今回の公演は、歌舞伎俳優の故中村勘三郎の企画に端を発している。それは、同じ近松の『曾根崎心中』を、劇作家の野田秀樹が脚色し、ルヴォーの演出で、勘三郎ら歌舞伎俳優が出演して上演するという企画だった。
「勘三郎さんと知り合ったのは9〜10年前」と、ルヴォーは振り返る。「日本でもニューヨークでも会ったことがあります。彼は以前から私のT.P.T.での作品を観てくれていて、私もコクーン歌舞伎など彼の歌舞伎を観ていました。勘三郎さんは演劇に対して国際的な視野を持ち、歌舞伎を世界に広めることに情熱を燃やした人でしたよね。なぜ私に演出を持ちかけてくれたのかは分からないけれど、彼は私が歌舞伎に大きな関心を寄せていることを知っていたし、私の方では彼が歌舞伎を現代的に上演し新しい観客にアクセスしようとしていることに興味を持っていたのです」。
タイムアウト東京 > アート&カルチャー > インタビュー:デヴィッド・ルヴォー
江戸時代の浄瑠璃作者、近松門左衛門によって書かれ、今も文楽や歌舞伎で上演されている『心中天網島』。1969年には篠田正浩監督によっても映画化されたこの名作が、『ETERNAL CHIKAMATSU ―近松門左衛門「心中天網島」より―』として生まれ変わる。演出は、ウエストエンドやブロードウェイで活躍する英国人演出家デヴィッド・ルヴォー。日本では1993年に30代でT.P.T.(シアタープロジェクト・東京)芸術監督に就任し、20作以上を演出している。