ピアノとバイオリンの憂いを帯びた音色が響く中、大きな薄布に身体を吊られたパヘスとシェルカウイが、布越しに手を伸ばし、互いに触れたと思うとまた離れる。やがて布の外に出た2人は、ユニゾンで踊ったりソロを見せたりし、さまざまな形で踊りを織りなしていく−。2004年に舞踊賞の授賞式で知り合い、その後、偶然に再会したことに運命を感じたパへスとシェルカウイがクリエイションを進め、09年に世界初演した『DUNAS』は、彼らのイメージの集積であり、コミュニケーションの成果でもある。
−『DUNAS』には明確な物語はありませんが、2人の関係性が刻々と変わっていくさまが美しく印象的です。その変化をどうとらえていますか。
パヘス:タイトルの「DUNAS」とは、スペイン語で砂丘の意味。砂漠には何もないけれど、常に変化しているでしょう?まずそれをお互いにコンセプトとして持つことで、色々なものが生まれると思ったのです。
シェルカウイ:僕らは、お互いの人生について -例えば振付家であること、ダンサーであること、ある文化の中で男/女であること、息子/娘であることなどについて- 話し合いながら創作を進めていきました。だから、舞台上での2人は、ある時は双子のようだったり、またある時は姉弟、あるいは親子、夫婦のようだったりと、さまざまな関係性を結びます。同時に、僕らは自分自身の別の面も次々に見せていく。マリアは愛情に満ち溢れた人に見えることもあれば、魔女のようだったり暴力的だったりもするし、僕もその時々で力強く振る舞ったり繊細だったりマリアの暴力の犠牲者だったりします。でも、そこには常に愛が存在していて、お互いを制約せず自由であるよう心がけました。