
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現代美術の転換期を迎え、アートとテクノロジーの関係性はこれまで以上に明確になってきている。ここ数年、日本の新世代アーティストが、デジタルアートという媒体を使って驚くべきことを成し遂げているが、このシーンは今後、より進化していくだろう。

2022年3月20日(日)までパナソニックセンター東京 有明スタジオで開催されている『ETERNAL Art Space』は、デジタルが生み出す芸術文化の普及に努めるMUTEK.JPがパナソニックと協力し、国内外の有名アーティストによるデジタルアート8作品を上映するものだ。

トルコのメディアアーティスト、レフィーク・アナドール(Refik Anadol)やフランスを代表するマオティック(Maotik)らが手がけた作品の展示をはじめ、近日公開予定となっている絵画の世界に入り込む没入体験型アートエキシビション『イマーシブミュージアム(Immersive Museum)』からは、クロード・モネの『睡蓮』をテーマに特別編集した作品が初公開される。

視覚と聴覚という、人間の最も深い感覚を通してアートに浸ることのできる本イベント。ここでは『ETERNAL Art Space』で体験できる8つのデジタルアート作品を紹介する。

『Machine Hallucination - Space, ISS, Hubble』(レフィーク・アナドール)

人類がテクノロジーへの依存を高めていく中でふと未来について考えた時、シニカルな気持ちになるのは簡単なことだろう。多くのアーティストは、高度な機械が人類を追い越すというディストピア的なビジュアルで、未来の姿を探ってきた。しかし、トルコのイスタンブールに生まれたメディアアーティスト、レフィーク・アナドールの作品は一味違う。データや機械知能と共に進化する我々の関係性を楽観的な視点で捉えているのだ。

2018年から現在まで、アナドールがNASA Jet Propulsion Laboratoryとコラボレーションしてきた経験と、長年続けてきた宇宙探査の写真の歴史にまつわるリサーチに触発されたこの作品は、200万枚以上の宇宙と地球の画像が活用されたデータスカルプチャー。データと情報技術とで作り上げた合成現実を通して、機械と人工知能(AI)の可能性を再評価するよう鑑賞者に促している。

『泡沫の形』(中山晃子・澤渡英一)

『東京2020オリンピック』の閉会式で演出を担当した画家の中山晃子は、時と場所が異なるさまざまなライブパフォーマンスの記録から「泡が絵のなかで泡以上の役割を与えられ、なにかの見立てになった瞬間」を切り取り、新たにつなぎ合わせて編集した『泡沫の形』を音楽家の澤渡英一とともに発表した。

作中の「泡」が表すのは、我々の価値観や社会的サークル、そして絶え間なく変化する環境で果たすべき役割だ。サウンドトラックは、さまざまなライブパフォーマンスで録音されたサウンドバイトのメドレーで、音楽というよりも、その瞬間とシーンを象徴として捉えるための個々の音の連なりとして生み出されたという。

『Infinity flow 2022』(イレブンプレイ × ライゾマティクス)

演出振付家のMIKIKO率いるダンスカンパニー、イレブンプレイ(ELEVENPLAY)と、最先端のテクノロジーを用いて独自のインスタレーションやプロダクションを作成するマルチメディア企業のライゾマティクス(Rhizomatiks)がコラボレーションした作品。

本作で挑んだのは、光とダンスの融合だ。コンピューターで生成された幾何学的な形状の映像と、ゆがんだ動きやダンサーの映像が、一つの振り付け作品から全く新しいパフォーマンスを生み出している。

『IMPRESSIONISM』

画家のクロード・モネはこの世を去る少し前に、人々が没頭できる絵画の制作に着手した。第一次世界大戦で苦しんだ人々に美しさをもたらすことを目的として、彼は有名な『睡蓮』シリーズを描いたのだ。パリのオランジュリー美術館では、楕円(だえん)形の部屋でこの『睡蓮』をパノラマ展示している。

パリには行けずとも、絵画の世界に入り込んだような体験ができるのがこの作品。当初は、2020年に絵画の世界に入り込む没入型体験ミュージアム『Immersive Museum』として、寺田倉庫で『”印象派” IMPRESSIONISM』を展示する予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で無期限延長に。今回は『”印象派” IMPRESSIONISM』より、『睡蓮』のシーンを本イベント用に特別編集した作品を展示している。

『FLOW』(マシュー ・レ・サウアード)

マオティックの名で親しまれるマシュー ・レ・サウアード(Mathieu Le Sourd)は、ナイン・インチ・ネイルズのワールドツアーセットデザインから、シャネルやエルメスといった高級ブランドとのコラボレーションまで、非常に多彩なキャリアを積んできたフランスのデジタルアーティストだ。

月の引力によって引き起こる潮の満ち引き​​に触発された『FLOW』は、オーストリアのリンツで開催されているメディアアートの世界的イベント『アルス・エレクトロニカ』のディープスペース8Kメディアディスプレイで初公開された作品。ここでは、コンピューターで生成された鮮やかな色のビジュアルが波の動きをリアルに捉え、遊び心のある詩的な空間を作り出している。

『Stillness』(シンク アンド センス&インターシティ エクスプレス)

ティーアンドエス社のテクノロジカル・クリエーティブファーム、シンク アンド センス(THINK AND SENSE)と、音楽家の大野哲二によるサウンド・ビジュアルプロジェクト、インターシティ エクスプレス(Intercity-Express)が手がけた作品。

禅をテーマにした本作は、京都の建仁寺塔頭両足院を総合的に再現したものだ。まずは、高精度レーザースキャン技術を用いて、寺院の3次元画像を作成。「点」で形成されたデジタル版の寺院と、立体音響で収録された両足院内外の音のサウンドスケープが、禅の世界観の一端を表現している。

この作品のルーツは「沈黙の中でしか認識できないものがある」と説く禅の思想。自己に没入するイマーシブな体験を楽しむことができるはずだ。

『FLORALIA II』(サブリナ・ラッテ)

サブリナ・ラッテ(Sabrina Ratté)は、モントリオールとマルセイユを拠点とするカナダのアーティスト兼映画監督。

生物学者のダナ・ハラウェイ(Donna J. Haraway)、小説家のアーシュラ・K・ル=グウィン(Ursula K Le Guin)とグレッグ・イーガン(Greg Egan)の著作にインスピレーションを受けた本作は、絶滅した植物や種をコンピューターで生成した映像を通して楽しめる万華鏡のような作品だ。

この仮想の生態系を通してラッテは、過去と未来が共存する、永続的な緊張を持った現在を表現している。

『Dimensional Sampling』(Cao Yuxi & Lau Hiu Kong)

『Dimensional Sampling』シリーズは、ニューヨークを拠点とするアーティスト兼コーダーのCao Yuxiが2019年に開始したアートプロジェクトだ。このプロジェクトのコアコンセプトは「二次元コードのイメージスタイルで表現された時代のトーテムをデジタル化し、新時代のデジタル期をさらに再吟味する」こと。

『ETERNAL Art Space』で展示されている作品は、香港を拠点とするサウンドアーティスト、Lau Hiu Kongとの共同プロジェクトとして制作されたもの。

サウンドは、デジタル世界と実生活の両方から抽象的なサウンドエフェクトを組み合わせる形で作られており、携帯電話やコンピューターの聞き慣れた音を再編成して処理し、音楽言語と音の方向性を加工することで、3次元の音空間を作り出している。

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