

今回の公演は、歌舞伎俳優の故中村勘三郎の企画に端を発している。それは、同じ近松の『曾根崎心中』を、劇作家の野田秀樹が脚色し、ルヴォーの演出で、勘三郎ら歌舞伎俳優が出演して上演するという企画だった。
「勘三郎さんと知り合ったのは9〜10年前」と、ルヴォーは振り返る。「日本でもニューヨークでも会ったことがあります。彼は以前から私のT.P.T.での作品を観てくれていて、私もコクーン歌舞伎など彼の歌舞伎を観ていました。勘三郎さんは演劇に対して国際的な視野を持ち、歌舞伎を世界に広めることに情熱を燃やした人でしたよね。なぜ私に演出を持ちかけてくれたのかは分からないけれど、彼は私が歌舞伎に大きな関心を寄せていることを知っていたし、私の方では彼が歌舞伎を現代的に上演し新しい観客にアクセスしようとしていることに興味を持っていたのです」。