グラフィックデザインが面白いと思ってもらうためには、今までとは違う活動をやらないと
ーまず、今回の『LEXUS』でのイベントについての質問から伺います。千原さんの『instagram』を拝見していると比較的コンスタントにライブペインティングをされているようですが、ライブペインティングの魅力とはなんでしょうか。
自分の本業であるアートディレクションというのは、最初から自分のやりたいことをやるというよりは、クライアントがやりたいことに対して自分がどうやるかという仕事であり、ゼロから自分がやりたいことを発信することではないんです。だから自分のスタイルとして何かやれることはあるかなと考えたときに、ライブペインティングは時間も取られないしちょうどよかったんです。それが仕事になるならないは別にして。僕自身の発想やアイデア、思いつきやひらめきが一瞬に凝縮されていて面白いと思って、スタートしました。
ーライブペインティングを観る人にはどんなことを感じてほしいですか。
ライブペイントをされる人は僕の知り合いを含めたくさんいますが、だいたいペンキとかでやるものですよね。でも僕はいつもマジックを使う。僕の本業であるグラフィックデザインで作る平面のグラフィックとか、まっすぐな線とか、タイポグラフィとか、いわゆる綺麗な整理されたグラフィックをライブに替えたらどうなるのか。画面のなかにあるデザインを、空間のレイアウトをいかした考えでライブペイントできたらいいなと思います。だから観る人には作品がデザインと結びついているところを感じてほしいですね。
ー本業やライブペインティングとはまた別に、『instagram』や『ホナガと千原のヤギさんラジオ』(コンテンポラリーダンサーのホナガヨウコとのラジオ番組)など、様々な活動を精力的にされていますが、何か理由があるのでしょうか。
表現として、自分のなかにあるものを外に出すのはライブペイントが一番大きいです。だけど、グラフィックデザインというもの自体がポスターになってしまうと、完成されたものだけを見てしまうと、それは広告物なのでデザインとしてどうかっていうことを感じてもらうことはなかなかないんですね。グラフィックデザインがもっともっと面白いと思ってもらうためには、今までとは違う活動をやらないと。デザインを広めるために、ラジオだったら言葉で、『instagram』だったら途中経過を見せることで、デザインの面白さを伝えたいですね。
ーいつごろグラフィックのデザインの面白さに気づき、またそれを伝えたいと思ったのでしょうか。
グラフィックデザイナーになって数年のうちは、みんな必死に勉強して、毎日パソコンと向き合って、レイアウトを何案も作らされて、すごく大変だと思います。それがだんだん慣れてきて何年もやっているうちに、自分のものになっていくんですけど、その大変なところでやめてしまう人が多い仕事なんです。グラフィクデザインは技術の部分もあるから下積みも必要で、みんなそこでデザインが大変だと思ってしまう。けどそこを乗り越えると、グラフィックデザインの作業ってパソコンと向き合う部分って2割くらいなんです。ほかはアイデアを考えたり、誰かと会ったり打ち合わせをしたり、撮影したり。8割の部分でいろんな人と関わって友達や仲間になったりして、新しい仕事ができる。僕はそういう部分がすごく楽しいと思ったんです。僕は一度『TOKYO FRIENDS』というタイトルの個展をやったことがありました。この仕事を始めてできた仲間や、彼らとこれだけ楽しいことができる、創作活動をいろんな人とできるよってことを伝えたくて。だから、本業以外の仕事では人とのつながりっていうものを知ってもらいたいと思います。