卓抜した身体能力と技術に裏打ちされたダンスで多くの支持者を持つ平山は、1999年の『世界バレエ&モダンダンスコンクール』にて金メダルとニジンスキー賞をダブル受賞して以降、ダンサーとしてのみならずコレオグラファーとしても精力的に活動してきた。新作について耳にした誰もがまず初めに驚いたのは、スペイン バスク地方に伝わる音楽とのセッションを行うという点だろう。
「最近の現代ダンスは、デジタルアートに傾きがち。音楽なんかも勝手に加工編集したものを使っていたり」と話を始めた平山は、そのような流れにあるからこそ、「ダンスが本来持つ、視覚と聴覚が一体になって『素敵だな』と、体験していただけるものを丁寧に提案する企画を立てたい」と考えたという。そうして、2008年に同じく新国立劇場を舞台に取り組んだのが、大作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーの集大成『春の祭典』だ。
ヴァーツラフ・ニジンスキーはじめ、モーリス・ベジャールなど数多くの名振付家たちが挑んできたこの稀代の難曲でも、平山は斬新な演出で成功を収めた。続く2011年の同劇場公演でも、モーリス・ラヴェルやクロード・ドビュッシー、エリック・サティといった20世紀初頭フランスの楽曲を取り上げてきた平山だが、今作において、いわゆるワールドミュージックを選んだ理由とは何なのか。
「だんだん私のなかでも、コンテンポラリーっていう世界って現代的で自由ではあるけれども、縦に長いものを感じることが難しいな、と。急に降って湧いたというか。そういうときに、ひとつ何か『ルーツ』みたいなものと出会って、けれど古いものをただやるのではなく、ぐるっと回して新しいものとして出せる可能性があるかな」。そして出会ったのが、バスク地方特有の打楽器「チャラパルタ」だ。