墨田区で何かをやるのであれば全部手伝う
岸野雄一(以降、岸野):土谷さんは高知県にいらっしゃるんですよね。ひろめ市場(高知市にある屋台村)、大好きなんですよ。
土谷享(以降、土谷):みんな昼間から酒飲んでますよね(笑)。
岸野:日本だとカフェで隣り合っても会話が始まらないんですが、あそこではお客さん同士の会話が始まります。混んでくると席を譲り合ったりして。とてもいい雰囲気で、日本が誇るべき場所です。
土谷:高知特有の文化なのかもしれないですけど、大切な文化財ですよね。岸野さんは高知にはよく来られるんですか?
岸野:DJで何度か行っているのと、子ども向けの音楽劇『正しい数の数え方』(第19回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 大賞)でも高知公演をしているんですよ。高知はコロナ禍が明けたらすぐに行きたい場所です(笑)。
土谷:『屋台キャラバン』も高知でやったらめちゃくちゃ面白そうですね。それこそ『よさこい』の地方車(じかたしゃ)みたいな感じで。地方車もトラックにDJ機材やスピーカー積んでいますし。
シンプルな音響セットとスピーカーがインストールされたDJ屋台(Photo: Yozo Takada/©屋台キャラバン)
―DJ屋台やガチャガチャ屋台など、さまざまな屋台が登場する『屋台キャラバン』では、岸野さんは音楽監修として入っていますが、それ以外にも『すみゆめ』の公募プロジェクトに、本当にたくさん関わっていらっしゃいますね。
岸野:墨田区で何かをやるのであれば全部手伝うって決めているんです。これは世界各国の芸術祭を回っていて思うんですが、うまくいっているところというのは、美術の人と音楽の人、演劇の人、街づくりの人など、みんなが互いに協力し合っているんですよね。
例えば僕のやっているユニットで「ヒゲの未亡人」という、シャンソンのカラオケショーみたいなコンテンツがあるんですが、ヨーロッパだとメタリカのTシャツを着ているような人がボランティアでPAを組んでくれたりして、ちゃんと手伝ってくれるんですよ(笑)。恐らく僕の音楽は好きじゃないだろうけど、そういうことじゃないんです。
逆にヘビーメタルのライブで、アート系の人たちがミキサーやったり、照明を立てたりしている。そういう自分の趣味嗜好(しこう)じゃないところで協力し合う風景をヨーロッパで見てきて、羨ましいなと。