「最近の現代ダンスは、デジタルアートに傾きがち。音楽なんかも勝手に加工編集したものを使っていたり」と話を始めた平山は、そのような流れにあるからこそ、「ダンスが本来持つ、視覚と聴覚が一体になって『素敵だな』と、体験していただけるものを丁寧に提案する企画を立てたい」と考えたという。そうして、2008年に同じく新国立劇場を舞台に取り組んだのが、大作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーの集大成『春の祭典』だ。
ヴァーツラフ・ニジンスキーはじめ、モーリス・ベジャールなど数多くの名振付家たちが挑んできたこの稀代の難曲でも、平山は斬新な演出で成功を収めた。続く2011年の同劇場公演でも、モーリス・ラヴェルやクロード・ドビュッシー、エリック・サティといった20世紀初頭フランスの楽曲を取り上げてきた平山だが、今作において、いわゆるワールドミュージックを選んだ理由とは何なのか。
「だんだん私のなかでも、コンテンポラリーっていう世界って現代的で自由ではあるけれども、縦に長いものを感じることが難しいな、と。急に降って湧いたというか。そういうときに、ひとつ何か『ルーツ』みたいなものと出会って、けれど古いものをただやるのではなく、ぐるっと回して新しいものとして出せる可能性があるかな」。そして出会ったのが、バスク地方特有の打楽器「チャラパルタ」だ。